週刊少年サンデーで連載していた青山剛昌による『YAIBA』の最終巻24巻の最終回(最終話)を含めた感想ネタバレまとめ。結末(ラスト)はいかに!?
父・剣十郎にあうため出場した織田信長御前試合。刃は、天下一の侍を決めるその危険な試合(ゲーム)で、思いもよらぬ相手と対戦!?はたして刃は、困難を乗り越え、真の侍になることができるか…。夢と冒険の剣勇伝説、堂々完結!!
前巻までのあらすじ
鬼丸の猛攻撃を受け、刃の覇王剣が真の力を発揮。それは使う者の闘気を刃に変える光の聖剣だった。そして死闘の末、刃の一撃が鬼丸を倒し、みごと勝利を得る。悪しき力の抜けた鬼丸は角も取れ、元の姿に戻り、ここに長き戦いも終わりを迎える。
再び平和になった日本。剣道大会に出場した刃は全国制覇を達成。だがそこに、刃の妹と名乗る少女・鉄諸刃が出現。刃の父・剣十郎はニセモノであり、そのうえ真の父を殺した張本人だと告げる。父と会い、その謎を解くために織田信長御前試合に出場した刃。いま最も危険な戦いの中へ…。
本編あらすじ
一回戦、二回戦と勝ち上がり三回戦へと駒を進める刃。
三回戦の相手は白銀グループの科学の粋を集めた最高傑作の戦士ゴズマ。超強化人間のゴズマはスピードとパワーは人間離れしているが、攻撃に無駄が多く戦い慣れしていないため、百戦錬磨の刃が優勢に進める。しかし、痛覚を排除しているためゴズマはダメージを受けない。
究極の殺人ソルジャーとして本領発揮すると刃のスピードを凌駕し始める。そして刃の跳躍力を上回り必殺技『ナイアガラクラッシャー』で刃を追いつめる。戦いの場数に差がある刃はナイアガラクラッシャーの特性を見抜き一度は破るが、マイクロユニットのエネルギー源となる電気を吸収することで圧倒され始める。
しかし、ゴズマは電流を浴び過ぎてオーバーヒートしてしまい地雷があるリング外に落ちそうになったところを刃が助ける。助けたことで自身も電流のダメージをもらってしまい痺れて動けなくなった刃だが、ゴズマは「これまでお前のように敵を助けるような甘っちょろい戦士は一人もいなかった」とトドメを刺すことをしなかった。
刃が回復したところで必殺技ナイアガラクラッシャーを出すが、ユニットが壊れてしまっていたためパワーとスピードが半減してしまい刃に敗れる。「全てはユニットに頼り過ぎたオレの負けということか…」と完敗を認める。
準々決勝の相手は柳生十兵衛光厳。柳生の剣は代々、将軍家に仕えた天下の剣。この大会を制して、その実力を再び天下に知らしめたく参戦していた。木刀で挑む刃に対し、峰を返して正々堂々と闘う柳生十兵衛。柳生新陰流『月影』『林雲』『逆風の太刀』など立て続けに技を出すが、それを全て受け止める刃。十兵衛はついに決勝まで温存するつもりだった秘伝の奥義『無限の位』を出す。
無限の位は、剣の達人でも攻撃を仕掛けようとする時には、必ず一瞬のスキができる。その一瞬をついて攻撃に転じ、刃に刃をぶつけて相手の刀もろともはじき飛ばす秘剣。刃は不運にも右目が血で塞がれてしまい絶体絶命のピンチに陥る。刃は心眼に頼るが、殺気を殺し、明鏡止水の如く刃の攻撃を待ち構えている十兵衛の姿は心眼で捉えることができない。
十兵衛が刃を追い詰めるが、最後は剣の残像によって本当の木刀を見失い、強烈な一撃を食らってしまい敗れる。「剣と剣がぶつかる瞬間に消えうせたのでござる…まるで陽炎のように…」その陽炎のような剣の正体とは…。
負けて悔しくないのかと不思議がる鉄諸刃に武蔵は「悔しくないわけがなかろう…。武士にとっては敗北は死にも勝る屈辱」と語る。しかし、勝つことだけにとらわれて相手の弱味ばかりをつこうとすると、おのずと勝利を失ってしまうことを知っていた十兵衛は自分を戒めるために峰を返していたと説明する。
ついにベスト4が決定。その頃、同じく出場していた佐々木小次郎がまさかの敗退。今大会に勝つために鍛錬を積み重ね、修羅の如く研ぎ澄まされた佐々木小次郎を倒すほどの相手とは一体…。
準決勝の相手は『誠』の一文字を背負った羽織を着ている青年。刃の攻撃を刀の柄で受けとめ、流れるような自然な動きで躱すと同時に打ち込む。剣のスピード・パワー・技量どれをとっても刃が上だが、剣の才能だけで戦っている相手に武蔵も驚く。その相手は六代目沖田総司を名乗る。
独特な構えから刃の攻撃を全て躱して攻撃してくる沖田に、刃は未完成ながら鬼丸の得意技『横一文字』を一か八かで繰り出してみるが、練習不足のため不発に終わる。それを見た沖田は自身も見様見真似で技を真似すると、いとも簡単に発動できた。沖田の才能に驚く刃たち。
ついに名刀菊一文字を抜き攻撃を仕掛けようとする沖田。刃は竹林を利用しスピードを倍増させた攻撃をするも、それすら流れるように躱す姿に武蔵ですら真の剣の天才と認めざるを得ない。
