2015年1月に発売された週刊ヤングジャンプで連載中『キングダム』36巻の感想ネタバレまとめ
信の目の前に立ちはだかったのは魏火龍七師の凱孟。信は凱孟との一騎討ちに臨むが、凱孟に負かされてしまう。そして、その間に河了貂が攫われてしまう。一方、羌瘣の尽力により、敵軍の軍師である荀早を捕えており、人質交換の末、河了貂は無事飛信隊に復帰した。その頃、玉鳳隊は同じ魏火龍七師の紫伯と対峙するが、王賁は紫伯との一騎討ちに敗北する。
目次
第383話 呼びかけ
第384話 一騎討ちの裏
第385話 仲間割れ
第386話 貂の存在
第387話 交換
第388話 新生玉鳳隊
第389話 紫伯の名
第390話 同士討ちの過去
第391話 喪失
第392話 中華の注目
第393話 著雍三日目
本編あらすじ
第383話 呼びかけ
王賁の立てた作戦に従い、"3日目の決戦"に向けて戦闘を開始した飛信隊・玉鳳隊・録嗚未軍の3軍。飛信隊の持ち場では、"魏火龍"の1人・突如として前線に現れた魏火龍凱孟。
「飛信隊の信に告ぐ、我が名は魏火龍凱孟、貴様らが相対す軍の大将なり、貴様も相当の腕前らしいが、おれも相当な腕前である、そこを踏まえてこの凱孟と一騎打ちをする度胸があるなら我が両の眼にその面を見せい!」凱孟は突然大声を張り上げ、信に一騎討ちをしろと挑発。それを聞きつけた信は受けて立ち、2人の一騎討ちが始まる。
凱孟は信のことを若いが相当場数を踏んでおり、凱孟を前にしても怯んでいないと感じていた。怪力・凱孟の一撃を受け止める信に驚く魏軍だったが、凱孟の渾身の一撃の強さに信は身体ごと吹き飛ばされてしまう。
信は、かつて廉頗に受けた一撃のような"重さ"を凱孟の一撃ちにも感じるのだった。大物が自軍が優位の中、わざわざ首を差し出してきたのは笑えると一蹴し、廉頗らと違って、知略はないと言い捨てる。荀草(じゅんそう)は賢い廉頗らは凱孟との一騎打ちをことごとく避けたのであり、それは廉頗らさえも凱孟との一騎打ちは死を意味したからであると話す。
第384話 一騎打ちの裏〜荀早の存在〜
戦局を決める一対一の勝負。凱孟は信を矛の達人ではなく、鍛えて数年であり、浅いと見るが、それを補って余りある胆力があると感じていた。
負けじと応戦する信は、凱孟と激しく打ち合うが、一騎討ちの途中で凱孟に撤退指示の急報が入り、闘いは中断される。荀草(じゅんそう)は飛信隊の素早い陣形の立て直しを見て、軍師の優秀さを感じていた。
そして、その指示を送る河了貂を遠くから確認する。撤退指示を出した凱孟の側近軍師・荀草は、飛信隊の軍師・貂に目を付け、貂を生け捕りにしていた。
第385話 仲間割れ〜見えない打開策〜
凱孟は時間切れかとつぶやき、信との一騎討ちの場から離れる。荀早は羌瘣の隊を振り払おうと、河了貂を部下に預け、後方に向かった。意識が戻った貂は、近くに見えた羌瘣隊の旗に向かって叫ぶ。
貂の声を聞いた羌瘣は状況を察し、貂を救出に向かおうとするが、周囲の敵があまりにも多く苦戦を強いられていた。羌瘣が助けに向かおうとするものの、そこには荀早の罠が仕掛けられており、一斉に大量の矢を受けてしまう。
さすがの羌瘣でもとても貂のいる場所までは到達できそうに無く、さらに荀草の指示で羌瘣までもが生け捕りの対象にされたことに気づいた貂は、羌瘣に向かって指揮官である荀草を捕らえるように叫ぶが、再び殴打され意識を失ってしまう。
