週刊ヤングジャンプで連載中の『テラフォーマーズ』感想ネタバレ第11巻まとめ
『アネックス1号』本艦の通信コントロール室を目指す慶次らだが、第4班とテラフォーマ―たちが行く手を阻む。彼らは作戦を成功させ、第4班の裏切りを地球へ伝えることができるのか!? 戦闘員も非戦闘員も、希望をつなぐため、今その命を懸ける!
目次
第97話 ELEMENTS 持ち場と要素
第98話 THE SHELL 敵意の殻
第99話 SECRET OBJECT 要衝の番
第100話 CRIMSON RED 百鬼の瞳
第101話 SILENCE OR VIOLENCE
第102話 DEVOTED LIFE WORK 技師と呪縛
第103話 FOOTSTEP OF THE NIGHT 闇の足音
第104話 THE MOST FEARLESS ANIMAL 無敗の珍獣
第105話 SQ PENETRATION 勁と業
第106話 HMP 最後の通信
第107話 「MESSAGE 悲響」
本編あらすじ
第97話 ELEMENTS 持ち場と要素
「変態れ(やれ)」-。アネックス艦内で施設を防衛している爆(バオ)と紅(ホン)。爆は紅に変態して細菌毒を放出するよう指示した。艦内に突入した慶次らは簡易的な装備しか持っておらず、紅が本気を出せばたちどころに死亡する可能性が高い…。
10秒ほどでヤンマ型テラフォーマーを撃破した慶次だったが、背後で閉まった防火シャッターが衝撃により開かなくなっていた。非戦闘員のエンジニアたちと分断され、一旦別行動を取ることになる。目指すのは通信コントロール室。そこで電波塔を正常な状態に戻し、地球との通信を回復する。
そして中国班の裏切りの事実を地球へ伝えて記録を残し、政治的なパワーで彼らを止めるのが目的だ。慶次はエンジニアたちに、防護服を探して確保するように伝える。もし長期戦になれば細菌毒で全滅してしまう。それを防ぐために防護服はぜひとも欲しい。
だが慶次本人は、変態後の体型の問題で防護服が使えない。腕が太すぎるのだ。そのため先行して通信室の障害…つまり待ち構える爆と紅を排除する算段。ヤンマ型を10秒で切って捨てるだけの瞬発力を持つ慶次ではあるが、相手が人間となれば当然知恵も回る。防護服を着ずに姿を見せれば当然「時間切れ」を狙うだろう。爆と紅からすれば、逃げまわっていれば相手が勝手に死んでくれるのだから…。
その紅(ホン)は、まだ変態していなかった。自分が殺したアレキサンダーの顔が脳裏から離れない。そしてあと一歩で死ぬところだった中国班の仲間たちの顔も。怖気づき、話し合いで解決できないかと震える紅に対し、爆は平手打ちで気合を注入する。
通信室が奪われれば中国班の裏切りが露見し、損害の全てをゴキブリに押し付けてウヤムヤにする計画がご破算となる。そうなれば中国は全世界を敵に回し、自分も家族も粛清され、中国の軍事行動を引き金に地球でも戦争が起こるかもしれない。そして今よりもっと大勢が死ぬ。アレキサンダーの死も無駄になる。だから今変態して日米班の連中を殺せ!これが爆の発言の要旨だ。紅はまだ変態しない-。
磁気探知ができるウォルフは、艦内で「ある現象」が起きている部屋を探していた。それは磁気が増えている場所。すなわち、爆(バオ)が現在進行形で分裂・増殖している部屋だ。殖えた方の爆も防護服を装備していることから、その近くに防護服の予備がある可能性が高い。そしてそれは食糧庫であると、ウォルフは見当をつけていた。そこなら空調もあるし分裂に必要なエネルギー源も豊富だからだ。
食糧庫を目指して走るエンジニアたち。不意に、艦内放送でゴキブリの声が響いた。慶次に撃墜されたヤンマ型が胸に持っていた装置は、艦内放送のマイクだったらしい。死の間際、何事かを仲間へ伝えたヤンマ型。ちょうどその放送が鳴り響いている時、食糧庫のドアを開ける防護服姿の人影が2人…。手には変態時の紅(ホン)の絵が描かれた布を持っている。防護服のマスクから顔をのぞかせたのは、テラフォーマーであった。
第98話 THE SHELL 敵意の殻
防護服を着たテラフォーマーの参戦により混迷の度を増すアネックス艦内。
・慶次
オニヤンマ型テラフォーマーを撃破。単独で通信コントロール室を目指す。
・マルコス
アネックスの外で爆2人と交戦中
・ウォルフら(非戦闘員エンジニア)
予備の防護服を入手するため食糧庫へ向かう。
・紅&爆
通信コントロール室前で防戦の構え。紅はまだ変態していない。
