別冊少年マガジンで連載中の『進撃の巨人』感想ネタバレ第8巻まとめ
リヴァイ班の仲間を殺されたエレンは「女型の巨人」との戦いに挑むが敗北。駆けつけたミカサとリヴァイにより救出されるが、「女型の巨人」の捕獲には失敗してしまう。壁外調査の失敗と共に、エレンらの王都招集が決まり……。エレン達に打開の術は!?
目次
第31話 微笑み
第32話 慈悲
第33話 壁
第34話 戦士は踊る
本編あらすじ
第31話 微笑み
巨人になれる兵士がいるという噂は、すでに壁の内側の一般市民にも広がっています。壁の扉なんか早く埋めればいいという市民と、取り乱してそれに食って掛かる教団の信者。描かれ方は完全にカルト集団なんですが、王侯貴族や有力者には支持基盤があるそうで、いったいどんな教義で取り込んでいるのか非常に気になります。
権力を持ち、現在の生活に満足している層はいわゆる保守に流れるはずで、それなら壁を埋めてとりあえずの安寧を守ることに賛成しそうなもの。進んで危険を犯す必要はないはずです。なのに壁を神聖物とあがめ不可侵を主張する宗教を支持する根拠はどこにあるのでしょうか?
民衆にしても、壁が神の創造物で巨人から守ってくれるというのが嘘っぱちだということは知っているはずです。だってシガンシナ区でもトロスト区でも巨人はすでに壁を壊して侵入しましたからね。祈りや念仏では巨人を退けることはできないとわかっているはず。なのにこの教団を支持するのはなぜか…?
舞台はウォール・シーナ(最も内側の壁)の東の出島、ストヘス区憲兵団支部へ移ります。ここには104期卒業生で唯一憲兵団へ入ったアニがいました。本日の任務は、王都へ向け召還される調査兵団の警護です。ストヘス区を通る間、管轄の憲兵団支部が警護を担当することになっているようです。
憲兵団の腐敗を目の当たりにして憤るマルロ。新任の憲兵です。憲兵団を本来あるべき姿に正し、給料分をきっちり働かせ、既得権にあぐらをかいて悪行を働いている連中には報いを与える、自分はそのために憲兵になったと。
アニは珍しく進んで異を唱えます。そんな人が体制で上に立ったら大変だと。流れに逆らってでも正しいことを正しいと主張できる、それは一部の特殊な人で「普通」ではない。それに比べて自分の利益を優先し、周りに流されズルをする自分たちのような人間は、クズかもしれないが普通の人間だ。憲兵団が腐っているのは人間の本質が現れやすいような構造になっているからであって、矯正すべきは人の心ではない、と疑問を呈します。
路地裏でアニを呼ぶ声に振り向くと、そこにはフードで顔を隠したアルミンがいました。王都へ護送されるエレンを脱走させるため、憲兵の協力がいるから手を貸してほしいと。アニは話にならないと拒否、見逃してやると言って立ち去ろうとします。なおもすがるアルミン。「あんたさ…私がそんな良い人に見えるの?」「アニがこの話に乗ってくれなかったら…アニは僕にとって悪い人になるね…」「いいよ…乗った」
ジャンを影武者として護送車に残し、エレン・アルミン・ミカサというバランスのとれたパーティ構成でアニを先導役に市街の裏道を抜ける一行。近道だと言って地下道へ行こうとした時、アニは歩みを止めます。暗くて狭いところは怖いと。早く来いと声を荒げるエレン、それを制するミカサ。アニはある不自然な現象に気づいていました。すなわち、この街路には全く人がいない。
すでに周辺には兵士が潜み、何かを待っているようです。アルミンは右手に拳銃を隠し、アニに問いかけます。「アニ何でマルコの立体機動装置を持ってたの?」マルコはトロスト区で死亡しました。立体機動装置はつけておらず、右半身を失う形で。その装置をアニが持っていた…?アルミンは気づいていたのです。ソニーとビーンが殺されたあと、犯人探しのために立体機動装置の点検が行われた際に。
「そう…あれは…拾ったの」一瞬言葉を選ぶアニ。アルミンはあの時自分を殺さなかったから今追い詰められているんだと言い、アニもそれを認めます。あの時なぜアルミンを殺さなかったのか…と。「あの時」とは、壁外遠征で女型の巨人がアルミンのフードをはずし顔を確認して去った時のことです。
全てを話せとアルミン、エレンはアニを説得しますが、ミカサはそれを制して抜剣。「もう一度ズタズタに削いでやる女型の巨人」アニは諦念したような表情をうかべ、うっすらと微笑んだかに見えました。「私が賭けたのはここからだから」
第32話 慈悲
アルミンが後ろ手に隠した拳銃はアニを撃つためのものではなく、周囲に配置した兵士(?)たちへの号砲でした。合図とともに四方から普通の住民の恰好をして潜んでいた兵士が駆け寄り、アニを拘束!さるぐつわをはめて自傷行為をカット!羽交い絞めにされ、さるぐつわを噛まされたアニ。やったか!?しかし、アニは指輪に刃物を仕込んでいました!勘付いたミカサがエレンとアルミンを連れて後退!