羌瘣は、貂助け出すのは困難と判断し、羌瘣の近くにいた荀早を生け捕るよう指示する。その指示を受け、羌瘣は巫舞を使い、荀早を生け捕り、そこで力尽きる。貂はそのまま連れ去られてしまうのだった‥‥。
その日の夜。飛信隊の野営地では、貂がさらわれたことを受け、全員が落胆していた。羌瘣がすまないと言うと、信は羌瘣の胸倉を掴み、すまないじゃねえだろお前と叫ぶ。信は心配のあまり苛立ち、詫びる羌瘣に対して激しく怒りをぶつける。さらわれたらどんな目に遭うか分かっていながら何故助けられなかったのか、と信に強く非難された。
周囲は羌瘣は動けなくなるまで戦い、さらに信も含め羌瘣以外誰も貂がさらわれたことに気付けなかったと羌瘣を庇う。羌瘣は落ち込み、貂を助けに行こうとするが、仲間たちに止められる。敵陣では河了貂が一人牢に囚われていた。
第386話 貂の存在〜妹〜
貂は牢に繋がれ、その中で独り俯いていた。捕らわれの身となっている貂は、魏兵たちから激しく虐待を受ける寸前で檻から出され、凱孟のもとに呼ばれていた。
信や尾平らが、一か八か夜襲をかけて貂を助けにいくかどうかを話し合っている時、元・麃公兵の我呂(がろ)は、古参のメンバーにとって馴染み深い人間とはいえ、貂1人のために危険を犯してまでする賭けなのかと疑問を呈する。
また、副長の渕は、飛信隊が凱孟にやられた損害は大きく、軍師の貂も不在の今では、他の2軍のためにも作戦中止の伝者を送るべきではないか、と諭す。
しかし羌瘣は、作戦中止の前にひとつだけ試す手立てがあると話し、貂の咄嗟の指示で捕らえた凱孟の側近指揮官・荀草を使って、人質交換をもちかけることを提案。その方向で隊の意見がまとまりかけた時、再度我呂が口を挟む。我呂は、無策で交渉を持ち掛ければ罠にはめられる危険性もあり、ちゃんと考えてから決めろと信たちに忠告。
交渉に進むにしろ、かなりの危険を犯してまで貂を助けにいく"動機の深さ"を知っておきたいという我呂は、「貂は信の"女"なのか」と信に尋ねる。皆が何故か触れないようにしているが、そこをはっきりさせてくれると納得がいく、と話す我呂。
信は、貂との出会いを振り返り、「貂は政とともに最初に出来た信の戦友であり、唯一の身内である漂が死んだ日からずっと自分の横にいる"たった一人の妹"のようなものだ」と語る。そして、「貂のために特別無茶をやっているように見えるかもしれないが、貂を見殺しにするような真似は絶対にできない」と言い切る。その言葉に我呂も納得し、人質交換に望みを繋ぐことに意見がまとまった。
第387話 交換〜貂の本音〜
凱孟は、貂の表情を見て、貂に問いかける。「女の身で軍師となり戦場などにいる貴様の"欲望"はどこにあるのか」と聞き、「年若き女を戦場にまで引っ張り出してくる信とはどれほどの男なのか」と興味を示す。
信の"女"なのかと問われて激しく否定する貂に対し、「貴様にとって信とは何者なのか心の奥底で信に何を求めているのか貴様の"欲望"をぶちまけてみろ」と再度尋ねる。貂は、戸惑いながらも「欲望かどうかは分からないが、信の夢が叶って欲しい、そして自分も一緒に幸せになりたい」と話す。
凱孟は貂の願望を聞き、それは"女の欲"であり、貂は戦場から去るべきだと忠告するが、貂は「戦場で戦って幸せになる」といって退かなかった。凱孟は貂の"強欲"に納得したのか荀草と引き換えに貂を信のもとに返してやる、と言い出し、無事に人質交換が決行されることになった。
