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【テラフォーマーズ】感想ネタバレ第16巻まとめ

週刊ヤングジャンプで連載中の『テラフォーマーズ』感想ネタバレ第16巻まとめ

テラフォーマーズ 16 (ヤングジャンプコミックス)

テラフォーマーズ 16 (ヤングジャンプコミックス)

 

フロンティア・スピリット号から火星に降り立った二人の戦士は、生き残ったクルーたちの救助にあたる。一方、激戦地に留まった小吉たちは想像もしなかった衝撃の真実と直面する…! 運命を背負って戦う者たち、その祈りと哀しみが火星の大地を染め上げる、慟哭の第16巻!! 

目次

第152話 THE GUARDIAN RANGERS 守護戦隊
第153話 THE OUTSIDER 闇の傭兵たち
第154話 SILENT JEALOUSY 知りたいと願う心
第155話 AN ORDINALY ABNORMALITY 愛が全てなら
第156話 ELECTRO HEART エレクトロハート
第157話 RAZOR-BLADE 鋼の刃
第158話 THE RIGHT SINNER 気高き罪人
第159話 LOVE AND CURSE 愛と呪い
第160話 APHRODITE 女神
第161話 BY NAME その名は
第162話 START OF THE YOUTH

本編あらすじ

第152話 THE GUARDIAN RANGERS 守護戦隊
ロシア辺境の政治的空白地帯で、民間企業からの出資により極秘に建造・打ち上げがなされた謎の宇宙船。その中から姿を現したのは、眼鏡をかけた日本人男性と大柄な黒人男性の二人だった。眼鏡の男は燈と旧知の間柄らしく、久しぶりと声をかけた。二人の乗組員は周囲の状況を見て取ると、自己紹介もせず燈たちに乗船を促す。黒人の男はダンと呼ばれている。

そのダンが機器を操作するやいなや救助船上部から対空シールドつて中国班が使ったものに似ている)が展開され、接近していたテラフォーマーたちやミサイル弾頭のようなものを撃墜した。眼鏡の男いわく、この船に搭載している近代兵器はこの対空シールドだけ。あとは自分と、ダンことダニエル・アーサーJrだけが戦力である。

ダンの武装は銃。MO能力者は銃を使うことはほぼない。銃を奪われるリスクや肉体を強化しているのだからそのパワーで殴ったり絞めたりすればいいというストレートな発想がそこにはある。だがダンはもともとガンナーのスペシャリストであり、ゴキブリの危機察知速度を超えた乱れ打ちで正確に胸部神経節を撃ちぬくことができるのだ!

眼鏡の男は燈に「師範代」と呼ばれているため、膝丸流道場での実力者と思われる。おそらく格闘術では燈よりも格上なのだろう。初めて触ったアラクネバスター(※ただの硬い棒)を舞うように振るい、追手のゴキブリを叩き伏せる。変態の兆候は見られずMO手術は受けていないようにも思えるが、火星の薄い大気でもマスクなしで活動できている点から何らかの強化はされているはずだ。極秘に建造された宇宙船の乗員として白羽の矢が立っていたのであれば、U-NASAの目をかいくぐってMO手術も隠れて受けている可能性がある。

彼の名は草間朝太郎(くさまあさたろう)。膝丸神眼流免許皆伝にして、道場主の息子。草間とダンは押し寄せるゴキブリをあらかた始末し、離陸準備に入る。だがまだ合流出来ていないアネックスクルーがいた。小町ら幹部組だ。彼らのそばに落ちたポッドは燈・ミッシェル・エヴァが使ってしまい、小町・劉・ジョセフ・アシモフはそこに踏みとどまっていた。

彼らを待つよう要請する燈だが、草間は否定的な態度。カイが乗る九頭龍は小破したとは言えまだ健在。武装のないフロンティア・スピリットでは見つかれば対抗できない。生きていればまた回収のチャンスもあると、燈の顔ではなくどこか遠くを見ながらきっぱりと告げるのだった。

当の小町ら幹部組はというと、上空の九頭龍に睨まれたままゴキブリの死体の山を築いていた。その時、ジョセフに異変が起こる。カイの能力・アリタケの胞子がジョセフのうなじに寄生していた!?


