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【テラフォーマーズ】感想ネタバレ第17巻まとめ

週刊ヤングジャンプで連載中の『テラフォーマーズ』感想ネタバレ第17巻まとめ

テラフォーマーズ 17 (ヤングジャンプコミックス)

テラフォーマーズ 17 (ヤングジャンプコミックス)

 

イワンが語る仮説(2)に衝撃を受けるクルーたち。火星とウィルスの謎が、次第に紐解かれてゆく…! そして今、明らかになる第4班班長・劉の過去。哀しき決意と祈りの先に、彼が選んだ道とは…!? 貴重な戦果と多くの犠牲を生んだ、火星での大戦争が、いま終結しようとしている――!!

目次

第163話 THE GRUDGE AND TESTMENT 仮説②
第164話 2583 WORLD’S END 2583 世界の中心
第165話 RAIN 緑色の雨
第166話 AMARANTHE 華
第167話 YOU KNOW WHAT THEY DO TO GUYS LIKE US IN PRISON 友
第168話 THE COSMOPOLITANS 第三勢力
第169話 THE NEXT 次の人類
第170話 THE TREE OF LIFE 生命の木の実
第171話 PLANET THE SAVAGENESS 野望の大地
第172話 THE JAR OF SORCERY 蠱毒の現場
第173話 WINNER BUGS 名も無き勝者たち

本編あらすじ

第163話 THE GRUDGE AND TESTMENT 仮説②
「ロシア班は目的を達成していた」…。規定数のサンプルを捕獲できず、幹部乗組員の大半を失い、大失敗に終わったかに思われたアネックス計画。絶望と後悔に沈むフロンティアスピリットの船内で、イワンだけがその眼に輝きを失わず未来を見据えていた。

ロシア班は火星着陸時に単独行動を取るため、緊急措置であるプランデルタを発動させようと中国班と共謀して破壊工作を行った。そしてピラミッドの内部を調査し、そこが物置小屋に過ぎないことを突き止めたことは既に明らかになっている。

実はロシア班のピラミッド捜索はそこで終わりではなく、さらに地下へと続いていた。それがイワンの口から語られる「仮説2」である。

ここでの問題は「なぜ火星のゴキブリがたった数百年で異常な進化を遂げたのか」。仮説1は、ラハブと呼ばれる古代文明が遺伝子操作を行っており、そのテクノロジーが火星でまだ生きている…つまり何らかの装置や工場のようなものが残されており、テラフォーマーはそこから生まれているのではないかという内容だった。

本作の世界観において、ラハブという古代文明がかつて栄えていたことは確かなようである。ラハブは火星と木星の中間に存在した天体の名で、そこに住んでいたであろう生命体の文明をも含めてラハブと呼称しているようだ。

ラハブはピラミッドに代表される建造物を太陽系のあちこちに作っており、火星・月・地球に同様の遺跡が見られることから、これらの天体は数千年前にラハブの文化圏に属していたらしい。しかし一般にはラハブは単なるオカルト扱いであり、それを聞いたマルコスもそんな話は不要だと一蹴している。事実、ロシア班がピラミッドを捜索してもラハブの機械装置の類は発見できなかった。

しかし、テラフォーマーの異常な進化は自然現象では説明できず、何らかの形でラハブの技術が関与していることは間違いない。機械装置が残されていないとしたら、ラハブの文明はどのような形でゴキブリに影響を与えたのか?それを説明するのが仮説2である。

仮説2によれば、ラハブは自分たちの生存圏に人類が侵攻してくることを恐れていた。そして火星へ到達した人類を撃退するための「罠」を仕掛けていたという。それがAEウイルスなのだと。

本来のテラフォーミング計画では火星の地下にコロニーを建造する予定だった。それが予算縮小により苔とゴキブリという比較的エコな手段に替わったわけだ。ラハブは、人類が火星に到達した場合は地下に拠点を築くであろうことを予見していた。それゆえ地下にAEウイルスを人類に対する防御網として配置していたが、人類がゴキブリを放つことまではラハブの叡智を持っても予想できず、結果としてヒトより先にゴキブリがAEウイルスに触れて強制進化を促され、あのようなテラフォーマーになったというわけだ。

そしてロシア班は考えた。AEウイルスがいまだ罠として大量に配置されているのではないかと。その説が図にあたり、ロシア班がピラミッドの地下で発見したものこそが…握りこぶし大の「AEウイルスの塊」であった。

イワンが手にしたこの情報、そしてAEウイルスの塊はロシアの軍事機密に属するものであり、個人的な判断で公開する権限は与えられていない。だが班員が咎める声を制し、生き残ったクルーには知る権利があると言って胸元をはだけたイワン。皮膚と同化したAEウイルスの塊がそこにあった。ワクチン製造に十分な量である。

ロシアはこれを隠したまま独占すればよかった。だがイワンの感情はそれを許さず、生き残った戦友たちへ包み隠さず吐露してしまう。そしてその利権を狙い、イワンに銃を向ける男がいた。草間朝太郎は突如銃を向けるが・・・!?