衝撃とともに出現する女型の巨人!取り押さえていた人たちが上空へ吹っ飛び、木っ端みじん!エレンは応戦のため巨人化を試みますが、不発。ミカサは氷のような目でエレンを居抜きます。アニと戦うのを躊躇してるんじゃないの?まだ女型=アニじゃないとでも思ってるの?リヴァイ班を殺したのはあの女でしょ…光のない暗い穴のような瞳でエレンを問い詰めるミカサ。
護送馬車の出発前。班員たちが皆死亡し、ガランと広くなった部屋でエレンとリヴァイは言葉をかわします。普段より口数の多いリヴァイ。
そこへエルヴィンがアルミンらをつれてやってきました。女型の正体を突き止めたらしいです。えっ、どうやって!護送を装い、目標をおびき出して捕らえるのが目的。失敗すればエレンはそのまま王都へ送られて処刑か、すくなくとも拘禁です。チャンスは一度。しかし相手がわかっているなら成功は堅いはず。ではその女型の正体は…?
アルミンはアニに目星をつけました。根拠は2つ。・女型の巨人がエレンの同期しか知らないあだ名「死に急ぎ野郎」に反応したこと・実験体だった2体の巨人を殺したのがアニである可能性が高いこと(立体機動装置の点検でマルコのものを提出していたため)しかしいずれも確証には至らず、可能性が高いというだけです。
が、他にあてはありません。何もせずにいたらエレンが殺されるだけです。可能性に賭けるしかない…そしてアルミンは賭けに勝ちました。エレンは思い出します。女型の巨人の格闘術、構え、蹴り技。それが訓練で見たアニのものと同じだったことを。なおも躊躇するエレン。ミカサは「…それとも何か…特別な感情が妨げになってるの?」
アルミンは作戦を立て直し、指示を出します。なおも躊躇するエレン。ミカサが放った一言「仕方ないでしょ?世界は残酷なんだから」戦わなければ勝てない、座していれば死ぬだけ…。幼い頃から何度も身にしみてきたはずの、シンプルな原理。ああ、そうだった。世界は残酷なんだ。自分は今何をするべきか、エレンは覚悟を決めます。
「だよな」巨人化したエレン、地下なら巨人を拘束できるとかいう設定は完全無視で地面を突き破って登場!!!不意打ちで女型のアゴに強烈な右アッパーをお見舞い!
第33話 壁
教会ではニック司祭が祈りを捧げ、教えを説いています。信者同士が肘を組んで輪になっています。「神聖なる壁を疑ってはなりません」「神の手より生まれし3つの壁は我々の信仰心を捧げることでより強固になるのです」「神を信じる無垢な心こそが巨人から我々を守る術であり唯一巨人を退けられる力で」そこまで唱えたときです。轟音とともに屋根から女型が降って来ました。
輪になっていた信者は全員即死です。教会は潰れて信者が大勢死にましたが、それでも司祭はピンピンしてます。女型の巨人(アニ)は逃走を始めます。エレンの確保は諦めたのでしょうか?壁を目指し全力疾走。この壁はウォール・シーナではなく、外へ向かう壁か?ミカサが追いすがり肉を削ぎますが、アニは平地に逃げ込みます。ここではアンカーがさせないので立体機動ができず、兵士は戦えません。地響きとともにエレンが登場!
