1988年から1994年までビッグコミックオリジナルに連載していた浦沢直樹・勝鹿北星・長崎尚志による漫画『MASTERキートン(マスターキートン)』完全版から好きな名言・名台詞・名場面をまとめました。
私は地獄へ落ちるだろう。
ジプシーとハーメルンの笛吹き男伝説の話。1942年11月、列車の中でカーニバルレスラーの太い脚に注目している一人の男性。あの足を使って、私にはやることがある。たとえ地獄に落ちることになっても、それでも私は裏切り者の名前を、後世の人々に伝えねばならない。(第4巻『オルミュッツから来た男』)
MASTER KEATON / 4 完全版 (ビッグコミックススペシャル)
嘘をつかないことです。
世間ではSASの軍人は人殺しの集団だと言われているが、一つだけ良いところがあるとキートンは語る。IRA(アイルランド共和軍)とSAS(英国特殊空挺部隊)の戦いの話。IRAと英軍は互いに流された血の量をはかろうとするように報復しあっていた時代があった。(第4巻『偽りのユニオンジャック』)
どうも天田家は天狗の血筋らしい。ハッハッハッ!
岩手県の天草神社に祭られていたのは英国製の時計だった。時計が入っていた箱にはなぜかスコットランドの紋章が刻まれている。その紋章の謎を解明すべく、キートンは調査に乗り出す。そして、スコットランドのスピー渓谷に伝わっているロード・オブ・スコッチの悲しい物語に辿り着く。(第4巻『アザミの紋章』)
また一人、友達をなくしたよ…
ベルリンの壁が崩れた日、東ドイツ政府とソ連は西側スパイ網を記した書類をSTG本部から列車に乗せ、ルーマニアに送った。チャウシェスク政権崩壊によりスパイリストは行方不明となったが、大半はソ連軍が回収したと言われている。東ドイツが西に潜伏させたスパイは六千人。彼らをどうするか、西ドイツ政府はなんら正式なコメントを発していない。(第5巻『匂いの鍵』)
MASTER KEATON / 5 完全版 (ビッグコミックススペシャル)
ドナウ河近くの動物園では、ライオンがヒョウの檻に入り、出られなくなっています。
英国政府が一大事の際に世界中にちらばったスタッフを呼びよせるため、一般放送を使って暗号か緊急指令を流すことがあると、キートンは説明する。(第5巻『豹の檻』)
私の予想よりも、二台も犠牲が少ない。
ラジー少佐が、フセイン大統領に「偉大な戦果です」と言い放った言葉。味方の戦車を犠牲にしてイランの石油基地を破壊したことに、さすがのフセイン大統領もこれを偉大な勝利と見るべきか、暴挙とすべきか言葉に詰まったという。(第5巻『カルーンの鷲』)
今こそこれを飲むのにふさわしい時です。
神の助けが必要なほど苦しい目にあったら、二人で飲もうと決めていた。弾丸が飛び交う中、摘んだブドウからできたのは奇跡の最高傑作シャトーラジュンシュ一九四四年。神のきまぐれとも言える最高級赤ワインを飲むタイミングとはー。(第6巻『シャトー・ラジョンシュ1944』)
MASTERキートン 6 完全版 (ビッグ コミックス〔スペシャル〕)
十一人目に出てきてヘロヘロの俺を倒したのは誰だっけ。
湾岸戦争の戦勝パーティーでワイズ伍長が言った言葉。十五年以上軍隊にいたが、無駄だったように思えると言うワイズに、キートンは格闘技の訓練で十人抜きをやってのけた昔話をした。(第7巻『勝利の陰に』)
MASTERキートン 7 完全版 (ビッグコミックススペシャル)
獲物を休憩室に運ぶ。男達は仕事ぶりをたたえる。ひと仕事終えたあとの冷たいミルクは格別だ。
ウイスキーキャット『ベサ』の言葉。ベサは百年の歴史をもつスコッチの名門『グレンソラス』で職人たちと働いていたが、工場は閉鎖。仕事場の麦芽室でスコッチの香りが日に日に薄くなっていくのを残念がりながら昔を思い出す。(第7巻『ウィスキーキャットの村』)
私はあの一対のタペストリーの物語を語り継いでいこうと思う。遠い東の国の祭りのこととともに…。
