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【進撃の巨人】感想ネタバレ第16巻まとめ

別冊少年マガジンで連載中の『進撃の巨人』感想ネタバレ第16巻まとめ

進撃の巨人(16) (講談社コミックス)

進撃の巨人(16) (講談社コミックス)

 

中央憲兵により汚名を着せられた調査兵団だったが、全兵団の協力を得て王政打倒に成功する。残すは真の王家としてヒストリアを女王に即位させるのみ。リヴァイらは、さらわれたヒストリアとエレンの居場所をつかむが……。 

目次

第63話 鎖
第64話 歓迎会
第65話 夢と呪い
第66話 願い

本編あらすじ

第63話 鎖

レイスとヒストリアがエレンの背に触れたことで彼の中にあったグリシャの記憶が呼び覚まされたのと同様、触れた方のヒストリアもある記憶を蘇らせていました。それはヒストリアの異母姉・フリーダのこと。幼いころ農場で母の手伝いをするヒストリアに、麦わら帽子を被ったフリーダは時折訪ねてきて本を読み聞かせていました。懐かしく大切な人の記憶が一気に蘇り、思わず大粒の涙をこぼすヒストリア。

レイスはフリーダがヒストリアと会っていたことは知らなかったようですが、ヒストリアを守るために記憶を消したのだろうと合点しています。フリーダは今どこでどうしているのか?当然の問いを発するヒストリアに対し、レイスは淡々と事実を告げます。「5年前ここで、彼の父親グリシャ=イェーガーに殺されたのだ」。

「フリーダの巨人は全ての巨人の頂点に立つ存在…いわば無敵の力を持つ巨人だった…」「だが、…しかし、それを使いこなすにはまだ経験が足りなかったようだ。フリーダはその真価を発揮することなく、グリシャに食われ、力は奪われてしまった…」。グリシャはレイス家を根絶するためにその場にいた者達を皆殺しにし、レイス本人だけが生き延びた…。

「どうして…そんなひどいことができるの?」ヒストリアの目に浮かぶ色は困惑というよりも非難が濃く、エレンはその声を聞いた瞬間にショックを受けている。フリーダと争う前、グリシャは痛切な表情で何かを訴えています。交渉が決裂し、やむを得ず強硬手段に出たグリシャが私利私欲のためにレイス家を襲ったわけではないでしょうが、その目的はレイス卿も理解していない様子。

レイスとヒストリアの話の途中でケニーが割り込んできます。クーデターのこと、兵団がこちらへ向かっているであろうことをまくし立てますが、レイスはもう用済みとばかりに退去命令を出します。ケニーは何か含みのある表情。彼は大局的な野望というよりも目先の快楽のために殺し奪いたい性質に見えますが、リヴァイに対し「やりたいことが見つかった」「大いなる目標」などと語っています。レイスに背を向けた彼の表情は何か言いたげな苛立ちが混じっています。このままおとなしく去るとはとても思えません。

ちょうどその頃、リヴァイは馬車の上でケニーのことを班員たちに伝えていました。間違いなく作戦遂行時に最大の障害として立ち塞がるだろうと。リヴァイに匹敵する戦闘能力をもち、対人特化の立体機動装置を使うと聞いて臆するサシャとコニー。

「これからは一切の食事を下から摂取していただくことになっています」王都では貴族を拷問して嬉しそうな老ザックレー。エルヴィンやピクシスらも礼拝堂を目指して出発していますが、その到着を待っていてはエレンの命が危ない。今のメンバーで突入するしかありません。すかさずアルミンとハンジがリヴァイの話からケニーの弱点を割り出します。

リヴァイはひとつ気になることがあり、ミカサに尋ねます。ケニー・アッカーマンというフルネームのことを。同じ姓を持つミカサ・アッカーマン。そしてケニーはリヴァイのこともリヴァイ・アッカーマンと呼んでいました。当然、彼らには何かの隠されたつながりがあります。