翌日、両軍は相対していた。昨夜、魏の伝者が現れ、凱孟が人質交換に了解した旨を飛信隊に伝えた。両軍の中間地で兵を五千ずつ並べることとした。そして、信と凱孟は自軍から少し前に出て向き合った。凱孟はこれから河了貂を放す、そちらも荀早を離せと言い、人質交換が始まる。無事に貂は飛信隊へ戻る。貂は、自分のせいで作戦が遅れたことを悔やみ、絶対にこの戦は勝とうと信に誓う。
第388話 新生玉鳳隊〜関常の存在〜
玉鳳隊の持ち場では、魏火龍の1人・槍使いの紫伯(しはく)が王賁の前に立ちはだかる。玉鳳隊は五千人隊であるが、およそ五千人隊とは思えぬ程の力を有していた。ここまで隊が成長した理由は三つある。
それは王賁の成長、隊の熟練、そして半年前に王翦軍から派遣されてきた千人将・関常(かんじょう)が加わったことが隊の強化に大きく作用し、初日から前線の敵を蹴散らし爆進していた。
着々と"3日目の決戦"に向け駒を進めていた玉鳳隊だったが、2日目に魏火龍の1人・紫伯が動き出し、魏軍の他所の予備軍を連動させ玉鳳隊を包囲しにかかってきた。展開の早さは率いる将達の頭の回転の早さである。そしてこの応酬にはまだ恐るべき続きがあった。
第389話 紫伯の名〜神速の攻防〜
戦場を回り込み、紫伯の部隊に対して挟み撃ちを仕掛ける玉鳳隊。王賁、関常の両騎馬隊は紫伯隊の背後を攻撃していた。王賁と関常は戦車隊の急襲から、敵騎馬隊の突撃はここに玉鳳隊を足止めにするものであり、それに対応したため敵の罠にはまった。
完全に包囲される前に一旦離脱することを提案する関常に対し、王賁はそのまま突破をはかり、敵将の首を取ると言い切る。
関常は父君王翦はそんな危い手は打たないと大声で叫ぶ。関常は右翼はその攻撃には参加しないと言い、王賁は好きにしろと認める。意見が分かれた関常隊は退却に入り、王賁は敵将・紫伯の居所目がけて突進していく。
その時、王賁が見つけるより先に、突然紫伯が姿を現した。激しく攻撃してくる紫伯の槍はまさに圧倒的であり、玉鳳隊の精鋭部隊ですら太刀打ち出来ずに次々と倒されていく。王賁はすかさず龍指を繰り出した。
紫伯はそれを弾き返し、逆に龍指で返す。王賁はそれを叩き落とし、今度は龍巣を仕掛ける。龍巣は神速で放たれる連続の突きである。王賁は紫伯と激しく打ち合うも、深手を負い、退却を決意。
第390話 同士討ちの過去〜紫伯の過去〜
紫伯の過去に遡る。そこには戦場でただ一人生き残った紫伯がいた。しかし、味方の軍からは冷遇されており、更なる死地へと送り込まれていったのだ。紫伯は齢十五にして討った敵の数は五百を越えていた。
魏軍本営本陣では霊凰が、十四年前の同士討ちの話をしていた。その張本人は紫伯であったのだ。正確には紫伯の妹の季歌にあった。紫伯は色無き世界に住んでおり、その中で妹の紫季歌だけが、唯一の拠り所であったのだ。そんな紫季歌を火龍太呂慈が斬殺したのだ。
当然怒り狂った紫伯は槍を手にし、太呂慈を殺そうした。それを察した太呂慈は晶仙と馬統を味方につけ、霊凰と凱孟が紫伯について争いとなる。
しかし、その結末は紫伯が一人で相手の三将を討ったのだ。隊を離脱させるための指示を出しながらも、王賁自身は翌日必ず紫伯を討ち取るために紫伯の槍を目に焼き付ける必要があると言い、命がけで殿(しんがり)をつとめていた。
第391話 喪失〜詠と季歌〜
紫伯というのは紫家党首という通称である。一世代前の紫伯は平凡な男であり、位と財にものを言わせて、多くの女を囲っていた。現紫伯こと紫詠はその中の一人の女の連れ子であった。そして、紫季歌も同様に別の女の連れ子であった。