日米班は通信室を奪取して地球への通信を回復し中国の裏切りを伝えたい。逆に中国班はそれを阻止したい。そこへゴキブリたちが参戦し状況は予測できないものへと変化していく…
防護服を着込んだテラフォーマーが2体。手には艦内の見取り図が描かれた布を持っている。オニヤンマが今際の際に館内放送で残したメッセージを受け、彼らは筆で見取り図に☓印をつけていく。
メッセージの内容はすべて「じょうじ」なので詳細はわからないが、どうやらオニヤンマが調べ、何もなかった部屋をチェックしているようだ。そして◯印がついているのは紅(ホン)の姿。彼らの目的は紅の殺害または確保であることが推測される。
食糧庫へたどり着いたウォルフたちエンジニア班。予想ではここに爆が増殖するための装置と、予備の防護服があるはずだ。そこでウォルフが見たのは、室内で破壊された培養装置と爆たちの死体、そして予備の防護服を引きちぎり破壊するテラフォーマー2体の姿であった。
即座に状況を把握し逃走を指示するウォルフ。エンジニアたちにまともにゴキブリと対峙する戦闘能力はない。追いつかれる、殺される…!そう確信した瞬間。ゴキブリは予想に反し進路を変え、ある地点を目指して迷いなく階下へ移動していった。
そこは通信コントロール室。紅と爆がそこにいた。爆は日米班の誰かが来たのだと思って声をかけるが、防護服のマスクから覗く目はゴキブリのそれだった。通信室のドアを開け、紅を逃がそうとする爆だが、ゴキブリは抱えたボンベのようなものをドアにつっかえ棒として挟み、閉まらないようにしてしまう。
紅を守りながら同時に2体のゴキブリを相手にしなければならない爆。オニヤンマに切り飛ばされた右腕を再生し通信コントロール室へ急ぐ慶次。非力ながらも各々が特殊能力を持つエンジニアたち。そして事態の中心にいる紅。未だ毒素が消えないアネックス艦内で、それぞれの思惑が交錯する-。
第99話 SECRET OBJECT 要衝の番
爆(バオ)の変態能力(ホヤ)は戦闘向けのものではない。ただし、火星へ向かったU-NASAの隊員たちは皆共通のベースとしてツノゼミの甲皮による強化が施されており、かつ中国班は紅式と呼ばれる常時不完全変態の技術を持ちあわせているため、薬に頼らなくとも(人間の姿のままで)ゴキブリと対峙することはできる。
事実、2匹の防護服テラフォーマーに挟まれた態勢でも爆は左右からの攻撃をなんなく躱して相手の武器(棒)を奪い、鮮やかに銃撃を決めている。軍人としての訓練が裏目に出たのか、ゴキブリの顔面に2発の銃弾を浴びせ相手が昏倒した段階で爆はそちらに背を向けてしまう。
人間ならば間違いなく即死の重傷だが、テラフォーマーは首がなくともしばらくは動く。背中からの衝撃に爆が気づいた時には、先ほど打ち倒したゴキブリの舌がすでに体内へ神経毒を送り込んでいた。
奴の能力は「アンボイナ」。日本にも生息する大型の貝で、小魚を針で刺して毒を送り込み、動きを止めて丸呑みにするという相当エグい性質を持っている。毒は随意筋を麻痺させる神経毒で、人間が刺された場合は呼吸困難から死に至るケースが多いという。
アンボイナの毒は一撃でショック死するようなものではないため、爆は痺れたもののまだ生きている。間髪入れず追い打ちをかけるため、再び舌を伸ばしたテラフォーマーだが、そこへ割って入ったのは爆の護衛対象、紅(ホン)その人であった。
伸びきった舌をナイフでまっぷたつにぶった斬り、爆の背中を守ろうとする彼女を見てゴキブリは一度はずした防毒マスクを付け直す。彼女の毒性と、マスクの効能を正しく理解している証拠だ。
進退窮まったこの状態で、爆に採れる手段は「自分がゴキブリのマスクを破壊している隙に紅を変態させ、毒素で皆殺しにする」というもの。ただし爆はスーツに穴を開けられたので自分も死ぬ可能性がある。紅は爆の命を尊重してナイフで戦おうとするが、これではふたりとも死ぬ。紅の優しい性格は決定的に大量破壊兵器には向いていなかった。ゴキブリが動いた!ここまでか-。
しかし、そこには見覚えある大きな拳と太い腕が!床を叩き割りゴキブリを階下へ転落させたその人物は鬼塚慶次!だがもう一匹のゴキブリがその間に紅を襲う!拳が紅の頭部を捉えようとしたその時、ゴキブリの右手は見えない「何か」に絡め取られたように動きを止められてしまう。何が起こったか理解できないゴキブリ。近くには脱ぎ捨てられたからっぽの防護服が一着。紅は即座に理解した。西(シイ)が戻ってきたのだと。その目に涙があふれる。
姿を現し、ゴキブリの胸に発勁を放ち中身を粉砕する西(シイ)。紅がその強大な能力を恐れて発現できないことを予見し、援護のために引き返してきたようだ。予想が見事に的中した格好である。