スペイン人リベラ氏の言葉。五百年の歴史を誇るスペインの城の真実は、京都の祇園祭に答えがあった。後日、葉書でボロ城の修復工事が始まったことを告げる。自分の命があるうちに完成するかはわからない。(第7巻『祈りのタペストリー』)
さすが孫文先生だ。日本のものを中国の菓子に生かすとは…
孫文は「この味を守り育てよ。美味しいものに国境はない。やがて中国料理は世界に広がる」と伝えた。孫文の予言通り、世界中に広がりつつある中国料理。しかし、本当の中国料理を食べさせる店は数えるほどしかない。と店主は言う。(第8巻『特別なメニュー』)
MASTERキートン 8 完全版 (ビッグコミックススペシャル)
行けども行けども死の世界だった。
チェルノブイリの事故処理に参加したセルゲイは静かだったと答える。チェルノブイリ原発事故の跡は鳥の声も虫の音も子供の遊ぶ声もない何もない死の世界が広がっていた。核爆発で発生した原子の光は太陽のように眩しかったが、自分達の手に負えるものではなかった。(第8巻『狂った太陽』)
俺が臆病者だったからだよ。
アンゴラの白い豹と恐れられていた元傭兵のフォスター大佐。戦場で勇敢なものは全員死んだ。死を恐れていたから生き残れた。自身を臆病者と評するが、勇気ある臆病者だった。(第9巻『臆病者の島』)
MASTERキートン 9 完全版 (ビッグコミックススペシャル)
いつか君は星を産む。君の星は私達を照らす。たとえ今は暗くとも君の星は明るい♪
旧東ドイツでは、社会主義体制に異を唱える政治犯や西への亡命者の子息を、見せしめのため強制的に養子に出していたという。しかし、これを担当したとされる旧東独青少年教育省の関係者はその事実を否定している。(第9巻『心の壁』)
私が不死身でなければな!
ロシアン・マフィアに追われている不死身を自称する謎の老人。キートンから一粒のチョコレートをもらい大きな借りができたと言い、ロシア帝国最後の皇帝ニコライ二世が残したとされる五百トンの金塊の謎を語りだす。(第10巻『不死身の男』)
MASTER KEATON / 10 完全版 (ビッグコミックススペシャル)
二子山の鬼さんは青いお目めに血の涙♪
第二次世界大戦中、日本各地に多くの欧米人捕虜収容所が存在したが、終戦直前、戦争犯罪の告発を恐れた軍部により収容所は閉鎖。関係書類は焼却された。このため、現在ではその実態を知ることは困難を極めるが、子供たちの童歌に真実が隠されていた。(第10巻『真実の町』)
ボウズ、いい人じゃねえ…偉大な人だ。
ルーマニアで盗難車ビジネスをしているマフィアのボス・セヴェリンの言葉。ジェコバ村に行くキートンに気前よく乗っていた車をプレゼントした。贋作のルノアールの絵画に手をだしそうなときにキートンに助けられた借りを返した。(第12巻『ブカレスト脱出!!』)
MASTER KEATON / 12 完全版 (ビッグコミックススペシャル)
昨夜、胸が重くて重くて目を覚ましたあんたらは、どうやって願いを叶えるかな?
地中海の島々に伝わる小人の妖精伝説に紐づくなぞなぞ。キートンは旦那と離婚した娘の百合子とともにその謎を解く。大釜の伝承が、豊穣の女神を奉じる地中海にも広がっていたのか…。(MASTERキートン Reマスター『マルタ島の女神』)
戦った俺に残ったのは、後悔だけさ。
フォークランド諸島を巡るイギリスとアルゼンチンの戦争。サッチャーは我が国固有の領土のための大義ある戦争だったと言うが、戦争に参加したボブに残ったのは後悔だけだった。戦争は何が善で何が悪なのかわからなくなり、頭の中の羅針盤を狂わせる。(MASTERキートン Reマスター『栄光の八人』)
まとめ
名言が多い作品ですが、イギリスやスコットランドを始め世界中の歴史・文化・戦争・宗教・民俗学の勉強になります。砂漠にはスーツが良いなど雑学ネタも豊富で地理・歴史全般の知識を学ぶ図書としても面白いのでおススメです。
98年に放映されたアニメを覚えている人も多いのではないでしょうか。全巻揃えておくとカッコいい漫画でもあります。世代を超えても印象に残る名作漫画ですよね。