一方その頃火星では、置き去りにされた劉の元へ中国班の生き残り…紅(ホン)と西(シィ)が急行していた。ジェットとドルジバーキも一緒に急行している。戦局がここに至ってもまだ劉への忠誠は失っていないようで、表情には焦りが滲む。満身創痍でテラフォーマーの軍勢と戦っている劉。ジェットたちは間に合うのか!?


第164話 2583 WORLD’S END 2583 世界の中心
唐突に始まった回想回。今度の主役は劉 翊武(イーウ)の少年時代。彼の背景を理解するためには、竹馬の友である張明明(ミンミン)のことを知らねばならない。時代は37年ほど遡り、2583年の中国へと跳ぶ。

劉と明明の過去が語られるのは初めてではなく、これまでも断片的な情報は与えられていた。二人は同郷の出であり、環境汚染が激しく貧しい村での生活を余儀なくされたこと。青い空や澄んだ空気、綺麗な水に対する憧憬があったこと。そして劉が明明に単なる幼なじみ以上のなにか拘泥を持っているであろうこと…。

37年前。明明は家族に棄てられ、親戚を名乗る男に連れられてある村へとやってきた。彼女の身なりは悪くない。その眼前に広がる荒れた土地に建つ工場と、周辺に点在するバラックやテントの中で、彼女はまさに掃き溜めに鶴といった様相だ。村の住人たちは汚水をすすり、正体不明の食物を口にし、テレビの電波は届かない。

学校もなければ病院も寺院もなく、およそ文化的と言えるものは皆目見当たらなかった。赤ん坊が病気になってもろくな治療を受けることもかなわず、注射器は水ですすいで使い回し。これまで上海で暮らしていた明明からすれば、ここは地獄も同然であった。そして悪いことに、まだ幼い明明にとって頼るべき保護者は彼女を「愛玩動物」として買ったに過ぎない…。

劉 翊武は隣家の子だった。明明は11歳、翊武は6歳。無邪気な笑顔で人懐っこい彼は明明に外の世界の話をせがみ、読み書きの教えを乞うた。ほんのわずかでも安らげる場所を手に入れた明明であったが、その終わりもまた呆気無いものだった…。


第165話 RAIN 緑色の雨
張明明(ミンミン)と劉 翊武(イーウ)の回想。ミンミンには不可解な謎が残されていた。燈に引き継がれたハナカマキリの能力がそれだ。膝丸燈は本多によって創られた存在で、生来にして免疫許容臓・モザイクオーガンを持っている。そしてオオミノガとハナカマキリの能力を備えていた。二人の母という言葉の意味が解き明かされないまま火星の激闘はひとまず区切りを迎えたが、そのエピソードがこれから語られる!?

環境汚染による伝染病への対策として、劉と明明の村は国際的な取り決めで「緑化指定地域」となった。政府によって強制的な立ち退きを迫られた地域や民族もあったようだが、それはまだ人道的と言える。劉たちの村は立ち退き勧告すら出されず、住民の命や尊厳は一顧だにされることはなかった。

時の中国政府は一切の告知をしないまま上空から航空機による薬剤散布を実行。それは揮発性の毒を持つ「塗料」であった。劉たちの村を襲ったのはそういった精神の延長上にあるものだった。

結果として村の住民はほぼ全滅、機転を利かせて屋内で息を潜めたミンミンと劉は助かったものの、劉の母やミンミンの義父は死亡したらしい。住民たちの遺体は村の中央にある工場へ搬入されている。

そもそも、これはなんの工場なのか?なぜこんなインフラすらまともに整っていない土地に、不釣り合いな威容を誇っているのか?母の姿を探して工場の中へ踏み入った劉は、そこで腑分けされる遺体の列を見た。臓器売買。この村はその拠点であり、臓器の「生産」を行う場だったのだ。

工場から蹴りだされた劉は「何でも使って国の中央で上に行ってやる」などと、学校にすら行ったことがない児童とは思えないようなギトギトした決意を突如みなぎらせるのであった。