第153話 THE OUTSIDER 闇の傭兵たち
マルコスら生き残った班員たちは、目標地点である海付近で、脱出ポッドに乗ってきた燈、ミッシェルらと合流。そこに、謎の救助艦「フロンティア・スピリット号」が到着する。実は民間企業の宇宙艦であったこの艦に乗っていたのは、燈のいた道場の師範代・草間朝太郎と、銃の使い手ダン。火星脱出のカウントダウンが加速する!

フロンティア・スピリットが張ったシールドにより、地上や空中からの侵入は一旦食い止められた。残ったテラフォーマーを草間とダン、ミッシェルが中心となり次々と片付け、八重子とアレックスも合流。八重子たちをシールドの内側へ入れるために対空シールドを解いた瞬間にテッポウウオ型テラフォーマーの超遠距離狙撃に合うも、草間がそれを弾きダンがライフルで反撃!周辺にはもう動くテラフォーマーの姿は見えない。

超強力な助っ人二人とミッシェル・燈・エヴァたちの働きにより安全が確保され、救出ポッドから怪我人が続々と艦内へ運び込まれる。医療設備はひと通り揃っているようだ。フロンティア・スピリットの背景についてダンから説明がある。エンジンの提供はU-NASAドイツ支局が秘密裏に行っていたこと。これから地球へ帰還する途中で全地球に対し火星の状況を説明すること、そしてドイツ同盟国であるブラジル沖に着水する予定であること。

また草間とダンについて。彼らは民間の警備会社「一警護(はじめけいご)」の従業員とのことだった。創業者は蛭間一郎であり、個人から国家までを契約者とするセキュリティ。「ただの民間人」でありながら彼らもまたMO手術を受けていた。完全に生身で戦闘しているように見えたが、まだ空気の薄い火星でスーツなしで活動するにはMO手術が前提なのだろう。MO手術は国家機密であり一般には出回っていない技術であるから、それを制限する法律は存在しない。ダンが言う。肉体を改造してはいけないというルールはないのだそうだ。

凱将軍のアリタケ胞子に寄生されたジョセフは、まだ理性はあるようで小町からの呼びかけに応え必死に正気を保とうとしているも、その瞳は変色している。ミッシェルへの思慕は彼をつなぎとめる錨となるか?

 

第154話 SILENT JEALOUSY 知りたいと願う心
燈・ミッシェル・エヴァを逃がすために殿軍を務めた幹部たちであったが、九頭龍の凱将軍が撒き散らしたアリタケの胞子がジョセフに取りつく。意識が混濁した様子のジョセフは小町と向き合う。そしてジョセフの回想が始まる。

ジョセフが中学生の頃に遡る。広大な敷地を持つ屋敷で父と向かい合い食事を摂るジョセフ。彼は今日、どうしても父に問いただしたいことがあった。兄妹の中で自分だけ母親が違うのだということをどこからか聞きつけ、その理由を知りたいと願ったのだ。

父はあまりにもあっけらかんとその事実を認め、何の感情もなく淡々と説明を始めた。曰く、父の容姿は少々威圧的な印象が強かったため、ほんの僅かに柔和な方向へ「品種改良」を行う必要があると父親自身が判断した。それで容姿の基準に適う娼婦を東欧で見つけ、金銭で契約して子を産ませた。

生まれた男児は予定通り完璧な身体能力と容姿を備えており、喜んだ父はジョセフを兄よりも先んじてニュートン家の跡継ぎにした。ニュートン家は600年以上に渡って自然交配によるヒトの品種改良を行っており、容姿・身体能力・病気への抵抗力といったあらゆる能力が普通の人間とは桁違いのレベルにまで達している。その証拠にジョセフは17歳にして陸上十種競技で世界1位となり、EUでトップの大学に普通受験で入学し、それと同時並行して空軍幹部学校を異例の成績で卒業。生物学と航空宇宙工学を修めながら空軍将校でもある。また数秒だけ寝たり、体の一部だけ寝たりすることもできるらしい。

父から自分の出生について聞かされたジョセフはさすがにショックを受け、河原に座り込んで遠くを見ていた。そこへ声をかけたのは同級生のジャック。彼は普通の市民らしいが、強面で不良的な存在だった。しかしジャックはジョセフを変に特別扱いせず友人として接し、ジョセフもそんな彼には心を開いていたようだ。

生みの母も育ての母も生きていて経済的に困っていない、そんなの十分すぎるだろうとジャックは言う。確かにそうだ。深刻ぶって悲劇に酔うのもいいが、別に大したことじゃない。世界はもっと広いのだ。ジャックと話しているとき、ジョセフは自分を拘束するものから解放されたような気持ちでいたのかもしれない。そんな男たちの背後に忍び寄る人影がひとつ。影の名はミッシェル。彼女もまた同級生だ。