ついに攻撃を仕掛ける沖田。それは幕末に活躍した初代沖田総司の得意技『三段突き』を上回る五段突き(眉間・喉・胸・両肩)!刃は苦戦しつつも攻撃の呼吸をつかみ始め、少しずつ躱し始める。沖田が剣の天才なら、刃は戦えば戦うほど強くなる戦いの申し子。ついに五段突きを躱すが、まだ沖田は本気を出していない…。
刃を認めた沖田は、自身のとっておき『刀身に溜めた剣の気を一旦地面に集め、斬り上げると同時に爆発させる』技で試合を決める。…が傷つきながらも刃は立ち上がる。立ち向かってくる刃とは違う背後から剣の気配を感じ始める沖田。
剣の気配は増えていき、誰もいない所から剣の気配がする正体不明の事態に試合を早々に決めようとする沖田だが、何度も致命傷となる技をもらっても立ち上がる刃。剣術を辞めたくて、いやいやこの大会に出場している沖田と、天下一の侍を目指し、父の潔白を晴らそうとしている刃では背負っている覚悟が違いすぎていた。
ついには幻の剣の気配に乱され刃の攻撃もあと一歩のところまで迫る。回を重ねるごとに剣の気配が増えていくことに恐怖を覚え始める沖田。ついに「待った」と声を掛け、みずから棄権を宣言し敗北。
刃が無意識に出す幻の剣の正体が「闘刃」であることが武蔵の口から「剣の道を極めた者が極限状態に追い詰められた時、研ぎ澄まされた闘争本能が幻の刃を生み出すとな…。目で見るより先に気配で察知する達人であればあるほど、その闘刃に惑わされ、本物の刃を見失ってしまうのじゃ」と明らかになる。沖田は「剣術も捨てたもんじゃない」と考えを改めながら刃を見送る。
ついに決勝戦。決戦会場は本能寺を模している。そこに現れたのは刃の父親・剣十郎だった。諸羽は母から聞かされた一連の騒動を問いただす。何も語らない父と対戦しようとするが「あくまで付き添い」だとして一人の男を前に出す。
その決勝の相手は留学しているハズの鬼丸猛だった。剣十郎は、鬼丸に自分の剣の全てを教えたとして「真実を知りたければ、その男を倒すんだな」と伝え決勝戦を観客席から見守る。
二人が本能寺に入ると、「全力でいかせてもらうぞ」と鬼丸は体に身に着けていた人間十人分の手枷と外套の重りを外す。奇しくもお互いの獲物は木刀。決勝戦が開始されると火矢が放たれ、燃え尽きる前に勝って脱出しなければいけない緊迫した状況になる。
開始早々、刃は沖田戦では不発だった横一文字を成功させるが、記憶を無くしても自分の技は体で覚えている鬼丸は全て躱して反撃する。完全に太刀筋を読まれている刃は「オヤジの剣にそっくりだ」と驚きながらも苦戦。
人間に戻った後は刃を倒すために修行の旅に出て、刃の父である剣十郎を自分に欠けているものを持っているとして剣の師として剣術を学んでいた。彼の生活を真似る中で刃への憎しみを消し「剣の頂点を極めたいという気持ちだけだ」と心技体を兼ね備えた超人的な強さを手にしていた。刃も以前の鬼丸とは違い、落ち着いているのに凄みと威圧感を受けて、別人のように強くなっていることを肌で感じる。
刃は沖田や十兵衛を倒した切り札『闘刃』を繰り出そうとするが、鬼丸は既に闘刃を会得しており「剣の達人の闘争本能が作り出す幻にすぎん。幻ではオレは斬れんぞ」と一蹴し刃を追い詰める。
鬼丸は決着をつけようとする。全身の力を木刀の切っ先に集中し、気の結界を張りできた空間に何万トンもの重力を発生させ、巨大なパワーの塊を叩きつけてくる鬼丸。刃は真の強敵に出会い、初めて戦うことに恐怖するが、さやかの必死の応援を聞き恐怖を乗り越える。鬼丸に背を向け、精神集中を図り闘気を上げると、闘刃が飛び出し、それが刃の木刀に集まってくる!鬼丸の一撃とぶつかる!!
刃自身もどうして勝てたのかわかっていないが、防御を捨て攻撃だけに集中し、精神力を極限まで高めたあの一瞬、本来は実体のない闘刃が一つになり、凄まじいパワーを生み出せたと剣十郎は語る。
最終回
三年後、登校前に庭にいるゲロ左衛門、ナマコ男、クモ男に挨拶をする峰さやか。刃が武蔵たちと一緒に修行の旅に出てから三年が経っていた。すっかり元気を取り戻したさやかだが、心の内ではつまらない日常だと感じており、皆で冒険していた楽しかった頃を思い出して授業中に涙してしまう。
そこに突然、窓から刃が現れる!三年の間に成長して身長も伸びている刃。変な洞窟で大変な目にあっていると語りだし「来るか?」と伝えると、さやかも「うん」と即答。沖縄の先で見つけた魔剣クサナギに飛び乗り、二人は火星に向かう!!
***感想・評価・考察***
のちに『名探偵コナン』で大ヒットする漫画家・青山剛昌による超正統派の冒険ファンタジー漫画。人によってはマンネリ化している『名探偵コナン』より良作だと評価する声も多い。長編ながら魅力的なキャラクターと飽きない展開が特徴。1993年に剣勇伝説ヤイバの名前でテレビアニメ化もされ、ガンバフライや犬夜叉などサンデー漫画の礎を築いた漫画です。