そして紆余曲折は省略し、十数年後。劉とミンミンは軍で再会を果たす。彼らの胸にある想いは、官僚の腐敗を一掃した上で国土の自然環境を蘇らせること。そのためにはもっともっと偉くならなければならない。はっきりと目に見える形で手柄を立てなければならない。

ミンミンが選んだのは、アメリカへ渡りバグズ技術の情報を盗む諜報員の道だった。彼女はアメリカでスパイ活動が発覚して捕らえられ、政治的な取引により手術の被験体にさせられる。そして副艦長としてバグズ2号に乗り込み、火星で大して活躍もせずに死んだ。その表向きの年表に記された事実とは別に、ミンミンが工作員として果たしていた任務がある。それが膝丸燈に関係することは疑いようがない。


第166話 AMARANTHE 華
膝丸燈は本多博士によって人工的に創られた子であるも、その出生は謎が多かった。生来の変態能力を持ち、さらに後天的に特性を追加することができる夢のハイブリッドヒューマンを求めて各国は水面下で争奪戦を繰り広げている。

肝心の本多が雲隠れしていたことからその技術は失われており、ここ何年かは燈という結果だけが残された形になっていた。その「結果」からリバースエンジニアリングで技術を解明しようと実際に軍事行動を起こしたのは中国。ミッシェルと燈を生け捕りにしてその誕生の秘密を解明し、ハイブリッド人間を量産して軍事的に優位に立つことが目的だった。

軍事的に優位に立てば国力が増し、富が得られる。そうすれば中国奥地の汚染地域も浄化することが可能となる。そんな荒唐無稽な絵に描いた餅を信じた劉と明明は…そう信じる以外に持ちうるすべがなかったのか…中国首脳の甘言に乗り、彼女はアメリカでバグズ手術の被験体となった。そして彼は20年後、明明の卵子から生まれたデザインド…膝丸燈を回収してこいという命令を受けたのだ。

劉は知っていた。膝丸燈が張明明の遺伝的な息子であることを。だから彼はあの時「返してもらう」と言ったのだろう。中国の荒廃した国土を救うために国を豊かにする。そのためには外交力の裏付けとなる軍事力と、技術供与や特許で大きな富を生む本多のノウハウが必要。MO手術のネックは生存率の低さ(36%)にあったが、先天的に人体に埋め込むことができるならばこの問題をクリアできる。しかし本多はいない。だから燈を拉致して人体実験にかけるなど。劉の心は愛郷の使命と明明への思慕との間で揺れる。


劉と明明は故郷の村が消滅して以来、一度しか会っていないらしい。その後明明はアメリカに工作員として潜入し捕らえられた。そしてU-NASAで飼い殺されていたため、劉に限らず中国の人間が簡単に接触できる環境ではなかっただろう。その後、バグズ計画で火星へ飛んだ明明はゴキブリに殺されてしまう。その時火星から帰ってきたのは小町と蛭間一郎だけ。そう考えれば、逆恨みだとしても劉は小町に複雑な気持ちが多少はあったのかもしれない。

そして別れの挨拶も何もできなかった空っぽの距離を埋めるように、燈の存在があった。だが劉はそんな個人的センチメンタリズムよりも国益を重視しなければならない。そしてせめて生け捕りで人体実験するのではなく、楽に殺して死体を持ち帰ろうと試みたようだ。

舞台は現在の火星に戻る。ジョセフと相討ち倒れた小町の遺体を守るようにして戦い続ける劉とアシモフ。周囲のゴキブリはエリートクラスを残してほぼ片付き、両者とも地面にへたり込む。劉はアシモフに自分と小町の血液型は同じだと告げ、アシモフはそれだけで言いたいことがわかったようだ。アシモフが背中を向けたまま了承すると、劉は自らの触腕で背中を突き破り心臓を取り出した。小町と燈に次世代を生きて欲しいと願って。


第167話 YOU KNOW WHAT THEY DO TO GUYS LIKE US IN PRISON 友
ジョセフと相討ち倒れた小町を救出するため、自らの心臓を摘出してアシモフに手術を託した劉 翊武…。その心臓は膝丸燈もしくは劉本人の心臓に対するスペアパーツとして用意された物であり、移植用に特化した自動接合機能を備えていた。これが劉の専用武器だ。