勝ち気な女子とそれをハイハイと受け流す男子2人の姿。仲が良さそうな3人組。しかし、事件は起こる。降りしきる雨の日、ジャックが暴行事件の重要参考人として確保されたとの知らせが入ったのだった…。


第155話 AN ORDINALY ABNORMALITY 愛が全てなら
ジョセフにとって数少ない、気のおけない友人である同級生のジャックとミッシェル。その二人は橋のたもとで逢瀬を楽しんでいるかに見えたが・・・。唇を重ねようとしたとき、不意にミッシェルはジャックを押しのけ、体調が優れないと言って踵を返した。彼女の様子を不審がるジャックに、クラスメイトの男子がおずおずと声をかけた。

今日の補習の際、教師がミッシェルを強姦しているのを目撃したと・・・。そしてジャックは凶行に及び教師を素手で殺害。拘置所にぶちこまれている所へジョセフとミッシェルが駆けつける。金を握らせて黙らせようにも当の教師は死んでおり、ニュートン家の令息とは言え、まだジョセフにそこまでの権力はなく事件化は避けられない。ジャックはミッシェルの名誉を守るため、犯行の理由について最後まで語らなかった。そして学校へは戻ることなく少年院へと送致された。ジョセフとミッシェルを残して。

河原沿いの道を、うつろな目で押し黙って歩くミッシェル。右隣りを歩くジョセフはおもむろに口を開いた。なぜ彼を信じてやらなかったのか、と。その意味をはかりかねて目を上げるミッシェルに、ジョセフは淡々と続ける。全ては己が仕組んだ買収劇だったのだと。教師を買収し、補習にかこつけてミッシェルにキスをさせる。クラスメイトの男子を買収し、ジャックに彼女が強姦されたと告げ口させる。

この結果、ジャックとミッシェルの認識にはズレが生じた。彼女はジャックのことを、恋人がキスされた程度のことでキレて教師を撲殺する野蛮な男だと、心のどこかで軽蔑するようになった。一方のジャックはミッシェルが強姦されたのだと思っているから、決してそのことを口外しようとはしなかった。そして物理的・精神的にジャックを失ったミッシェルは失意から逃れるためにジョセフに体を許し、すでに妊娠までしている可能性が高いという。

ジョセフはなぜこんなことをしたのか?ミッシェルが好きでジャックから奪いたかった?違う。それならわざわざ内実を彼女に暴露する必要などない。彼は確かめたかったのだ。愛情の尊さ、揺るぎなさを。だがミッシェルはあっさりと心折れ、ジャックを見捨ててジョセフになびいた。ジョセフは己の愛なき出生ゆえに愛に憧れ、彼ら二人の愛を確かめてみようと考えてしまった。そしてそれはまやかしだと分かった。ジャックとミッシェルはその後再会し結婚したらしい。ミッシェルはジョセフの子とジャックの子、二人とも育てている。ジョセフは思う。それは愛情ではない。目をつぶっているだけだと。

場面は火星、現在。アリタケに寄生され理性が侵されたせいで、ジョセフの中に眠る本性が揺り起こされていた。それは今までの余裕げな、そしてどこか薄っぺらい笑顔ではなく、涙にまみれた憤怒の形相。愛が本当に尊いものなら、いち人間ごときに簒奪されるわけがない。それを確かめずにはいられない。そう泣き叫び、剣を振り回して劉や小町の腕を切り飛ばすジョセフ。小町は彼を止められるのか。


第156話 ELECTRO HEART エレクトロハート
ジョセフはニュートン家によりデザインされた子であり、愛とは無関係にこの世に生まれた。どうやら彼はその事実を咀嚼しきれていなかったようで、家族や恋人同士の関係を見ると愛情の有無を試したくなるという、屈折した欲求を内に抱えたまま成人してしまったらしい。凱将軍の能力・アリタケによって内なる破壊衝動を増幅させられたジョセフは、小町に牙を向いた・・・!

