2013年2月に発売された週刊ヤングジャンプで連載中『キングダム』27巻の感想ネタバレまとめ
楚軍の臨武君が討ち取られる報は瞬く間に知れ渡った。そんな中、信達飛信隊は万極率いる趙軍と戦っていた。万極軍は長平の大虐殺で死んだ兵士の遺族・遺児で構成されている。いわば長平の呪いといえる軍勢だった。信はその怨念に対し怯んでしまうが・・・。
目次
第284話 呪いそのもの
第285話 穴だらけの荒野
第286話 答えのない
第287話 人間全て
第288話 初日の報告
第289話 化けてみせろ
第290話 女傑・媧燐
第291話 膠着
第292話 韓の兵器
第293話 短期戦
第294話 蒙武の檄
本編あらすじ
キングダム 27 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
楚将・臨武君討ち死にの報が合従軍に伝わる。総司令・春申君は自軍の将の討ち死を聞き「ハゲがしくじったか」とつぶやきつつも戦況を伝者に問う。伝者がこの一報を他軍に伝えますかと聞くが、春申君はとっくに伝わっていると答え、その無意味さを教える。それは各将全員が他の全ての戦場に対して諜報活動を張り巡らしていたからである。
慶舎の策に嵌まり、後ろから攻め込んできた万極軍に挟みうちをくらっている麃公。麃公軍の中において直感で危機を察知した信だけは、飛信隊を引き連れて逆走し手遅れになる前に後方軍の立て直しをはかって万極軍と奮戦していた。
しかし、後方軍だけでも1万の数の敵兵がいる戦場では完全なる乱戦状態に陥り、飛信隊のメンバーは散り散りになってしまう。「長平の戦い」の遺族・遺児のみで構成された万極軍。隊長の信は敵将を前にして趙兵たちを叩き斬っていた。
だが、趙兵がしぶとく食い下がる。腕を切り落としても後ろから信を捕まえる。信が前の敵の大刀をかろうじて防ぎ、後ろの兵を片手で担ぎ上げて投げ落とす。長平にて「秦六将白起」は投降した趙人40万を生き埋めにした。趙人には秦に拭いきれないうらみがある。
そして、今回の万極軍は長平での遺族・遺児のみで構成されている。万極軍あいつらは長平の呪いそのものだ。斬られても突かれても立ち向かってくる趙兵。片腕斬られてもまだ立ち上がる趙兵。その不気味さは信と共に戦っていた松左も歴戦の麃公兵ですらも感じていた。
外側から戦局を見守っていた貂は、長すぎる乱戦でバラバラになった隊を立て直すため、戦場の中に突入。はぐれていた隊員たちを少しずつ拾いながら信の元へとかけつける。そして信は将軍・万極と対峙。万極もまた、かつて秦の白起将軍が40万人の趙の投降兵を生き埋めにして虐殺した、"長平の戦い"の生き残りだった。
19年前の長平の戦い。白起の命で容赦なく縄でつながれた趙兵達が穴に放り込まれる。万極も父や兄と共に穴に落とされる。そして、秦兵たちが土をかぶせる。こりゃすげえやと喚く秦兵、やめてくれえと絶叫する趙兵による地獄が現出する。
万極も兄、父と共に埋められていく、父は怒りで涙を流しながら、皆一緒に死んで怨念となって永劫に秦を呪ってやるぞォと叫んで逝った。怨念に支配された万極は、秦人への恨みから、これまでに数々の秦人への虐殺・陵辱・蹂躙行為を行ってきた。
秦人に対する恨みを語る万極に対し、自らも戦争孤児である信は一定の理解を示すも、ひとつの答えを導き出す。出口のない戦争の渦を解く唯一の答えが、政の目指す道『中華の統一』であること。国境があるから国々が対立し、争いが起こる。国を一つにすることで、戦乱の世の終結を目指す政の道が、信の中ではっきりとつながる。
貂が凶悪な武将で知られている馬央の村々を壊滅させただけでなく一般人を一人残らず殺していると非道を挙げる。万極は同じことをやっているだけだと答える。投降した時点で非戦闘員(捕虜)の一般人40万なのにお前らは全部生き埋めにしたのだと非を鳴らす。「お前が手にかけて人間が同じとは言わせない、無力な女子供まで殺してんじゃねえ」と吼える。
「人間全てが呪われている」と叫ぶ万極に対し、信は、誰もが万極のようになり兼ねない戦国の世の中で、たまたま周りに怨嗟の渦から引き上げてくれる人間がいなかったために最も怨念に取り憑かれてしまった万極を憐れみ、「もう楽になれ」と万極を斬りつける。信は、「俺は長平みてェなことは絶対にやらねェし!絶対やらせねェ!!」と万極に誓い、万極を討ち取るのだった。
