2010年からマガジンスペシャルで連載していた『ボックス!』の最終巻5巻の最終回(最終話)を含めた感想ネタバレまとめです。高校ボクシング漫画の結末(ラスト)はいかに!?
木樽と鏑矢にとって、高校最強の男・稲村を倒す最後のチャンス、国体予選が開幕!ライト級のエントリーは、木樽、鏑矢、稲村を含めわずか4人。木樽が稲村と、鏑矢が猪田高校・鍵谷との初戦が決定。打倒稲村!!ついに最後の戦いが始まる!
本編あらすじ
国体予選に出場すべきか迷っていた鏑矢だが、高津耀子が「もう一度風を見せてよ」と伝え、勝手にライト級に申し込んだことを伝えられると渋々了承する。国体予選が開幕すると恵美須高校のメンバーが活躍する。井出・野口・飯田全員が初戦突破。
ライト級は稲村和明との対戦を避けて4名しかエントリーしてなかった。会場には現役時代の後遺症に苦しんでいる稲村の父親も見に来ていた。
準決勝、鏑矢は鍵谷と対戦。鍵谷は全日本社会人選手権で優勝した実績を持ち、格闘マニアの芸人・難波コータローがパトロンについていることから、メディアにイケメンボクサーとして何度も取り上げられていた高校生。試合会場にもマスコミが押し寄せて、スターのようにふるまっていた。
試合開始直後、鍵谷の猫科動物を思い出させる常人離れした運動神経が冴えわたる。ナジームハメドのようなトリッキーな動きで鏑矢を翻弄する。が本調子を取り戻した鏑矢のパンチ一発で難なく倒す。
同じく準決勝、木樽優紀は稲村和明からダウンを奪い試合を優勢に進める。これまで何度も対戦相手を沈めてきた必殺パンチを当ててスタンディングダウンを奪う。稲村からダウンを奪った木樽は一気に攻勢をかける。2R終了時点で、木樽が大きくポイントリードできている。
3R目はお互いが足を止めての打ち合いに。追い詰められている稲村は本能をむき出しにして獣のように襲いかかる。しかし、木樽がとてもつもない集中力を発揮し、稲村の猛攻を見切ってパンチを当てる。
必殺のオーバーハンドの右を稲村に当てても倒れず。逆に左フックを返してきて木樽は倒れそうになる。再び火花が散るような乱打戦にもつれこむ。スピード・テクニック・手数すべてにおいて稲村に優っているが、稲村のすさまじいまでの勝利への執念が限界以上の力を引き出しているため倒れない。
木樽は(このモンスターには自分のパンチが効かないのか)とさえ思えてきた。木樽は三度オーバーハンドの右を稲村に当てるが、逆に稲村の乱打を喰らってしまい倒れてしまう…。
試合後、沢木先生は「負けてよかったのかもしれない」と話す。稲村を倒すには大きな代償を支払う結果にもなりかねないとして、自身の左目の視力がほとんどないことを高津先生に明かす。若い頃に網膜剥離を発症してしまっていたからだった。沢木先生がガードの重要性を口うるさく指導してきたのは自身の経験からだった。
翌日の決勝戦、試合まで徹底的に追い込んで研ぎ澄まされた鏑矢義平。一進一退の攻防で、お互いに一回ずつダウンを喫した。あと一回ダウンを取られれば自動的にRSC負けになる。二人とも足を止め、相手を打ち倒すためのパンチを全力で打った。
リング中央の打ち合いに後退したのは稲村だった。稲村の必殺の右のカウンターを間一髪でかわすと残忍な左フックを稲村の顎に叩きつけた。鏑矢は獣のような叫び声をあげながら狂った風車みたいに左右のパンチを打ち込んだ。稲村がマットに沈み、ボロボロになりながらも鏑矢が勝利した。
…10年後
高津耀子が結婚・出産を経て恵美須高校に復帰。ボクシングの副顧問に戻ってきた。沢木先生は母校のボクシング部の指導者に。恵美須高校は新しい顧問の江田先生によって玉造高校と並ぶ強豪校になっていた。昔と比較すると部員も増えて活気があるボクシング部。
木樽のことはインターハイ2連覇・高校3冠を達成した伝説のOBとして知れ渡っていた。しかし、鏑矢のことは誰も知らなかった。
稲村和明はその後、プロに転向し世界チャンピオンになった。28戦全勝という輝かしい経歴で引退。木樽優紀は検事になったと伝えるも、部員たちは検事という職業を知らないことに苦笑する高津。木樽が稲村和明からダウンを奪ったことがあると話すと「すげえ!」と部員たちは目を輝かせる。
鏑矢は稲村との試合で両拳を骨折し、結局回復できなかったため、その後マネージャーに専念。ついに高校生活で1冠も取れずに終わった。 高校卒業後、英語もわからないのに渡米。お好み焼き屋を現地で繁盛させた。
部活動の時間が終わり高津が部室を閉めようとしたら、風が部室に舞い込む。リングの上に鏑矢が見えた気がした。風のような人物がいたことを証明できるのは部室に飾られた一枚の写真だけだった・・・。
***感想・評価・考察***
『永遠の0』で有名な百田尚樹による青春スポーツ小説が原作の漫画。作画はのちに『天空侵犯』で有名になる大羽隆廣が担当。小説は累計40万部を超えており、2010年に市原隼人主演で映画化もされた。しかし漫画版は電子書籍化されておらず、現時点では単行本をアマゾン等のネット通販で買うしか入手する方法がない。
小説版が好きでファンになったので漫画も購入。小説を漫画化するにあたって省略されたエピソードも多く、ストーリーが大幅に変更されているのが少し残念。特にエピローグが微妙に違っていた。とはいえ漫画も作画のレベルは高く、もっと評価されていいボクシング漫画だが、なぜか漫画版は話題にならなかったのであまり知られていない。
ボクシング漫画と言えば『はじめの一歩』『リクドウ』に代表されるようにプロボクシングが多いが、本作は高校のアマチュアボクシングが舞台になっている。ただ高校生活にはあまり触れていないため、純粋にスポーツ漫画として楽しむことができる。迫力満点のシーンも多く、感動と興奮が止まらないおススメの漫画です。