年月が流れ、子が生まれなかった前紫伯の後を結局詠が継ぎ、さらに魏火龍に名を連ねる大将軍となった。季歌も王都大梁に名を響かす美女へと成長した。太呂慈は妻殺しで有名であった。太呂慈は不貞を働いた妻を十人以上切り捨てていたのであった。
太呂慈は季歌に対し、今までの兄紫伯との仲は火龍の仲間に免じて許すが、これからは身も心も一点の隙間なく、永劫にこの太呂慈だけを愛し続けると誓えと言う。
しかし、季歌は私が愛するのはこれまでもこれからも紫詠ただ一人ですと言い返す。それを聞いた太呂慈は季歌を一刀両断する。玉鳳隊中央本隊は退却中であったが、敵軍の包囲がほぼ完成していた。もはや力技で抜いたといても半数は失う可能性があった。
しかし、そこに関常が現れる。関常は退路を確保し続けるよりも一度作らせて、裏から崩す方が簡単であると、包囲網を崩すしていった。
第392話 中華の注目〜第一歩〜
魏火龍の参戦に攻めあぐねる秦軍。王賁の画策した三軍同時投入まで残された時間は後一日となった。初戦でつまづいた飛信隊は貂が戻った二日目、敵前線を破り何とか遅れを取り戻した。
一方、玉鳳隊は二日目紫伯軍に敗れる形となった。殿を務めた王賁は何とか関常隊に救われたが、紫伯の槍によって重傷を負っていた。三つ目の主攻の録嗚未軍はさらに出足が悪く、敵前線を越えていなかった。魏火龍に当たらない録嗚未には、3日目の約束の時間にきっちり本陣に攻め入る算段があってのことだったが、霊凰軍に攻め込まれている騰軍の脇を守るためでもあった。様子を見にきた騰から、録嗚未は他の2軍が苦戦していることを聞く。
合従軍戦で中華に名を広めた呉鳳明が参戦することで、この著雍の戦は今や中華全土の注目を集めていることから、録嗚未は、王賁の策に乗ったりせずに、騰こそが指揮をとりこの戦で力を見せつけるべきだったのではないか、と詰め寄る。
騰は、王騎が本気で大王・政と中華を獲りに行くつもりだったことを振り返り、今の秦軍にそれにとりかかれる才覚のある武将が何人いるかと録嗚未に問う。騰は、この著雍の戦を、"秦軍の今後の武威の一角を担うべき若き才能たちの力と名を中華に響かせる戦い"であると思っていると話し、その力を示して欲しいと願っているのだったー。
夜、信は一人夜空を見上げる羌瘣の元に歩み寄った。信は昨夜の八つ当たりを詫びる。羌瘣は明日の三日目の戦いは相当厳しく、よほど深く策にはめこまないと勝ち目はないと感じていた。
第393話 著雍三日目
そして作戦実行の日、3日目。手痛い撤退から一夜明け、三軍同時突入の刻限が迫っていた。夜明け、王賁が宿舎から出るとそこには副将が座っていた。副将が王賁の身体を気遣うと王賁は問題ないと返し、今日の作戦を伝えると関常を呼ぶよう命じた。
貂は、前夜からこの日のために駆け回っていた。凱孟軍の軍師・荀草は、人質交換の際に凱孟が貂と千金抱き合わせてでも交換すると言っていたほどに凱孟にとって必要不可欠な軍師であった。貂は行動に出る。
羌瘣、岳雷、我呂に作戦実行の指示を出した。荀早はそれにより、飛信隊の戦力が右に動いたことを捉えた。それにより正面は信のみしかいないことを見抜き、凱孟を登場させ、その居場所を飛信隊に知らせる。
荀草と貂の戦術の戦いでもあるこの戦。双方とも、慎重に互いを探っていた。そして荀草が動く。凱孟の位置を知らせ、誘い込まれてくる信らの首を討ち取ろうと目論み、布陣を組むー。