将軍首を取った信だったが、手を伸ばして万極の襟首をつかむ。死にゆく万極に信は秦人、秦将として一つだけ言っておくと前置きしてから、一言告げる。最後まで目をそらさない信に万極が自分なりの答えを返す。無言の万極にああと信は言葉を交わす。
すぐに貂の指示で飛信隊は将を討たれた万極軍の鬼の追撃を振り切ることに成功した。一方、麃公軍は夜戦になるリスクを恐れて、慶舎本陣の前で踵を返した。慶舎はフンと一言、口にする。
激動の初日が終わる。咸陽に伝者が続々と入り、大王と百官に函谷関は死守されたと報告される。百官から喜びの歓声が上がり、相国が初日で抜かれたらひっくり返るわと冗談の余裕まで出る。丞相二人、全軍総司令官の昌平君が主に戦況の詳細を問う。
百官も報告に耳を傾ける。伝者が万極を討ち取ったのは飛信隊の信という千人将ですと答え、聞いていた昌文君が思わず声を上げる。聞いていた大王様は玉座を叩いてしまったほどに興奮する。(信…お前には本当に救われる…)
その信は元気がなく、おかげで飛信隊の空気も盛り上がらなかった。でかい武功を挙げたが、長平の怨念話が皆に知れ渡り感傷に浸ってしまっていた。そんな元気がない信の背を思いっきり叩く人がいた。信は丘から転げ落ちて、下にいた貂とキスになった。
麃公は「飲めい小童ァ。今日の勲功者は貴様じゃァ」と酒を突き出し、「それとも万極に同情して世を憂い夜通し泣くか?」と核心をついてくる。一方、楚軍では初日に騰に討たれた臨武君の火葬が行われる。
元・第一軍の千人将以上の者全員が第二将・媧燐の命令で一か所に集められる。愚痴をたたく項翼とそれを宥める白麗。項翼は美人で小柄だと噂を口にしているが…項翼と白麗は身の丈は汗明将軍並みにある第二将・媧燐に驚く。
その1日で騰を討てなかったら全員斬首と命じられ、項翼達全員は戦慄する。冷酷な命令を伝えた媧燐は身長のことを言ったらその場で斬首だと付け加えて去って行った。
総大将・汗明将軍が直々に出向いてきた!何故に軍を動かさぬ、事と次第ではただでは済まさぬと言う。媧燐もさすがに起きて汗明将軍と向き合う。巨人同士の対面で兵士たちが震える。媧燐が逆に本陣に作戦への進言のために伝令を送る。
「全軍大いなる凡戦を連ねて十日後に函谷関を落とすべし」そして2日目は全ての戦場において、地味に戦力を削り合う戦いだけで終わった。
ようやく二日目からここも盛り上がってきたなぁ王翦君とオルドが喜色満面で言い放つ。対する王翦は一段目だけでなく左側面や裏の尾根にも敵が入ってきていると不快な報告を受ける。王翦の要塞の見事さに目を見張るものの、オルドは北の山間民族を取り入れる俺の軍はこういう山城攻めが得意だと上機嫌に誇る。しかし、大本陣からの伝令が新たな命令を伝え、作戦を切り替える。
カリン・李牧の作戦変更により、各地とも6日目まで凡戦が続き、7日目に入った頃、突如韓軍の総大将・成恢(せいかい)が動き出す。毒兵器の研究の第一人者である成恢。韓軍全兵士に口に布を任せた成恢。魏軍に道を開けろ、巻き添えを食っても知らぬとなと伝え、魏の呉鳳明は韓軍に道を開けるように命じる。
韓軍正面の張唐が兵に射ち殺せと命じれば、成恢も攻撃射程に入った韓兵に弓隊で応戦させる。成恢は本来、男も色を覚えるほどの美男子だったが、毒兵器の研究のせいで美男子は毒に体を冒され、ドス黒い血管が浮かぶ醜悪な姿に変貌した。奴の手下も百人以上が死に、生きている奴にも健全なものは一人もいない。
函谷関を護る張唐将軍の持ち場に向かって、毒矢を打ち込み、成恢が“黒玉”を前にと命じる。弩弓を構える韓軍。鏃の代わりに黒玉を装てんする。"丹丸"と呼ばれる煙玉を打ち込んだ。煙に包まれる張唐たちだったが、その場では何の変化も無いように見えた。韓軍はその後さっさと退却していき、張唐は何かを感じながらも、成恢の意図を汲みかねていた。
しかし翌日、8日目の夜。桓騎が張唐の前に現れる。桓騎が白老はと聞くが、張唐は儂一人だと答える。桓騎が張唐に俺をだますとはいい度胸じゃねえかと息巻く。桓騎を呼び出した張唐の顔には、血管が浮き上がり目から血が流れていた‥‥。
そして両軍凡戦を重ね続けて15日目。李牧は、全軍の力を結集してついに函谷関を落としにかかる。合従軍との戦はとうとう山場を迎えた。最大規模の軍勢である、楚軍対蒙武・騰連合軍の戦場では、楚軍総大将・汗明がいよいよ出陣。
カリン軍率いる第2軍と合わせて12万もの軍勢が秦軍を睨む。対する蒙武・騰連合軍は約7万。蒙武は響き渡る声で檄を飛ばし、汗明に対して宣戦布告。蒙武の号令がかかり、先鋒は三千人将・壁が率いる左軍!秦軍による突撃が始まった。