2006年から週刊ヤングジャンプ・月刊ヤングジャンプで連載していた『秀吉でごザル!』の最終巻7巻の最終回(最終話)を含めた感想ネタバレまとめ。結末(ラスト)はいかに!?
織田信長と近衛前久の関係にくさびを打ち込む為に謀略を仕掛けた秀吉。信長と前久、二人の間には不穏な空気がただよい始めた。そして、本能寺の変が起こるのだが…!? 戦国ジャパニーズドリーム、感動の完結巻!!
本編あらすじ
織田信長から密書を見つけたと見させられる近衛前久。朝倉義景の居城から一通の文箱を発見し、中からは前久の名前で義景に対して浅井長政・武田信玄・上杉謙信らと協力し信長を包囲して滅ぼせという命令書が入っていた。完全に包囲される前久。
近衛前久は確かに足利義昭に信長包囲の命令書を書かせたが証拠隠滅しており、その書が残っていることはありえない。ニセ手紙であると釈明する。それでも疑いが晴れない前久は怒り「下郎共が!そうまで疑うなら筆を持てい!我が身にかかった疑念を振り払ってくれるわ!」と厳しい口調になると突然笑いだす信長。
実はニセ手紙であることを最初からわかっていた信長の自作自演だった。武家顔負けの気迫と知力と人脈をもつ前久が、裏で信長を追いつめようとしていることを怪しんでいた信長の策略だった。証拠はないが、確信を高めた信長。
織田信長が太政大臣になるとの言葉に近衛前久は戦慄する。それは彼ら公家衆にとっては死刑宣告に等しいものであった。太政大臣とは公家としての最高権威にして最上の官位である。天皇のすぐ下で関白の上に位置し実質的な職責はない。
実は中身のない名誉職であった。公家たちの間ではただのもちまわり役職で誰がなってもならなくてもどうでもよいものだった。実際、空位になることもよくあった。しかし、この官位に軍事力も経済力も政治力も持っている武家の信長がつくとなると話は全く別になる。つまり日本で天皇の次に偉い人が織田信長になるわけだ。
完璧な独裁者の誕生である。天皇を私物化し綸旨や勅令は出し放題。誰も信長に逆らえなくなる。日本も皇室も新たに生まれた織田王朝に乗っ取られることになる。前久ら公家衆もこれで天皇と完全に切り離されてしまう。
信長の気分次第で官位を奪われ生殺与奪権まで握られてしまうのだ。まさに朝廷にとっては悪夢というしかない。魔王と表立って対立したくなかった前久だが、一刻の猶予もないため、天皇にかけあって自身を太政大臣に指名してもらう。そして信長からの暗殺を恐れて九州の島津氏のもとへ逃げる。しかし、それは時間稼ぎにしかならなかった…。
ニセ手紙を作らせて信長の部下にさりげなく発見させたのは秀吉だった。怪しい人脈が多く誰も信用していない前久にとって犯人の特定が難しいことを利用した秀吉。側近の松永久秀は(信長ほど強くもなければ前久ほど賢くもないが、あの両者の力も知恵も軽く飲み込んでしまう無限の器を持っている。これこそが天下人に相応しい資質)だと秀吉を評価する。
七年もの月日が瞬く間に流れ去り…。1582年、この頃になると誰の目にも信長の権勢はとどまる所を知らず天下布武の完成は間近にせまっていた。長篠で武田勝頼を討ち取り信玄の一族を滅ぼし、上杉謙信も病没した。前久のいない間に右大臣になり、朝廷の権威を利用して尊皇心の強い本願寺顕如を圧倒。本拠地の石山本願寺も落城させた。残るは太政大臣の就任のみとなり、就任をもって天下統一は完成する。
信長は本能寺で公家たちを招き茶会を催した。そこに薩摩にいるはずの前久が現れる。公家たちの前で信長に太政大臣の位を譲る前久。それを知った明智光秀は絶好の好機と判断して「敵は本能寺にあり!」と叫び進軍する。
一方、本願寺では酒宴をひらこうとする信長の前に現れる華陽。ついに前久が憑き鬼神と自身の正体を信長に明かす。朝廷を私物化するため天皇を拉致しようとしている信長を成敗すると言い放つ。鋼の肉体を手に入れた前久の前に信長の刀も通じない。
信長は滑稽なほど、とり乱し泣き叫ぶ。命を惜しんだわけではなく天下人として日本の明日を一目見たいがためだった。自分の積み上げた功績と人に憎まれても貫いてきた信念。その完成した姿を見たかったからだった。
信長は憑き鬼神である第六天魔王に助けを求めるが、第六天魔王は天皇と朝廷を守護する魔物のため天皇の臣下である前久は殺せないため手出しができなかった。ついに前久が織田信長を斬る。斬られる最後に心の底から信長を恨み前久を動かした本当の黒幕の姿・秀吉の存在を知ることになる。
