週刊ヤングジャンプで連載中の『テラフォーマーズ』感想ネタバレ第5巻まとめ
無数のテラフォーマーの猛攻を受けるドイツ・南米第5班。奮闘する班長アドルフだが、戦況は絶望的に悪化してゆく…!! さらに、小町小吉率いる日米合同第1班は「あの」能力を持つ敵と遭遇…。男達の戦う姿、熱き生き様が刻まれた白熱の第5巻!
目次
第31話 MORTAL EVILS 死すべき魂
第32話 TOO SAD TO DIE 死神の肉声
第33話 THUNDER STORM 第5班の雷電
第34話 HOLY BLOOD 悪魔の血脈
第35話 DESIRE 願い
第36話 GREAT DEVOTION 偉大なる行為
第37話 END OF THE HEAD 頭の死
第38話 DEAR HEART あなた
第39話 DIE HARD 不落の蛄
第40話 ON THE CLOUD 雲の上の韋駄天
第41話 JET! 神風
本編あらすじ
第31話 MORTAL EVILS 死すべき魂
300匹近くいると思われるテラフォーマーの群れにもひるまず、その電撃で次々と敵をなぎ倒すアドルフ。その背中ではイザベラが人為変態を遂げ、獰猛な肉食の巨大コオロギ・リオックの能力を解放してテラフォーマーへ飛びかかった。
得意の脚力を活かした渾身の飛び蹴りを放つも、テラフォーマーのアッパー1発で上半身がまるごと消し飛ばされ、内蔵をまき散らして死亡。アドルフはテラフォーマーに正面から顔面を殴られても、皮膚から粘液を出してヌルンとかわしている。敵の目を指で突き、ベアハッグで骨を砕かれながらも目に直接電流を流して焼き殺す。彼は涙を流していた。
戦いながら、彼はこれまでのことを思い出していた。アドルフの両親はバグズ手術の被験体だったが手術の失敗で死亡、アドルフ自身は研究施設に買われたも同然で、幼い頃からMO手術の実験台とされていた。
16歳の誕生日、アドルフは将来伴侶となる女性とキスをする。自分を実験動物でなく人間として見てくれる、初めての人だった。U-NASAに飼われ一生をそこに縛られて生きる運命のアドルフにとって、自分の人生に意味を見出すことができたのは彼女のおかげといって良い。
しかし彼女と結婚して子を設け、生まれた赤ん坊を見てアドルフはある恐怖を抱く。その子にはモザイクオーガンが遺伝していなかった。MOが確実に子へ遺伝するかどうかはわからないが、アドルフは妻の浮気を疑う。ベッドで眠る赤ん坊を尻目に口紅を塗るアドルフの妻。結婚指輪をはずしクマのぬいぐるみの前に置くと、玄関をあけて男を出迎え抱き合っている。
いずれにせよアドルフは妻に問いただせなかった。その迷いと恐れが彼の中で膿み腐り、心を蝕んでいる。自分は彼女のおかげで「人間」になれた。なのに彼女はまるで動物のように相手を取り替え交尾している・・・?
自分が人間なのかウナギなのかもわからないまま、彼は火星へ来た。そして今戦っている。何のために?誰のために?アドルフはテラフォーマーを殺し、そして心のどこかで自分も死ぬことを望んでいる。
アドルフが戦っている場所へ、新たに5体のテラフォーマーを乗せた車両が到着した。かつてバグズ2号が残していった車と思われる。人類の乗り物を扱うのは彼らにとって別に難しいことではないようだ・・・。
明らかに他の個体より体が大きく、腕に縄を巻いた者が3体。腰に布を巻き、髪がなく額に模様がある者が1体。彼らの到着を見て、他のテラフォーマーの群れは「気をつけ」の姿勢をとる。腰布の個体はアドルフを指さし、何事かをゴキブリ語で長々と喋るのであった。
車両の上に立つ、腰布つきのテラフォーマー。そしてその傍らに立つ大型の個体は、棒に布をくくりつけた「旗」を掲げていた。「気をつけ」の姿勢をとり、一斉に声を上げるテラフォーマーの群れ。そこには明らかな上下関係と規律が存在している。
第32話 TOO SAD TO DIE 死神の肉声
何百というテラフォーマーの行進に、アドルフは電撃を放ち続け、手裏剣を投げ続けた。だが圧倒的な数の差に押し包まれ、やがて力尽き座り込んでしまう。アドルフは己の人生を振り返り、利用されるだけだったと悔恨する。眼前に迫るテラフォーマー。体には力が入らない。そのまま死を受け入れるつもりだった。
アドルフの窮地を見かねて脱出機から飛び出してきた後衛の兵士たちが捕獲銃を放つ。エヴァはアドルフを引きずって後退、その盾を引き受けて幾人もの兵士が自ら犠牲となっていく。その誰もがアドルフを慕い、感謝と矜持を持って彼を救い出そうとする。