ミカサは強盗に殺害された両親のことを話します。アッカーマンは父方の姓で、都市部で迫害を受けていた血筋だったらしい。そして母方は東洋人とよばれる一族で、これまた人種差別にあい街では居場所がなかった。そうして追い詰められて隠れ住む者同士が出会い、結ばれてミカサをもうけた。ミカサにとってひとつ不可解なのは、父がなぜ迫害を受けていたのか。人種的な差異はない。平凡で善良な父だったはず。

リヴァイは尋ねます。「ある時突然力に目覚めたような瞬間を経験したことがあるか」子供ながらに誘拐犯を刺殺したあの日、ミカサはまさに目覚めたと言えるでしょう。肯定するミカサにリヴァイは続けます。「ケニー・アッカーマンにもその瞬間があったそうだ。ある時ある瞬間に突然バカみてぇな力が体中から湧いてきて…何をどうすればいいかわかるんだ」

人類最強と呼ばれる兵士リヴァイ。彼と同等の戦闘力を持つケニー。そして歴代に比類なき能力と評されるミカサ。一個の人間として高い戦闘力を持つ彼らは皆おなじ姓を持ち、そして共通の経験をしている。「その瞬間が俺にもあった」

再び礼拝堂地下の結晶洞。相変わらず鎖に繋がれたエレンと、それを階下から睨めあげるヒストリア。彼女の目からはすでにエレンへの労りが失せ…。無言でエレンを見据えるヒストリア。重い沈黙が支配する地下洞窟にレイスの靴音がこだまします。ヒストリアへ歩み寄ったレイスが鞄から取り出したのは、大型の注射器。そして薬瓶の内容物を注射器へ吸い上げるレイス。エレンは当然、それが何であるかを知っています。レイスはヒストリアの肩に手を置くと、フリーダはまだ生きていると告げます。彼女はまだ死んでいない。彼女の「記憶」は生きている。姉さんに会いたいか?と。

「…うん会いたい…」戸惑いながらも期待を秘めた顔でレイスに応えるヒストリア。レイスの意図を察したエレンは全力で叫びますが、両手はバンテージで固められ、猿ぐつわと鎖で拘束されており動くことはできません。エレンはこの儀式を止められるのか!?

第64話 歓迎会

エレンが囚われているのはレイス家敷地にある教会地下の光る結晶洞。周辺に警備はなく、リヴァイらの馬車は難なくそこへたどり着いていた。今回の敵は巨人ではなく、同じ人間。先日の市街戦ではその覚悟が足りず、あわやというところでアルミンに命を救われたジャン。「それでお前ら…手を汚す覚悟の方はどうだ?」と問いかけるリヴァイに黙ったまま冷静な表情で応える。「…良さそうだな」準備は整った。

地下の空間は巨人が立って歩けるほどの高さを持った空間。光る石柱が林立しており、そこに組まれた木の足場には中央憲兵が対人立体機動装置を着けてお出迎えの準備を整えていた。ケニーの姿はない。中央憲兵は王に心酔する親衛隊ではなく、ケニーの私兵的なポジションにあるようだ。副長はここでリヴァイ班を足止めして時間を稼ぐことでケニーの夢が叶うと信じている。彼女が剣を取る理由は王の目的完遂を支えるためではない。「最後まで信じてみよう。この世界を盤上ごとひっくり返すっていうケニーの夢を」。

何者かが創りだしたシステム、あるいはルールに従って盲目的に歩を進めるしかない駒、それが自分たち。ケニーがレイス王とお近づきになり何を知ったのかは分からないが、彼はおそらく世界の成り立ちの一部を覗いた。と同時に野心を持ったのだろう。ルールに支配される駒からルールを支配するプレイヤーへの転換。それはまた壁の中で巨人に怯える日々からの脱出を意味する。憲兵たちはそれを願っているのか。