(なぁ…アニお前…何のために戦ってんだ)(どんな大義があって人を殺せた)技と技、拳と拳の語り合い。一度は心を通じたはずの104期生同士、今は相手をただ倒すために対峙します。アニのローキックがエレンの骨を断ち、エレンの拳がアニのこめかみを撃ちぬく。最後に立っていたのは…アニ!エレンを昏倒させたにも関わらず、それをほったらかして逃走します。
爪を硬化させ、壁に突き刺して登ります。なんと立体機動装置をつけた兵士でさえ追いつけない速度でのクライミング。意識を取り戻したエレンがミカサを上空へ放り投げ、女型に追いつきます。一刀のもとに右手の指を、返す刀で左指を全切断!!地面に叩き落とします!地面に落ちた女型の首をエレンがもぎとり、完全に無力化。今度こそ人類の勝利です。
落下寸前、アニは父親の姿を思い出していました。「アニ…俺が間違っていた…今さら俺を許してくれとは言わないけど…」「一つだけ…一つだけでいい頼みがある…」「この世のすべてを敵に回したっていい」「この世のすべてからお前が恨まれることになっても…父さんだけはお前の味方だ」「…だから約束してくれ。帰ってくるって…」
父との約束を思い出したアニは涙を流し、次の瞬間、女型の体が光とともに消失。アニは透明なガラス状の物質の中に埋め込まれたような格好となりました。続いてそこへ現れたのは超大型巨人。ここはウォール・シーナの隣接区ですから、やはり超大型も平時は人として街の中に潜伏している可能性が高くなります。閉じこもったアニ、壁の巨人謎が世界を支配する…
配属になったばかりの憲兵団にはもう戻れません。だとすると憲兵団に入った目的も果たせないことになります。そもそもアニはなぜ憲兵団を志望したのか。巨人のスパイとして内部の情報が欲しかった?王政の中枢にいる人物と接触するため?動機はいまだ不明です。どうやら、父親はアニに格闘術を仕込んだだけでなく、彼女の巨人化にも関与しているようです。幼いアニに人為的に巨人化能力を植えつけた際に父親がそれに同意し、そして後悔しているようですが…。
第34話 戦士は踊る
女型の巨人の肉体を操っていたアニは謎の発光現象と共に水晶のような硬質の物体の中に閉じこもり、外部からの干渉を遠ざけていたまま眠り続けています。このままアニが死んでしまったら…?何の情報も手に入らなかったらどうなる…?と危惧するハンジ分隊長ですが、今はもっと大きな脅威が目の前に迫っていました。
壁の隙間から見える超大型巨人ですが、これまでエレンと敵対した「あの」巨人とは別の個体です。よく見ると顔が違います。そして、この巨人はなんと壁の向こう側にいるのではなく、壁の「中」にいる!そして眼球だけを動かしミカサの方を見ました。生きてる…!
ハンジは驚愕のまなざしで下から巨人の顔を見上げますが、とっさに脳裏を横切る思考は「アレは…たまたま、あそこだけにいたの…?」「もしそうじゃなきゃ壁の中すべてに巨人がぎっしり?」「壁の中すべてに巨人が…?」
とんでもない事実が判明した。ハンジの肩を掴み、あの人物が言い放ちます。「あの巨人に…日光を…当てるな…」ニック司祭…!今までこの宗教団体は現実が見えず平和ボケした妄想集団として想われていたニック司祭はあの巨人について知っている!?そして日光が巨人の活動エネルギーであることも。
それを知った上で情報を隠し、「聖なる壁に手を触れるな」の一点張りで壁の強化や地下道の建設を妨害していた。根拠薄弱でありながらも教団が支持母体を拡大し発言権を持てた裏では、王権と教団の間で政治的な駆け引きがあったことは明白。そしてそのことは調査兵団には一切知らされていない。
ハンジはニックに詰め寄り暴力で脅迫します。メガネをはずしたハンジは、目付きが変わっています。仮にも調査兵団で分隊長を務める人物の本気の脅しです。が、ニックも口を割りません。殉教もやむなし、土壇場で覚悟を見せます。ハンジはニックの首元を掴んだ手を緩めるしかありませんでした。
アルミンの考察では興味深い話が聞けます。
・壁は石の継ぎ目や剥がれた跡などがない
・壁は巨人の硬化能力を利用して作ったのではないか?
アニが水晶化したように、巨人の硬質化には汎用性がある。そのため壁を形成することもできたのではないか…とアルミンは考えたようです。そして、人類は巨人によって巨人から守られていたと。
ジャンがいまだにエレンとミカサを引き離そうとしていますが、失敗してガックリしています。アルミンが目で「ごゆっくり」といった感じの合図をするとちょっと照れるミカサ。
今日の出来事について総括するため会議を行う各兵団のトップたち。ニック司祭も出席しています。そこへ緊急事態を知らせる伝令が!「エルヴィン団長!大変です!ウォール・ローゼが!」
アニの仲間がいるのではないかと嫌疑をかけられ、兵装なしで待機を命じられた104期生たち。困惑しながらもウォール・ローゼ南区の施設内でボーッとしていた彼らですが、サシャの耳とミケの鼻が巨人の襲来を察知!南方向から突如として巨人が多数接近!なぜ?どうやってウォール・ローゼを突破したのか!?主力部隊が不在な中、どのようにこの局面を乗り越えるのか!?