抵抗されるやいなや、腰布のテラフォーマーが指示を出すと、ゴキブリたちは人類の捕獲銃を持ち出してきた。網の特性も目的も彼らは理解しており、的確にドイツ班の兵士たちを捕獲していく。生きながら捕らえられた兵士はエヴァにアドルフを助けワクチンを完成させるよう懇願する。しかしアドルフの鼓動は弱り、すでに命の火は尽きようとしていた・・・
大きな電気ショックがアドルフの体を揺さぶる。彼は自らの心臓に電気を流し、AEDのように心臓を再起動させることを試みた。心停止からの生還は、生きる意志がその結果を左右する。アドルフが思い描いたのは、好きなものがたくさんあった過去の記憶。そして目の前でその好きなもの-仲間をゴキブリに蹂躙されていることへの悔しさだった。雄叫びを上げ特大の雷鎚を降らせ、アドルフは立ち上がる。その両眼は腰布のテラフォーマーだけを捉えていた。
第33話 THUNDER STORM 第5班の雷電
自らの心臓に電気ショックを施し、部下たちを助けるために蘇ったアドルフ。通常の使用量を大きく超えた「薬」を鼻から吸引すると、彼の体に埋め込まれた安全装置が次々とパージされていく。明らかなオーバードーズを見て取った部下ジョハンはダメだと叫ぶが、アドルフはエヴァに脱出機へ戻るよう指示すると再びテラフォーマーの群れへ向けて確かな足取りで歩み始める。
アドルフの手術ベースはデンキウナギであり、その電撃による殺傷能力は非常に高いものの肉体的にはそれほど頑強とは言えない。アドルフは体重の乗らない裏拳だけでテラフォーマーを大きく吹き飛ばし地面に転がす。踏みしめた足から地面へ電流を流し、瞬く間に多くのゴキブリを丸焼きにしていく。これがマーズランキング2位の男が見せた執念の底力だ。
崖の上から、腰布付き個体と大柄な旗持ち個体が悠然と見下ろしている。その2体への射線が通るやいなやアドルフは手裏剣を放つが、旗持ちがそれを旗でブロックし、旗を地面へ立てると自らも肉弾戦の構えを見せる。
時を同じくして、旗に突き刺さったままの手裏剣目掛け「落雷」が発生。6億ボルトという超特大の電流が2体のテラフォーマーを襲い、地面へ昏倒せしめた。アドルフは力尽き、地面に大の字。慌てて駆け寄るエヴァの涙をスッと拭うアドルフ。「濡れると危ない…って…言っただろう…」
第34話 HOLY BLOOD 悪魔の血脈
テラフォーマーの旗めがけて走った落雷は、至近距離に立っていた腰布付きの個体と旗持ちの個体を瞬時に死に至らしめる威力があった。ドイツ班が追い込まれたすり鉢状の地形の底にはまだ多くのテラフォーマーが残っているが、指導者を失ったゴキブリたちは呆然と立ち尽くしており、動く様子を見せない。
これは混乱しているというよりも、コントロールを失い信号が入力されていないような状態に見える。ゴキブリのリーダーは鳴き声などでダイレクトに部下を操っているのかもしれない。倒れた2体の元へ近づくテラフォーマーが1体。指導者の胸へ左足を乗せると、リズミカルに力を込めてその体を踏み始めた。
1回、2回、3回、4回・・・ドムッ、ドムッと音を立てて足を踏み込むたびに、指導者の胸が大きくへこむ。心臓マッサージ・・・!なぜ彼らがそれを閃いたのかはわからないが、的確な処置により息を吹き返す腰布つき個体。何事もなかったかのようにアドルフを指し、何事かを唱える。
崖の上から銃で狙いをつけるテラフォーマーの群れ。捕獲した隊員たちを引きずって連れて行こうとするゴキブリたち。アドルフは体力の限界が近く、立ち上がるのがやっとの状態であった。いくつもの銃口がアドルフへ向けられたその時、エヴァ・フロストは彼の前に両手を広げて立つ。震えながら、涙を流しながらも顔を上げ、アドルフのために死ぬ覚悟を見せた。
エヴァの顔、そしてゴキブリに拉致された部下の顔・・・。アドルフはもう動かない体に残された気力を振り絞り、彼らを護りたいと強く願う。その願いに応えるかのように電流は走り、彼とエヴァを包む電磁誘導のシールドを作り出した。銃弾は逸れていく。ゴキブリたちの銃が弾切れになるまで、アドルフはエヴァを護り通した。
迸る稲光に包まれながらアドルフの中に生まれた確固たる決意、それは部下を守って必ず生きて地球へ帰り、そして自分を偽らずに生きることだった。弾を撃ち尽くしたテラフォーマーが次に持ちだしたのは、縄でできた原始的な投石器。テラフォーマーの頭ほどもある大きな石を高速回転させ、遠心力を利用して飛ばす武器だ。地球では紀元前2000年頃にはすでに中東で軍事用に使われていたらしい。