リヴァイ班が採ったのは煙幕に紛れての攪乱戦法。火薬入りの樽を階下に転がし、サシャが火矢でそれを射る。爆発炎上する樽には油の染み込んだ布が詰まっており、それらが四散して黒煙を上げる。さらに信煙弾を煙幕として張り、空間中の視界を急速に狭めていく。リヴァイが目視した敵の数は35。こちらはリヴァイ・ハンジ・ミカサ・ジャン・コニー・サシャ・アルミンの7名。マルロとヒッチは教会の外で見張りをしている。1人あたりのノルマは5人。入口からはエレンやヒストリアの姿は見えず、相当に広大な空間であることがわかる。煙幕が十分に展開したのを見て突入するリヴァイ班。

ジャンが、コニーが、それぞれ白刃で憲兵の命を刈り取る。これまで巨人を仕留めるために磨いた技術を今存分に殺人行為のために振るう。迷いはない。サシャは弓で敵の胸を射抜き、アルミンは煙幕を張り続ける。ミカサは旋風を巻きながら死体を量産していく。リヴァイは副長を相手にして駆け引きが続く。苦し紛れに逃れようとした副長が隙を見せたところへ飛びかかったハンジだが、これは誘い罠。

対人立体機動装置についた拳銃は単発式で、両手で2発しか撃てない。それを撃ち切ったタイミングを狙ったはずが…ハンジは忘れていた。アンカーそのものにも人を殺傷せしめる威力があることを。直線軌道を描くハンジはいい的でしかなく、放たれたアンカーはハンジの右肩を貫く。墜落し横たわるハンジはピクリとも動かない。リヴァイ班の動揺を見て取った憲兵たちはこの機に体勢を立て直し、煙幕のない地下洞奥部へ退却していく…。

急いで儀式を済ませなければ…と言うレイス王。レイスがヒストリアに語って聞かせた内容は「この洞窟は100年前にある巨人が作った。3つの壁を作ったのも同じ巨人。」「あの巨大な壁を築くことで他の巨人から人類を守った」「その巨人は人々が平和に暮らせるよう記憶を操作した。」「王家は代々巨人の力と記憶を捕食の儀式によって伝えてきた。」フリーダはロッド・レイスの弟(つまり叔父)を食べて巨人の力と世界の成り立ちにまつわる記憶を継承していた。」

「継承者は人類の行く末を左右できる者となり、情報を公開することも秘匿することも自由であった。」「だがこれまで100年の間にそれを公開したものはおらず、初代王の思想に従った。」「フリーダが本来の巨人の力を行使すれば他の巨人を駆逐することもできたが、グリシャに殺された」「巨人の力はレイス家の血筋でなければ本来のポテンシャルを引き出せない。」

始祖の巨人について現王家の当主から語られています。代々というと長そうですが、壁ができたのが約100年前でそこから始まった伝統ですからせいぜい4~5世代。フリーダに食われた叔父は普通に老けていますから在任期間が特に短いとかいうことはなさそう。レイス自身は巨人の力も記憶も持っていないので、秘匿された歴史を知識として学んだに過ぎません。今その冠(座標)はエレンが持っていますが、彼ではその真の力を発揮できない。王家の血筋でなければ真の王にはなれない…。

ここまで言ってヒストリアの顔色が変わる。エレンの中にある「叫びの力」をレイス家の血筋の者に戻さなくては、この世界を変えるだけの力は呼び起こせない。そして力と記憶を継承する方法は捕食のみ。縛られたエレンと、謎の注射。これらが導く真実「これから巨人になってエレンを食べて殺す」ことを悟り、困惑の色を隠せないヒストリア。そこへ頭上から、ケニー・アッカーマンがゆっくりと降りてきます。彼はレイスの血筋でなければ真の王にはなれないのかと問い質し、レイスは「そうだが?」と肯定。顔をあげたケニーは蒼白。

「じゃあ俺が巨人になってエレンを食っても意味ないのかよ…」この儀式についてかなりのことを知っていたようです。そして土壇場でレイスとヒストリアを殺害し、奪った注射で巨人化してエレンを捕食。座標を手に入れて世界を思うがままにしよう、というのを計画していたのか!?自分はどうやっても真の王になれないとわかったケニー。彼らが次に考えることは…?