目前のテラフォーマーは片付いたものの、一転して睨み合う慶次と西。西には透明化するイカの能力と格闘術があるが、慶次の超視力はおそらく透明化能力を問題とせず、ボクサーとしての瞬発力もある。不意打ちでなくガチンコで殴りあうなら慶次に分があるように思えるが、横にはダメージを負いつつも銃を握った爆と、ナイフを持った紅が控えている。
第100話 CRIMSON RED 百鬼の瞳
アンボイナ型テラフォーマーに刺されて重症の爆(バオ。)次に狙われた紅(ホン)の救出に現れたのは、劉翊武の元へ加勢に向かったはずの西(シイ)だった。彼女の能力はハナイカの持つ身体のカムフラージュ。周囲の環境に合わせて体表の色彩を変化させて見えにくくするというもの。西、裸のままアンボイナ型を蹴り殺す。
擬態というよりはほぼ「透明化」のような表現で描かれている。攻撃的な能力を持っているわけではないが、彼女自身が習得している中国武術により素手でテラフォーマーの甲皮を割り神経中枢へダメージを与えることができる。
カムフラージュの特性を活かすためには服を脱がなければならないが、慶次の目には擬態が全く通用しておらず、この能力は意味を成さない。「服を着ろーっ!」『能力』を活かすために裸だった西に叫ぶ。さらに毒素がまだ船内に残留しているからという理由で、いそいそと防護服を着る西であった。慶次は着替えをのんびりと待つ。
今回はカウントダウン表記がなかったものの、船内に残留している毒素のせいで慶次らが滞在できる時間は限られている。慶次だけでなくエンジニアたちも同様の制限を課せられており、艦内にいる戦闘員は慶次だけ。つまり彼らエンジニアたちの命を慶次が預かっている格好だ。さらに電波塔の奪還に失敗すれば中国の裏切りを地球へ伝えられず、火星へ向かっている中国の宇宙戦艦が到着し、中国班以外が皆殺しになる恐れがある。慶次の腕にかかっているのはまさに日米欧露、全員の命運。
その状況下にありながら、最優先事項である電波塔の制圧を後回しにし、職業軍人である西を前にして西が隙を見せた時にも女は殴らないと宣言。攻撃せず、西の攻撃を受け続ける慶次。武術家であり軍人でもある西を侮辱した言葉ではないだろうか。着替えが終わった西、床が割れるほどの踏み込みで慶次へ打突。実は打点をずらしてダメージを避けていた慶次、後ろから西をつかむ。「女は殴らない」宣言、再び構える西。
第101話 SILENCE OR VIOLENCE
西は中国の特殊工作員として幼少期から選抜され訓練を受けてきた軍事エリート。世界のどこへでも潜入し、どんな相手でも素手で殺せる訓練を受けている根っからの職業軍人である。
一方の慶次はあくまでスポーツマン。ボクシングでベルトを獲ったものの、その動機は「人を殴りたい」とか「自分の強さを誇示したい」といった好戦的なものではない。プロボクサーなら殴れば簡単に人を殺せるとは言われるが、それはあくまで結果であり、本来が殺すために特化した技術ではない。そこに両者の差がある。
重厚な防毒スーツを全身に纏ってなお、西の体捌きは軽装の慶次を上回る。当たれば即死級の手刀を繰り出し、怯んだ所へタックルをしかけ慶次をダウンさせてしまう。いかに倹約節制しているボクサーとはいえ体重は慶次のほうが上だと思われるが、西は荷重の使い方が上手いのだろう。
慶次を見下ろし西は偽善者だと罵る。今はスポーツではなく殺し合いをしていて、甘いことを言っていれば仲間が死ぬ。女を殴るのは本意でなくとも、仲間のためにポリシーを曲げてみろ、と。ゆっくりと近づいても慶次は反撃しない。西は緩慢な動作から気を発し、掌底で慶次の股間を潰す。
グチャッという不愉快な音響に絶句する爆、正視できない紅。股間を潰し、もう動けないと確信した西はクルリと踵を返してしまう。歩を進めようとする西の肩を、後からガシッとつかむ腕。驚く西。西は慶次の底知れぬ気力に恐怖する。紅、爆も同様、目の前の存在が理解できない。
打たれても立ち上がるが反撃はしない。反撃すれば相手にダメージを与えられるだけの力を持っているのにだ。その慶次の姿に動揺し、中国班のメンバーたちは忘れてしまった。船内には慶次の仲間がおり、どこかで別行動していることを。
慶次の目的は敵の足止め。エンジニアたちが床の亀裂からコントロールルームへ潜入し、電波塔の制御を奪うまでの時間稼ぎであった。エリカが持つヤモリの能力で壁を這い上がり、4名のエンジニアはコントロール室へと到着。残留毒素に耐えられる時間はあと6分7秒。