アシモフの手によって、小町の胸に開いたトンネルへ心臓が近づけられると、それは自動的に傷口へと入り込みシュルシュルと枝を伸ばす。間をおかずに拍動する新たな心臓。一方、スペアのはずの心臓を失った劉はどうと地面に伏した。メインの心臓がすでに潰れていたのか?アシモフは小町の横にぺたんと座り込んだまま死亡。劉も動く様子はない。ただ小町だけが蘇生を開始していた。

そこへ降り立った九頭竜と凱将軍。時を同じくしてようやく駆けつけた中国班の生き残り。ジェット、ドルジ、西、紅の4人。状況説明を求める凱に対し、中国班の命令違反はすべて劉の独断であり兵士は強制されて従っただけだと弁明。罪を劉になすりつけ、劉の死を無駄にせず生きる道を選んだ。涙を流しながらも合理的な筋書きを通そうと胸を張った。回想から皆一様に劉を慕っていたことが窺える。

あからさまな方便であったが、凱は劉の遺志を汲んだのか特に追及はしない。瞑目し、難儀であったな、と声をかけるに留まった。そんな人間たちの茶番を遠くから観察しているテラフォーマーのリーダー達であったが、上空に何やら見慣れない物体が浮かんでいるのを発見する。

ツヤ感を持った黒い球体。かつてYJ誌上で連載されていた「GANTZ」に登場しそうな佇まいである。球体下部には電光掲示板のように文字が表示されている。「WE ARE THE COSMOS」敵か味方かすらわからないが、英語が表示されているということはラハブではなく人類の技術による兵器なのだろう。

宇宙船の中でイワンに銃を向けていた草間。イワンが体内に埋め込んで持ち帰ったAEウイルスの塊を要求していたが、そこに燈やミッシェル、マルコスが満身創痍ながらも壁となって立ちはだかる。

イワンが「最初のワクチンを届けたい人がいるんす!その後は好きにしてください!」と泣くのを見、嘆息して銃を下ろす草間。地球ではアシモフの孫が元気に産声を上げていた。AEウイルスの母子感染はなく普通に生まれたらしい。


第168話 THE COSMOPOLITANS 第三勢力
班長である劉 翊武を亡くした第四班は、引き続き将軍である凱の指揮下に入るようだ。凱の命令は九頭龍へ乗り込みフロンティア号を追うこと。九頭龍の対艦兵装は大きく壊れているがフロンティアスピリットは戦艦ではないため、追いつきさえすれば何とかなると考えているようだ。

話の途中で、地面に転がるアシモフの腕から登場したのは爆将軍。「圧縮した脳のスペアを専用の弾丸に詰めていたか…」別に驚くでもなく解説する凱。チャツボホヤの能力をもってすればこの程度は余裕なのか。弾丸を打ち込んだ後の記憶は引き継がないので若干の混乱がある様子だが、すでに筋肉ムキムキの姿へ成長している。

ゴキブリに対し軽く攻撃するポーズを取り追い散らした後、球体の底に大きく口が開いた。そこから飛び降りる人影が2つ。一人は火星に似つかわしくない和装に二本差しの侍スタイル。身の丈以上もある異様な高下駄を履いており、肌は褐色で額にビンディのような印が見られる。

もう一人はこれまた火星どころではないドレスに日傘、ハイヒールのレディ。二人はそれぞれ「エロネ・新界(サムライ)」「ファティマ・フォン・ヴィンランド(レディ)」と名乗り、ニュートン家の者であること、目的がジョセフの回収であることを凱たちに告げる。

新キャラ2人は中国軍と敵対するつもりはないが、遺体の引き渡しに応じなければ黒い球体「ノア1号」が攻撃を開始すると脅すエロネ。どうやらあの黒い船はニュートン家の私製航宙戦艦らしい。この駆け引きの行方は?


第169話 THE NEXT 次の人類
突如火星に降り立った新キャラ2人はニュートン家に連なる者だった。2人の要求はジョセフの遺体を引き渡すこと。凱将軍率いる中国軍が応じない場合は上空の戦艦が火を噴くと脅迫する。ジェットたちとエロネの間に緊張が走ったものの、ファティマは胸元からメモリーカードを取り出してタブレットにセット。それを凱へ放って取引を持ちかけた。

彼らが言うには、地球上の国家間の小競り合いにもMO技術にも興味がない。必要なのはジョセフの遺体だけらしい。タブレットに表示されていた何かしらの情報を見て凱は納得したらしく、かくして取引は成立。九頭龍は無事に火星を飛び立った。そしてニュートン家のノア1号の中では、生命維持装置に繋がれたジョセフの頭部が息を吹き返していた。