第65話 夢と呪い

ケニーが王家と出自の秘密を知ったのは今からだいぶ昔。病床に伏し死期が近づく祖父と、若き日のケニーの会話。ケニーのコートは返り血でところどころに染みができており、日常的に憲兵を殺しているようです。ケニーはその理由を祖父に問い質します。なぜ自分たちアッカーマン家の一族は王家から狙われるのか?と。

祖父曰く「壁の中に住んでいる人類はほぼ一つの血縁である。」「純血以外の独立したルーツを持つのはアッカーマン家や東洋人の一族などごく小数に限られた例外的な存在である。」「アッカーマン家はかつて王家に重用された武人の一門である」「王家の持つ巨人の力による記憶コントロールは、純血の者にしか効果がない」「アッカーマン家と東洋人の一族は血の違いから記憶改竄を免れ、さらに王政へ反発したため弾圧された」

「俺は信じるぜその物語を…その方がおもしろい」こうして己の出自を知ったケニーはそれを利用して「盤面をひっくり返す」ことを思いつく。それから時が流れ、いよいよ自分が巨人の力を簒奪できるとなったタイミングで、巨人の真の力は王族の血脈でなければ発揮できないと知らされる。

なおケニーが言うには一族は根絶やし寸前にまで減らされ、(迫害を恐れてか)分家がシガンシナ区へ移住したとのこと。これがミカサの父でしょう。同じく少数派として追いやられた東洋人である妻と結ばれミカサを授かったということになります。ミカサはその辺の事情を聞かされる前に強盗殺人に遭い両親を殺害され、今でも両親が迫害を受けた理由を知りません。

現在の結晶洞。最初から自分は利用されていただけと悟り、逆恨みでレイスに銃を突きつけるケニー。彼はヒストリアの出生を憐れみますが、ヒストリアは決然とケニーに向き合い、エレンを補食して巨人の力と正史の継承者になることを宣言。叫びの力をもって巨人を駆逐することが自分の使命だと述べます。

ケニーはヒストリアの不遇な過去を丁寧に確認してくれます。「ヒストリアはレイスと屋敷の使用人の間にできた不義の子」「ヒストリアは領民や議会から不名誉な存在として疎んじられていた」「グリシャの襲撃により子が皆殺しにされたレイスはヒストリアに慌てて接触」「ケニー率いる中央憲兵は議会からの命でヒストリアと母を暗殺しようとした」

「レイスはヒストリアを兵団に送ることで助命し、ウォール教に身の回りを監視させ守った」「フリーダが殺され巨人の力を強奪された事実が知れるとレイス家の求心力が衰えると考え、その事実を公表しなかった」「レイスは自分が巨人になることを恐れ、責任を子になすりつけた保身しか考えていない男である」

これらの中でレイスが否定したのは最後の一文のみ。自分が巨人化できないのは理由があるとだけ。ケニーに短剣を口の中へ突っ込まれ、切っ先で命をもてあそばれている。興ざめだと言わんばかりの顔でレイスを解放したケニーに、平和になった世界で長生きしろと無冠の王は告げます。「…それじゃあつまらねぇんだよ」その瞬間、彼はレイスとヒストリアに背を向けエレンへ歩み寄り、戒めを解く。

退屈な平和の訪れに絶望し、不服なケニーが最後に試みたのは、エレンとヒストリアの巨人大決戦。ヒストリアが勝てば王家に巨人の力が戻りこの世は平穏、こともなし。エレンが勝てば壁内は混迷が続く。もはや他人事になった「座標」争奪戦を煽り傍観する構え。