ジョセフvs小町・劉・アシモフ。劉が見た資料の記憶によれば、凱の能力は時間で効果が切れるようなものではない。胞子が脳に根を下ろしているならば、頭ごと刈り取るしか手段はないかもしれない。小町・劉・アシモフの重量級選手が揃い踏みし、周囲から3人がかりでジョセフの首を狙う。だが、彼らは意外なまでに人間味を残しており、目の前の男に対し非常に徹しきれずにいた。

結果としてジョセフは彼らの隙をつき、小町の脇腹に剣を突き立てる。小町はそれを逆手に取ってジョセフの動きを封じ、そこへ劉がテトロドトキシンを微量ながら注入。毒をもって毒を制すの言葉通り、神経毒で脳を麻痺させることによりジョセフを正気に戻そうと言う賭けだ。

上空からその様子をうかがっていた凱だが、ジョセフが使い物にならないと見るや瀕死で生き残った部下に砲撃を命じる。命令は忠実に実行され、九頭龍の腕から二筋のレーザー砲が直下へ向けて放たれた。

かつてはアドルフ(とエヴァ)が電磁力によってシールドを張り、光学兵器でも質量兵器でも軽々と軌道を捻じ曲げて味方を守ってくれたが、今のメンバーには防御能力を持つものはいない。しかし、そこには空いっぱいに広がる電磁シールドでレーザー砲を散らして全員を救うジョセフの姿が!

首の後に生えていたアリタケを自らの手で引っこ抜き、自分は最初から正気で小町らに挑んでいるのだと宣言するジョセフ。嘘か真か、その目には再び光が宿ったように見える。アリタケはほんのきっかけに過ぎないというのか。


第157話 RAZOR-BLADE 鋼の刃
ジョセフが小町らに剣を向けたのは、凱の胞子に操られたからではなかった。それは単に引き金にすぎず、ジョセフは元々幹部たちを殺害しミッシェルを我が物とする算段を整え火星へ乗り込んでいたのだ。

九頭龍のレーザー砲を電磁フィールドによって弾かれ窮地に陥った凱は、胞子を直接幹部たちに埋め込むためゴキブリ軍団を突撃させる。戦力を二分して対する必要に迫られ、ジョセフの相手は小町が。テラフォーマーたちの相手は劉とアシモフが務めることで意見の一致を見た。小町はかつてジョセフとバーのカウンターで交わした会話を思い出す。そもそも彼はなぜアネックス計画に参加したのか?

クルーの多くは借金返済のために他に拠り所がなかった者達だ。危険な人体実験まがいの手術に耐え、生きて帰れる保証のない作戦に参加したのは他に生きるための手段を講じられなかったからだ。あるいは軍属として命令により派遣された者、過去への拘泥から火星へ赴いた者もいる。だがジョセフは?

富と権力を持ち、品種改良によりMO手術とは全く異なるアプローチで生み出された超人。ヒトという種のオーガニックな到達点とされる彼がわざわざ危険を冒して火星になど行く必要はない。素朴な疑問を口にする小町に、ジョセフはグラスを傾けながら答えた。ミッシェルが持つ、真実の愛という聖杯を追ってきたのだと。

ジョセフの言う「真実の愛」が何を指すのかは判然としない。ミッシェルは父ドナテロ(バグズ2号艦長)からMOを遺伝的に受け継ぐという奇跡を伴って誕生した。そしてドナテロは妻子を残して火星で帰らぬ人となり、ミッシェルは隠蔽された真実を知るためU-NASAへ入り幹部へ登りつめた。そして火星で父の仇討ち…厳密には違うが、それに近い形でけじめをつけ、これまでの半生の目的を達した。ミッシェルを欲しがるのがニュートン家としての使命に根ざすものなのか、ジョセフの個人的欲求なのかすらも正確には読み取れない。だが小町は納得したようで、静かにジョセフを見据えると切断された左腕の断面にアンプルを突き入れた。

アンプルは光を放ち、瞬時に失われた左腕を再生する。これが小町専用武器・貧栄養時圧縮再生芽「カフカス・スヴィエート」なるものの効果だ。次のコマでは額を毒針で撃ちぬかれたジョセフが地面に大の字となっており、小町の武がジョセフを殺傷せしめうることが分かる。

ジョセフは再生能力も持っているためこの程度では死なないが、小町の毒針はアナフィラキシーショック(アレルギー反応によるショック症状)をもたらすことができるため、もう一発撃ちこめば小町に勝機が見えてくる。ちなみに再生したのは左腕だが毒液が滴っているのは右腕であり、新しく生えた左腕が特別な能力を備えているわけではないようだ。「愛でお前を殺してやる!」