数時間後、明智光秀が本能寺に着いたときにはすでに信長の死体もなく、綸旨も消えてなくなっていた。信長の死体は前久が隠しており、第106代天皇・正親町天皇自ら御所の庭に穴を掘り埋める。政治の中枢であり争いの中心でもあった京都御所ほど相応しい場所はないとして「眠れ信長…。ここでながら無念の死を遂げたお前の眠りを誰も妨げることはあるまい。」
光秀は信長の死体も見つからず綸旨もないまま完全な宙ぶらりん状態であった…。そのくせ恐れていた主君殺しの悪名だけは広まってしまい友将だった筒井順慶や細川藤孝らに見捨てられ、その兵力も士気も落ちていった…。
士気の落ちた明智軍とは対照的に信長の仇を討つという大儀を掲げ勢いにのった羽柴軍は天王山でにらみ合いになる。秀吉は猿冠者を使い光秀との一騎打ちに持ち込む。ここにくるまでにかけがえのない二つの命を失ってしまっていた。
たとえ天下を手にしても、もう共に喜んでくれる仲間はいない。半兵衛は秀吉に手柄を立てさせる為に戦につぐ戦で病を患い死んでしまった。松永は柴田と共に上杉を討てという信長の命令に従えなかった秀吉の失敗を目立たなくするため謀反を起こし裏切り者として果てた。秀吉を庇って身代わりに死んだようなものだった。
「ワシはもう自分の我欲のためには生きられない…。生きたいとも思わない。この命は天下のために使ってやるんじゃ!」と宣言し光秀を倒すが、命まではとらず最後に光秀は逃がすのだった。
夢と希望を武器に戦国の世を駆け抜け、ついに信長を倒した秀吉。天下人の座をほぼ手中にした今、その夢と欲望を律する新しい闘いが彼の中で始まっている。己の中の黄金色の獣とともに秀吉は新たな一歩を踏み出していた。
光秀を討った秀吉は大々的に主君信長の葬儀を執り行った。信長の遺体が見つからなかったため木像を作らせこれを荼毘にふした。秀吉こそ一番に仇討ちを成し遂げた忠義者とパフォーマンスを打ったのだ。さらに本能寺の変を生き延びた信長の孫・三法師をかつぎだし後見人となった。子供の多い信長の跡目をはっきりさせ実質的に織田家中のまとめ役として成り上がっていった。
これに反目したのが織田家に代々仕えてきた古参の家老・柴田勝家だった。そんな勝家にとてつもない提案をしたのが信長の子・信孝。お市は柴田家の花嫁御寮となって勝家の本拠地・越前北ノ庄城へ嫁いでしまった。これを知った秀吉の衝撃は万福丸殺害を言いつけられたときより酷かった。しかし、どんなに悔しがっても秀吉は織田の一族ではない。織田の人々が決めた事には逆らえず、黙って北へ去るお市の輿を見守るしかなかった。
前田利家の屋敷でお市と会うことができた秀吉。熱田の神が秀吉だと気づいており、勝家に嫁いだのは秀吉に天下統一をさせるためであるとことを明かす。秀吉以上に信長を殺したいと願っていたお市。織田一族が滅ぶように願掛けをしていたが、秀吉が熱田の社に隠れていたときだけ手違いで嘘の願掛けをしていたのだった。乱世を終わらせるために勝家とともに滅ぶ決心をしているお市。
泣きながらもお市の意志に従う秀吉。その後、秀吉は利家の軍とともに柴田軍を圧倒し猛将・佐久間盛政も生け捕りにした。北ノ庄城は羽柴軍の総攻撃を受けて炎に包まれた。勝家が羽柴秀吉と対立して賤ヶ岳の戦いで敗れたため、夫・柴田勝家と共に北ノ庄城内で自害。
天正十三年。見なれぬ大柄の僧侶が大阪城にいる秀吉のもとを訪れた。信長を殺したあと得度して僧侶となった近衛前久もとい近衛龍山であった。かねてよりの約束だったものを渡す。近衛前子から名前を聞かれた秀吉は「ついさっき改名したんじゃ。豊臣!豊臣秀吉じゃ!」
***感想・評価・考察***
5巻くらいまでは面白いが、最後は月刊ヤングジャンプの休刊が決定したため、打ち切りのような終わり方をしているのが残念。今でこそ一般的になっている戦国武将の女性化だが、連載時期にその発想はまだ一般的ではなく面白いと思った。
ちょいエロも含まれて登場人物も魅力的だが、最終的にねねや雑賀孫市がどうなってしまったのか。いつのまにか腹心の竹中半兵衛が病名や経緯もわからず病死していたり、松永久秀も死んでしまっていることは仕方ないとはいえ残念に感じた。