「寿命が尽きるまで息してろって?それが生きてると言えるのか?」久しぶりに解放されたエレン。これでいつでも巨人化できます。レイスは鬼気迫る顔でヒストリアに注射器を渡し巨人化を促すのですが、ここで面白いことを言います。「安心しろ。この注射なら強力な巨人になれる最も戦いに向いた巨人を選んだ」巨人には用途に応じた様々な種類があり、そしてストックがまだ他にも十分あるような口ぶり。

エレンの脊髄液を自分の体内に取り込めば条件は満たせる、「急げヒストリア!」急かすレイスに応え、注射器を自らの腕に近づけるヒストリアですが…エレンは身じろぎすらせず、洞窟内は変わらぬ静謐を保っています。なぜ巨人化して抵抗しないのか?そのまま座していれば死ぬだけなのに。ヒストリアの問いに応えるエレンは涙を流していました。

先刻、ヒストリアが自ら王として叫びの力を継承し全ての巨人を駆逐すると誓った時、エレンは知ったのです。自分の存在なんてはなから必要なかったということを。グリシャが何のためにレイス家を襲い座標を強奪したのか分からない今の状況では、彼が行ったことはただの強盗殺人。王家に力が不在となることで巨人の侵攻を許し、それから5年の間に数えきれない人命が失われた。

シガンシナが巨人に襲われた後、グリシャが何もせずフリーダが叫びの力を継いだなら、すぐさま彼女がその力で巨人を調伏できたはず。エレンは自分と父親の存在がどれだけの犠牲を生んだか思い巡り、自らの「駆逐してやる」という決意や訓練の日々、これまでの半生そのものが本来この世界には必要のない、余計な遠回りであったことを嘆き落涙します。全ては無駄で、自分と父親がいなければこの世界は平和だった。己が無知であったことも含めてその罪は償いきれないが、せめて同志であったヒストリアに全てを終わらせて欲しいと懇願。抵抗せず彼女に委ねる意思です。

ヒストリアもまた歓迎されない不義の子として疎まれ、世界に必要のない存在であった幼少の日を思い出してもらい泣き。先日エレンと語り合った束の間の安らぎに感謝を述べると、意を決して注射針を自らに刺し…。光に包まれ、巨人が出現する!!

第66話 願い

ヒストリアは注射針を自分の腕に刺した痛みから、かつてフリーダと過ごした日の記憶を思い起こしていました。幼少の日、牧場の柵を越えてフリーダの元へ行こうと試みたヒストリア。彼女は柵に出ていたトゲで手を傷めてしまい、それを見たフリーダは鬼のような形相でヒストリアを叱りつけます。「柵の外に出るなって言ったでしょ!」

ヒストリアはふと疑問に思います。フリーダは巨人を屈服させられる力を継承しながら、なぜ人類を脅かす巨人たちを排除しなかったのか。フリーダは時折ヒストリアの前で人が変わったように取り乱し、「私達は罪人だ!」などと叫び散らした挙句にひどく落ち込んだ様子を見せたと言います。無論、それは叫びの力とともに初代レイス王の記憶を継承した者にしかわからない苦悩。

ロッド=レイスは王の記憶の詳細を知りませんでした。彼が知っているのは、記憶を継承した者は押しなべて巨人を滅ぼすことはせず、人類を今の状態に据え置いたという結果に過ぎません。それが何故なのかは親族といえど聞かされていないようなのです。ロッドの父も、弟のウーリも、娘のフリーダも、皆一様に巨人から人類を解放しようとはせず、その理由を明かすこともありませんでした。すなわち、何か重大な理由があって初代王は壁を作って人類を閉じ込め、巨人を滅ぼさずにおくことで人類が巨人に怯えながら暮らすことを望んだ。フリーダは「私達は罪人だ」と言ったそうですが、「私達」とは人類のことでしょうか?それとも王家のことでしょうか?