船の中にはうず高く積まれたテラフォーマーの死骸の山、そして7人の女性の姿がある。彼女たちは皆同じ顔だ。それぞれの名はキャサリン、エマ、アレクサンドラ、ジュリア、ローレン、リシュエンヌ、マリークレア…名付けたのはジョセフ。彼女たちはみなエヴァが持つプラナリアの再生能力によって「本体」から別れた分身であった。

エロネは彼女たちがロクに物を覚えていないと言う。記憶再生の鍵はRNA(リボ核酸)にあるらしいと考えたジョセフがその条件切り分けの生体実験を行う上でエヴァがたくさん増えてしまったようだ。火星で単独行動をしている間、ジョセフは何を考え何をしていたのか。次号でそれが語られるらしい。それにしてもドラゴンボール並に緊張感がない作品になってきた。


第170話 THE TREE OF LIFE 生命の木の実
時はアネックス号が火星着陸した日へ遡る。プランデルタ発動により各班はそれぞれ脱出機に乗り込み、バラバラの方角へと散った。脱出機が向かう先でロシア班はピラミッドを捜索してAEウイルスの塊を発見、中国班は全滅したよう偽装工作を行ってアネックス艦を奪取すべく潜伏。

日米班はゴキブリと遭遇戦を行っていた。ドイツ班はテラフォーマーの群れによりエヴァを残して全員死亡。ローマ班はテラフォーマーが空中に仕掛けた網によって脱出機ごと捕獲された後の成り行きがよくわからなかったが、それが今回明かされる。

網で捕らえられ脱出機が墜落した後、ジョセフは班員を殴り倒すと火炎放射器を笑顔で構え、救難信号を発した。どうやらここでローマ班はジョセフによって皆殺しの憂き目にあったようだ。そしてドイツ班が全滅した現場へ向かったジョセフは、乳から全身を再生した驚異の変態生物エヴァを発見する。

安堵もつかの間、単身で行動しているジョセフに不審の目を向けるエヴァ。瞬時にエヴァの首をはねるや、ジョセフはその場で自らにMO手術を決行。プラナリアの再生能力を移植することに成功する。本来プラナリアのような原始的なベースからのMO手術は成功率が低いとされている。しかしすでに適合した人間からの再移植ならば格段に成功しやすくなるらしい。

MO手術の術式が具体的にどのような工程で行われるのかは全くわからないのだが、火星で人間の「パーツ」を拾ったゴキブリが石のメスで手術できていることから原理自体は単純で精密な作業は必要ないと推察される。

そしてエヴァの肉体を何度も切り刻んで分裂させながら記憶の保持に関する実験までしていた。結果として「エヴァ」は都合よくジョセフに関する記憶の一部だけを失い、アドルフの電撃を受け継いだ最強クラスの戦力として颯爽と再登場したのであった。

これによりジョセフは「人類種の到達点」と呼ばれる研ぎ澄まされた肉体に加え、肉片からでも再生できる回復能力と記憶の継承に関する知識まで手に入れたことになる。ニュートン家はヒトを超えた神のごとき存在を創りだすことを宿願としている。あとは個体としての寿命さえ解決できれば神としてヒトを超えた存在になることも可能だろう。


第171話 PLANET THE SAVAGENESS 野望の大地
ローマ班の隠れた思惑が暴露される。ローマ連邦は実質ニュートン家の影響下にあるようで、かつてジョセフはローマ大統領を通じてU-NASAへ多額の出資を表明、代わりに自らが幹部乗組員として火星へ飛ぶことを認めさせた。

ニュートン家が画策したのは「エヴァの能力奪取」と「膝丸燈の生け捕り」であったとエロネは述懐するが、それらを手に入れてどうしたかったのかは伏せられている。実現したのは前者のみで、燈はミッシェルらと共に地球へ帰還の途に着いた。

中国軍・凱将軍が言うには火星着陸前にアネックス船内を襲ったテラフォーマーズはローマ(もしくは背後にいるニュートン家)が手引きしたらしい。そして中国班の造反を示唆する証拠を捏造してローマへの疑いを逸らし、ジョセフは割りと最近まで素知らぬふりでミッシェルの味方面をしていたというわけだ。


第172話 THE JAR OF SORCERY 蠱毒の現場
火星でのテラフォーマー捕獲はAEウイルスのサンプルを採るためであり、ひいてはワクチンを作って人類を感染症から救うことが目的だった。だがそれはお題目であり、ワクチンを投与の副次効果として火星由来の細胞に対する耐性を人体に与えることができるため、同じ火星由来のMO(免疫許容臓)を移植する手術が確実に成功するようになるらしい。

