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【うさぎドロップ】感想ネタバレ第9巻(最終回・最終話・結末)まとめ

フィール・ヤングで連載していた宇仁田ゆみによる漫画『うさぎドロップ』の最終巻9巻の最終回(最終話)を含めた感想ネタバレまとめです。結末(ラスト)はいかに!?

新装版 うさぎドロップ (9) (FEEL COMICS swing)

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突如訪れた6歳児と独身30男性が繰り広げる日常。りんとダイキチが一緒に暮らしてから10年が経った。高校生になったりんは自分の出生の秘密を知る。その時、りんはある決心をする―。りんとダイキチが奏でるハートフル漫画、堂々完結!!

本編あらすじ

いままでダイキチに育てられていた「りん」がダイキチを好きになってしまった。りんは今のままで十分、これ以上は特に何も望んでないと語る。釈然としないコウキはりんが風呂に入っている間に「りんはダイキチのこと好きなんだよ」とバラシてしまう。

しかし、りんは風呂に入っていなかったためその現場に居合わせてしまい、ダイキチに自分の気持ちが知られてしまったことで家を飛び出す。必死に追いかけて、りんに追いつきとりあえず家に引き戻すダイキチ。

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その後は家の中でも意識してしまいぎくしゃくするりん。普通にしてくれと言われても無理!と返事をする。ダイキチとどう接したらいいかわからなくなっているりん。毎日一緒に朝食を食べていたのに、メシだけ作って寝ている間に先に学校に行ってしまう。

りんは現状に満足しており、今まで通り一緒に暮らせたら、あとは何にもいらないと言うが、コウキは我慢の上になりたつ平穏とか、全然嬉しくないと答えます。

りんは「色んな気持ちがあって…こういう考えに辿り着いたの。大人になっても結婚とかしないで娘みたいな顔でおばあちゃんになるまでうちに居座るとかダメなのかな」と考えるが、それが果たして幸せなのか…誰にも分からない。

家でもダイキチから「それはオレにとって一番残酷なことだ」と言われ、「一生ここに居座ってやる!」と言い放つ。

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友達にも相談できないため本当の母親に相談しに行くりん。「ダイキチが困るのは一番いやなのに…」と考えながらも自分の気持ちに嘘はつけないりん。その際に、母親からダイキチとは血のつながりがなかったことを知らされる。

迎えに来たダイキチと帰りながら、ダイキチも以前から血のつながりがないことを知っていたが、りんだけでなく育てていく上でも血のつながりがあるほうがお互いのために良いと考えており、その考えを聞いたりんは「決心がついた」。

血のつながりがないため「ダイキチのこと好きでもいいんだよね」と言いますが、ダイキチの返答は「二年間待ってくれ」と伝えます。「今はどう考えても無理だ…。俺はりんのことをそんなふうに考えたことがないから、しばらく考えさせてほしい。卒業するまでは待ってほしい」と伝える。

コウキからは「かーちゃんのこと幸せにできなかったんだからな!りん泣かせたらオレまじでぶちのめすからな!!」と心の傷を掘り下げられながらも宣言される。

***最終話***

そして2年後…。りんはついに卒業式を迎える。ダイキチが帰宅すると「お待たせー」と抱きつく。二年間ダイキチの返事を待っていたりんだが、ダイキチはりんのことを拒む事なんて絶対無理だと最初からわかっていた。

とはいえ簡単に認める事もできず、自分自身のことながら保護者目線で「相手が40歳過ぎのおっさんなんだから、そいつを簡単に許すわけにはいきません!」と一人二役で自分の気持ちを語る。でも…りんのことを立場的に複雑ながら「高嶺の花」と言うのです。

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じゃあ両想いだねーと軽く言うりんの一方で、事は簡単ではないダイキチ。ダイキチはしばらく黙ったあとポツリと「じゃ…結婚しよっか…」と口にします。驚きながらも嬉しそうに頷くりんに対して「いずれ」と補足するダイキチ。最後の最後でダイキチが本音を口にした。

いますぐに結婚したいりんは「結婚したほうが楽だと思うよー。世間的に」とダイキチの心を抉る一言を言ってしまう。自身の年齢や状況を省みて少し青ざめるダイキチ。その後の食事中でも「オレ母ちゃんに何て言えばいいんだ…」と真剣に悩む。

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数年ぶりに二人の寝室をはさむドアを開ける。本当に他にいなかったのかと聞かれたりんはうんと頷く。ダイキチの子供を産みたいと言い「ダイキチはね私が将来こども産んだらちゃんと一緒に育ててくれるってこともわかってるから…。」そして「そしらたね絶対その子のことを幸せにするの。私みたいにね。」と言われ涙ぐむダイキチ。

***感想・評価・考察***

絵柄・展開力・登場人物の魅力ともに良い。心理描写が多いので文字にすると伝わらない部分が多いですが、間違いなく名作。アニメ化と実写映画化もされましたが、やはり漫画(原作)が一番の作品だと思います。女性向け雑誌の作品ながら男性でも楽しく読むことが出来ました。前半(幼少期)だけでも十分に名作ですが、後半があることで唯一と言っていいほど面白い漫画に仕上がったと思います。

おっさんが主人公という珍しい設定になっており、第一部では目線もダイキチ目線。りんの可愛さやしっかりした様子に愛着を抱くこと間違いなし。ダイキチが最後までダイキチらしかった。うさぎドロップらしい素敵な最終回で、読み終えて幸せな気持ちになれる漫画です。

当初は6歳児と独身30歳男性がくりなす育児や家族をテーマにした日常生活が中心だったため終盤の展開に賛否両論が分かれており、男女または年齢によって感想が違ってくると思いますが、私は本作の結末は好きです。

人によっては育ててきた子供との恋愛に気持ち悪いという意見がありますが、一番大好きな人だから結婚するのだと思います。それは恋愛感情よりも純粋に相手を大切にしている気持ちのほうが強く伝わってきました。

しかも、ダイキチは最初から父親として接するのではなく、あくまで保護者という立場で接しており、父親と娘という関係性は読み手の勘違いです。保護者と娘が正しい捉え方です(娘として育ててきたというセリフがあるので誤解しやすい)。

りんもダイキチは育ててくれた恩人であっても親とは認識していないわけです。だから呼び名もダイキチ。子育てなんだけど同居人みたいな立場でもあり…。年齢差こそあれど最初から(りんが年齢の割にしっかりしている部分もありますが)個人として信頼しあって尊重し合っていることがわかります。

第1巻から読んでいる人はコウキとの恋愛(ダイキチはコウキママ)が理想的な結末と思う人もいますが、他の誰でもないダイキチだからこそ納得感があります。自分自身がダイキチと同じ保護者の気持ちになったら「ダイキチなら許せる」と思う人が多いのかなと。

考えてみると複雑な関係性の二人ですが、簡単に読者が受け入れられる描かれ方をしているのが、この漫画の特徴でもあります。番外編のラストに書かれている『それから』が本当の意味での最終回な位置づけだと思っているので合わせて読むことをおススメします。