エログロ漫画として注目している『リバーシブルマン』感想ネタバレ第3巻まとめ。
過多なストレスから、皮膚が裏返ってしまった人間=ウラガエリ。その特徴は、自己の欲望の抑えがきかなくなること。男への過剰な嫌悪感を隠さない検事、梶井マリアは、レイプ犯の殲滅こそが“欲望”であった―――。
本編あらすじ
1995年、未成年の4人は帰宅途中の梶井マリアを誘拐・略取・監禁し、和姦をはじめとしてその後20日間にわたり性欲と衝動の赴くまま連日あらゆる暴行陵辱の限りを尽くした。
レイプや殴打傷だけでなく身体中五百か所以上もタバコの火を押し付けられた跡があり触れれば血膿が飛び散るほどの火傷痕が多数。乱暴に異物を挿入されたせいで性器は無残に損傷しており膣壁が一部破れ肛門と繋がってしまっていた。
そんな悲惨な状況にもかかわらずマリアの母親は「梶井家の人間は被害者であってはならない」「あの子は弱者を守る側の人間」として娘の容体よりも世間体を気にする。
梶井家は三代にわたる弁護士一家であり三代目を継いだマリアの父親が急逝したため父親の法律事務所を継がせるべく娘の弁護士資格取得は急務という事情があった。
現場を視察した刑事がよく死ななかったというほど凄惨な内容にも耐えたマリア。もっと大きな支配があったのかもしれないと呟く。梶井マリアにとって母親は絶対的な存在であり懸命に励ます医者の声も届かない。マリアが交番に駆け込んだときの第一声は司法試験を受けられなかったことを母親に詫びる言葉だった。
マリアが怪我も癒えぬまま司法試験の勉強しているある日、ウラガエリの兆候が身体に現れる。動揺するマリアは病院の屋上から落下し大怪我を負うが命に別状はなし。その際に精密検査をした結果、妊娠が発覚。
その後も内なる声が聞こえ、遂に体内に赤ん坊(アヤカ)がいる状況でウラガエリが起きる。ウラガエリ後は、マリアの全身の傷は癒え「本当の正義を執行する」と語り、生まれたばかりの赤ん坊(アヤカ)を母親に投げる。
1997年(二年後)、マリアは優秀な検察官になっていた。その裏ではあえて性犯罪者に対して執行猶予がつく裁判に誘導し、犯罪者をみずから襲い正義の名のもとに殺害を企てていた。
そのときに出会ったのが肆矢(よつや)と名乗る短躯の怪しい人物。肆矢は丁寧に殺害方法についてアドバイスをすると、マリアに証拠隠滅できる場所や洋服を提供する。そして笑顔を教義とする宗教法人に勧誘する。
肆矢は第二巻に登場した宗教法人とも繋がっており、現在の教祖を殺して新しい救世主として呉(5)のオジキと呼ばれる人物が宗教法人をまとめ上げる。肆矢はマリアには内緒で呉とともに女の両腕両脚を切断して穴道具(ダルマ)にして売る人身売買の組織をおこなっており、ロクとも因縁があった。
マリアは肆矢の協力もあり自身の監禁事件の中心人物を含め、事件に関与した百名以上の人間を正義の名のもとに処刑する。
2010年、肆矢が仕切っていた人身売買を行っていた廃墟マンションが見つかってしまいマスコミを賑わすことになる。当然ながらマリアの耳にも入り、女性を性商品として虐待してきたことに怒るマリアは、肆矢を止めにきた職場の上司の水島とともに肆矢を殺す。
そしてこの世の罪人の象徴のような血だとして娘の殺害を決意する。正義の名のもとに遺伝子ごとこの世から断ち切るため娘を殺そうとする。
回想終了。そして舞台は娘アヤカとの戦いに戻る。父親の名前をアヤカに伝えようとするがウラガエリ済みのマリアの身体で再度ウラガエリが発生。本来のマリア(ウラガエリが起きる前のマリア)と思わしき手がマリアの口を塞ぐ。
動揺してバランスを崩したマリアはマンションの屋上から落下し、本来のマリアは母親へ「褒めてくれますよね」と最期の言葉を残して死亡するという結末で第三巻は終了。
***感想・評価・考察***
終盤まで梶井マリアの回想が中心。女子高生コンクリート詰め殺人事件をモデルにしたとされる。第2巻から第3巻までの時系列が無茶苦茶なので混乱するかもしれない。特に第3巻の冒頭ページでマリアが監禁されている状況で1995年の5月と書かれているのに4月に保護されているとも書かれており時系列がおかしい。
結末が最後に書かれるので「あぁそういうことね」と気づくのが毎回の流れ。ウラガエリの設定がいまだに難しいというか不可解な部分を多く残している。肆矢は優しすぎる性格だがロクと同じ組織にいたのか、ロクとの関係性もわからぬまま死亡した。
ウラガエリを整理すると「爪が反り返る」「人間が裏返したみたいになる」「ウラガエリが起きても一週間くらいで元に戻る(戻るのにかかる時間は千差万別)」「ウラガエリになるには自分の欲望が関係している」「ウラガエリをすると自分の欲望に素直になる」が明らかにされています。
残された謎としては「結構大勢の人がウラガエリになっているが世間的にはあまり知られていない」「ウラガエリは自身の気合次第で抑制できる」「ウラガエリ中途半端組の体内には空間が生まれる(臓器はどっかに消える)」「どうやら中途半端にウラガエリになると体内に武器を隠し持つのは痛くないが、傷の縫合はなぜか痛い」といった点が挙げられます。