それ見てアドルフは直感した。電磁誘導では防げない。エヴァを抱きかかえ、何事かを伝える。驚き目を見張るエヴァ。そしてゴキブリたちの手から放たれた無数の石がアドルフの体を容赦なくちぎり取る-。
第35話 DESIRE 願い
テラフォーマーの頭ほどもある石が、投石器で次々と放たれる。さしものアドルフもこの質量を電磁誘導で防ぐことはできないと悟り、その身を持ってエヴァをかばう他に手段は無かった。高速で飛来する石はアドルフの肉体をえぐり取る。アドルフは地面に伏し、動かなくなった。
腰布付きのテラフォーマーが自ら崖を降り、アドルフとエヴァの前に立つ。アドルフの遺体を自ら確認・回収に来たのだろうか。班長は倒れ、ほとんどの仲間は死ぬか網にかかり、動けるのはエヴァだけ。もはやドイツ班に戦況を覆すすべはない。
アドルフの最期の言葉、そして仲間の逃げろという声に従わず、エヴァは腰布付きに素手で抵抗の意志を示す。非力な拳ではテラフォーマーに傷すらつけることはできないが、彼女はあくまでアドルフの遺体を渡すまいと向かっていく。
テラフォーマーたちはあまりにか弱いエヴァの相手をするのも鬱陶しいといった風情であったが、その時アドルフの遺体から鳴り響いた機械音と、続けて何かを知らせる電子音を聞いて顔色が変わった。
細かく連続する耳障りなアラーム。何かを本能的に察知したテラフォーマーたちは慌ててその場に背を向け走り始めた。アドルフの体には、その技術を他国に盗まれないための安全策が準備されていたのだ。彼の生命活動が停止した時に動き出し、その体ごと消滅させてしまうために。彼自身そのことは最期まで知らされていなかったが・・・。
ゴキブリの去った谷の底、エヴァはアドルフの遺体をそっと抱きしめ、自分たちは家族だから一緒だと、そう言って優しく笑いかけるのだった。遠く、ミッシェル班の脱出機で周囲を伺っていたアレックスは、ドイツ班のいる方角に大きな閃光を見た。
第36話 GREAT DEVOTION 偉大なる行為
アレックスはドイツ班のいる方角で大きな閃光を目撃する。爆発のようだ。火星の満天の夜空一面の流星雨を見ながら彼らは仲間を想い、地球の神に祈る。アドルフを信じ、自分たちは日米1班とローマ班のSOSに応えるべく、決意を新たにする燈とミッシェルであった・・・。
密集ピラミッドのひとつ、その内部と思われる空間。半球ドーム状の開けた構造、壁には天体や流星の絵が描かれており、あたかも夜空が透けて見えているかのようだ。その空間の奥に静かに座す人工物。台座に刺さった剣のような形状をしており、表面には無機的な模様が見える。
アドルフらドイツ班を窮地へ追い込んだ腰布付きテラフォーマーのものと思われる、首だけの亡骸。その前に立つ男が一人。ヨーロッパ・アフリカ第6班班長、ジョセフだ。テラフォーマーの首は綺麗に切断されていることから、爆発から逃げ延びたところをジョセフの能力で仕留めたのかもしれない。脱出機が網にかかった後SOSを発しているはずが、なぜ一人でここにいるのか?そしてドイツ班の惨状を知ってもなお余裕の笑み…。
第37話 END OF THE HEAD 頭の死
アドルフの妻が銀行の前でU-NASAへ電話をかけていた。残高は7.5ユーロ。1ユーロ130円換算で1000円にも満たない額だ。夫の給与が振り込まれていないことへの問い合わせである。U-NASAの答えは「そのような者は在籍しておりません」。
アドルフの死亡とともに彼の家庭は「なかったこと」にされた。ドイツ支部の重役らしき女性は、それをアドルフの妻自身が選んだ結果だという。子がMOを受け継いだアドルフの実子であれば実験体として、戦力として価値があった。だが彼女が産んだ子は・・・。「あの家に我々の身内は一人もいない」アドルフが死んだ理由は強い女との信頼関係がなかったからだと、ドイツ支部の女性は語る。そしてもう一つの研究に懸ける、とも。
首だけになった元・腰布付きテラフォーマーの死骸を踏みながらジョセフは思いを巡らせていた。この個体が電撃により内蔵を傷めていて、どの道永くは持たなかったことから、爆発から逃げられなかったわけを理解できたようだ。ジョセフはミッシェルにSOSを出したのに通信返してくれないから、色々と思案している。
ジョセフの後ろには脱出機。彼が一人で乗ってきたのか?他の隊員は?網に捕まったのではなかったのか?その疑問には一切答えないまま、テラフォーマーの群れを近づくに任せるジョセフ。ペラペラとゴキブリたちに語りかけるが、無論返事が戻ってくることはない。(逃げようかな)と内心考えているものの、その表情にはまだ余裕があるように見える。ジョセフの目的と実力は一体!?