ロッドは叫びの力を持つ巨人を神だと考えています。全てを知り、世界の構造を創り、理を思うまま書き換えられる。巨人に支配されるこの世界は神が創りたもうた箱庭。災いも救いも神の御心のまま、その全てに意味がある。そして、ロッドはウーリと交わした約束を果たすため、その神を現世へ降ろし祈りを捧げることを願っている。これが彼の言う、自分が巨人になれなかった理由。ロッドは神ではなく祈る者でなければならないという、弟との口約束です。なんともフワフワしたスッキリしない拠り所と言わざるを得ません。

急かす父を前に、ヒストリアは注射針を腕に刺したまま逡巡します。神をこの身に宿すのが使命。それが父の望む自分の姿。その代わり、自分は初代レイス王の記憶に支配され「自分」ではなくなってしまう…。

ヒストリアの進むべき道を決めたのは、親友ユミルの一言でした。「お前…胸張って生きろよ」ウトガルド城の見張り塔の頂上で交わしたあの約束が、ヒストリアの脳内でフラッシュバック。床に叩きつけられ粉々になる注射器。顔面蒼白で絶叫し娘に掴みかかるレイス卿。それを背負い投げで難なくいなし、背中の痛みにのたうつ父を見下ろすと大見得を切るヒストリア。

「何が神だ!!都合のいい逃げ道作って都合よく人を扇動して!!」
「もう!これ以上…私を殺してたまるか!!」

ヒストリアは父の鞄から鍵束を取り出しエレンの救出へ。戸惑うエレン。自分は王の器ではない。このまま叫びの力を持っていても巨人を駆逐することなんてできない。ヒストリアに食われて力を継承させるのが唯一巨人を滅ぼすための有効打なのに!罪悪感と無力感からもう生きていても辛いだけだと泣き喚くエレンを、ヒストリアはゲンコツで叩いて一喝。

父ロッド=レイスは立つこともままならずズリズリと割れた注射器のもとへ這い、家族の名を呼びながら床に広がった薬液を舌で舐め取り…激しい爆風と閃光。前回のラストで巨人化したのはヒストリアではなく父ロッド=レイスだった! 

爆風の中エレンの足枷をはずそうと懸命に鍵穴を探るヒストリア。彼女が選んだ「正直な自分」は、いい子を演じることでもなく、女王の役でもなく、まして神様なんて大層なものでもない。ただエレンの味方でありたい、存在理由を見いだせない弱い誰かを勇気づけてあげたい、ただそれだけを願う少女の姿でした。

爆風で吹き飛ばされるヒストリアをかばったのは駆けつけたミカサ。リヴァイ、コニー、ジャン、サシャの姿もあります。全ての枷が外されると同時に洞窟の天井が崩落。ベルトルト扮する「超大型」を凌ぐサイズの巨人が徐々にその全身を現そうとしています。そこにノコノコと遅れて飛んできたのが中央憲兵、ケニーの部下たち。来るなと制止するケニーですが、言い終わる前に天井が勢い良く崩れ…。

逃げ場を失い絶体絶命のリヴァイ班。巨人ロッドはすでに理性をなくしているのか、エレンを食って力を継承する前に崩落に巻き込んでしまう勢いです。このままでは全員潰されて死んでしまう。しかしエレンが巨人化したところで崩落する莫大な土砂の質量を支えられるとは思えない…。

期待と不安の入り混じった眼差しで仲間たちがエレンを見つめています。「オレは役立たずだったんだ」「人類の希望なんかじゃなかった…」と嘆くエレン。それに対してリヴァイは「好きな方を選べ」と伝える。

エレンが思い出したのは旧リヴァイ班と共に巨大樹の森を駆け抜けたあの日のこと。迷い、躊躇し、仲間を信じたことにして、その結果に散々後悔した惨劇。エレンにとって、あの結果は自分を信じることができず人任せにして責任を放棄したことの帰結でした。

エレンが見やった床にはロッドの鞄に入っていた薬ビンが転がっており、ラベルには「ヨロイ」と書かれています。エレンは立ち上がりそのビンを掴み取るとロッドへ向かって駆けながらビンを噛み砕き、再び激しい閃光が辺りを包む!