確実性を高めたMO手術によって驚異的な肉体能力を得られれば低コストで軍事力を大幅に向上させることができるし、またMOは再生医療への応用も可能なことから、それらの技術をいちはやく独占することは国家に莫大な富をもたらす。

生還率が極めて低いのがMO手術の難点であるが、その確実性を高める鍵は親からMOが遺伝し「奇跡の子」と呼ばれたミッシェルと、先天的にMOを持つよう本多にデザインされて誕生した膝丸燈。この二人を研究してMO手術の確実性を高めたいがために、火星で彼らを拉致したいと考えたのが中国とロシアだ。そのため中国班とロシア班は正規の軍人をアネックス計画へ送り込んだものの成果は得られなかった。

ところがCOSMOSのエロネが言うには、AEウイルスのワクチンを接種することでMO手術が確実に成功させられるようになる。しかもローマとドイツの間ではその研究協定が進められている。つまり中国が採ったような犯罪行為がなくとも、平和裏に事を進めることは可能だったわけだ。だがその情報を公開すると独占が崩れてしまうため、COMOSが裏で操るローマと、協定先のドイツはそれを他国に伏せていたと考えられる。

今後舞台は地球へと移る。COSMOSは地球へのテラフォーマー襲来を望んでおり、テラフォーマーを満載したアネックスを遠隔操縦で地球へ帰還させる手はずを整えていた。理由は不明。タイミングよく北海道にテラフォーマーが出現したとの報せを受けたエロネはその必要なしと判断し、アネックスは沈黙する。

COSMOSは日本での政権奪取をも目論んでいるようだが、そこで何を行おうとしているのかはまだベールに包まれている。そして、ある人物の銃にもCOSMOSの刻印が記されていた…。


第173話 WINNER BUGS 名も無き勝者たち
2620年4月20日、バグズ3号改めアネックス1号計画はその全てを終了した。生存者は20名。

『日米合同第一班』
鬼塚慶次(8位)
マルコス・E・ガルシア(9位)
三条加奈子(15位)
中之条江莉佳(95位)

サンプル獲得数38体。

 

『日米合同第二班』

ミッシェル・K・デイヴス(5位)
膝丸燈(6位)
アレックス・カンドリ・スチュワート(12位)
竜一・ロブソン(70位)
アミリア・ヴェンカテッシュ(77位)
ウォルフ・レッドフィールド(90位)
柳瀬川八恵子(98位)

 

『ロシア・北欧第三班』

イワン・ペレペルキナ(10位)
アナスタシア・A・ポリトコフカヤ(20位)

サンプル獲得数数百万体。

 

『中国・アジア第四班』

ボルジギーン・ドルヂバーキ(49位)
ジェット(61位)
紅(97位)
西春麗(99位)

小町小吉(※捕虜)

サンプル獲得数314体。

 

『ドイツ・南米第五班』1名+サンプル0

エヴァ・フロスト(100位)

サンプル獲得数0体。

 

『ヨーロッパ・アフリカ第六班』

ジョセフ・G・ニュートン(1位)

サンプル獲得数4082体。

重要サンプル:エヴァ・フロストのコピー

 

ロシア班がイワンに託したAEウイルスのサンプルにより、アネックス1号本来の任務は達成できた。これによりワクチン開発が進み、AEウイルスによる伝染病の被害は終息へ向かうことだろう。

日本では蛭間が本多博士と連絡を取り合っていた。内容は燈のこと、育ての親の孤児院院長で、武芸を教えたのは草間紫雨という人物らしい。伝えるべきは生みの親だという蛭間。「それと新しい薬がいるジャパンランキング全員の分と俺の分だ」

一方、行方知れずだった『顧問』草間紫雨の位置情報がようやく判明した先はスウェーデンの地下。閉鎖された放射線廃棄物処理場に転がるMOゴキブリの群れ、対峙する草間とスキンヘッドゴキブリ。「やろうか……賭けるのはほうじゃなその看板でええ」

U-NASAの病院から出てくる一人の少年。なんと初となるAEウイルスが再発せず臓器移植だけで助かった「適合者」だという。医師たちは彼を注意深く観察するつもりだ。

フロンティアスピリットではミッシェルさんが燈に問いかけている。「お前も、あれが初めてか?」「何がです?」「だからぁ!」ファーストキスのことで赤面するミッシェルさんであった。