小町らはテラフォーマーのサンプルをすでに脱出機のカゴ一杯に捕獲していたが、まだ群れは大勢残っている上にバグズ能力持ちが2匹混じっていた。一体は大柄な力士タイプ。もう一体は白い体毛が広く生えている。大柄な個体は動物性タンパク質を摂っていると小町は推測する。バグズ2号が積んでいたカイコガを養殖して食糧にしているのではないかと。事実、カイコガの成虫はロシア班によって目撃されている。
白い体毛のテラフォーマーは糸を出し、その先に岩を結びつけて投石器のように振り回していた。小町曰く、「1000mの鋼鉄の糸を紡ぎだす蜘蛛糸蚕蛾の特性」。小町は火星でテラフォーマーに殺された幼なじみ、秋田奈々緒の能力を20年ぶりに目にした。
激高し怒りのままに敵へ向かって行くかと思いきや、意外なことにスズメバチに変態してなお小町は冷静だった。バグズ2号の乗員の遺体を利用したことに憤るマルコスを抑え、「近付いて来たら落ち着いて駆除するまでだ」自分に言い聞かせるかのように言う。
「不幸中の幸いっつーのかな。さっきのも・・・このふたりも・・・あんま喋ったこと無い人たちだったからよ」だから心配するなとマルコスに言って聞かせ、一人歩み出る小町。「だろ?ゴリラ」静かな怒りと悲しみ、そして懐かしさと親愛を込め、小町は奈々緒のあだ名を呼ぶ。その表情は先刻からもうずっと、うかがい知ることができない。この決着は他の人間には譲れない、彼の背中は寂しげに語っていた。
第38話 DEAR HEART あなた
小町の脳裏を20年前の出来事が去来していた。火星で死んだ親友のこと、そして置いてきてしまった幼なじみの亡骸のこと。バグズ2号に搭載されていた地球への帰還ポッドは狭く、生き残った小町と蛭間一郎の二人で搭載キャパシティはギリギリだ。すでに寿命が尽きかけているティンや、すでに死亡している秋田奈々緒を載せる余裕はない。小町と奈々緒が暮らした家の近く、桜の咲く丘には遺骨のない墓が建っている。
あの日、バグズ2号を襲った進化型テラフォーマーは奈々緒の遺体そのものか、あるいはその体が発する繊維-カイコガの能力-に興味を示し、遺体を連れ去ろうとしていた。だから、もしかしたら彼女の遺体は何か特別扱いをされているのではないかと、小町は淡い期待・・・願望を抱いていた。
だが、直面した現実はその願いをあっさりと否定する。目の前に立つテラフォーマーはクロカタゾウムシ、そしてカイコガのバグズ能力持ち。バグズ2号の隊員の遺体を使い、なんらかの外科手術を行なっているのは明白だった。静かな闘志と哀惜を背中に纏い小町は歩を進める。クロカタゾウムシの拳も、カイコガの投石や糸を使った攻撃も、皮一枚のところで彼には当たらない。研鑽を重ねた人間が到達できる、武道の成果だ。
2体を相手に一歩も引かず、その拳で虫を払いのけるが如く弾き飛ばす小町であったがクロカタゾウムシに毒針が通らないのを見るや、マルコスと鬼塚慶次が救援に入る。こっちは任せろと力を込める若干16歳のマルコスを、小町は頼もしく思う。背中を預けられる友・・・かつてティンとそうしたように、今再びオオスズメバチの毒針がテラフォーマーと相対する。