週刊ヤングジャンプで連載中の『テラフォーマーズ』感想ネタバレ第12巻まとめ
燈らと合流すべく集合地点を目指す小吉たちの前に無数のテラフォーマーが出現、事態は最悪の方向に…!! 一方ジョセフは劉、爆と激闘! 戦いの先に待っていたのはまさかの…? 次々と押し寄せる絶望の波、だが戦士たちは希望の火を、消さない!
目次
第108話 THE 12SECONDS 12秒の革命
第109話 METOR DART 標的と流星
第110話 THE MAXIMUM OF THE WILD 究極の身体
第111話 XDAYー1 タイムリミット
第112話 REVOLUTION HAS COME 神来る
第113話 FROM HELL WITH LOVE 地獄より愛を込めて
第114話 PREY FOR ME 九頭龍の呼び声
第115話 DIE ANOTHER DAY 生きるべき日
第116話 THE HOLY LAND 聖地
第117話 FAMOUS LAST WORDS 希望の糸と悪意の鉤
第118話 WHERE IS YOUR HEART 魂の在り処
本編あらすじ
第108話 THE 12SECONDS 12秒の革命
残る命の全てをつぎ込んで地球との通信を回復し、「助けて」とだけ伝えた刹那再び通信途絶したアミリア。その背後には新手のテラフォーマーの群れが迫っていた。そこへ間一髪で助けに入ったのはマルコスとジャレッド。マルコスは外で爆(バオ)クローンたちを相手にしていたはずだが戦闘力ではマルコスに分があったようだ。
アミリアが目を覚ましたのは車両の上。火星の空の下、ガタゴトと荷台に揺られていた。寝かされている潜入チームの他に、ロシア班、小町や三条の姿もある。そしてもう一組。両手を粘着テープで縛られた紅(ホン)と西(シイ)だ。
護衛の中国班がいない今、紅一人ではマルコスに対抗できない。西の命を救うために血清を差し出して保護を求めたようだ。結局、細菌毒で倒れた潜入チームは誰も死んでいない。ちなみに一緒にいたはずの爆(バオ)の姿はない…。
アミリアは朦朧としていて覚えていないため、通信の結果を尋ねる。彼女がつないだ10秒ほどの時間、その間にミッシェルがドイツ支局と通信し中国の裏切り行為を伝えていた。結果的には成功だったわけだ。車上に安堵が広がる。
懸念はドイツ支局が通信内容をすんなり公表し中国を糾弾するか?という点。ドイツは火星での活動ができる部隊をすでに失っている。だが何としてもMO利権に一枚噛みたいという腹は他国と同じだ。手札をなくして最も面白くない状況なのはドイツに違いない。
「俺らの悲願は変わらない。たとえ地球へ帰れなくとも膝丸燈は渡さない」強い決意の宿った表情で燈の乗る脱出機へミサイルを打ち込もうとする劉。アネックスからは遠く離れ、ミサイル車両で移動中だ。ジェットやドルジらがここへ合流に向かっているはず。その発射直前に車両の前に立ちふさがったのは、人類最強ジョセフ。さあお仕置きの時間だ。
第109話 METOR DART 標的と流星
小町・アシモフらは通信コントロールのハッキングに成功したエンジニアたちを乗せ、ミッシェルたちとの合流を果たすため転進。一息ついたかに見えたが、行く手からテッポウウオの能力持ちテラフォーマーが複数で狙撃。同時に地中からも6体、全身を硬い毛で覆われたタイプが車両の前に飛び出してきた。
これまで不文律だった一能力につき一個体の制限を取っ払い、どんどん多様化していくゴキブリの群れ。これまで具体的にどうやってテラフォーマーたちが人類からMO手術の能力を移植しているのかは明かされていない。
石器のメスを持った「なんとなく外科手術的なイメージシーン」があっただけだ。テラフォーマーはもともと免疫許容臓を持っているが、少なくとも経口摂取ではなく移植手術を行っているはず。遺体の一部でしかない肉片からどうやってその特性までも移しているのかは疑問だ。
テッポウウオの第一射で喉に風穴を開けられたジャレッド。とっさに変態し身を挺して気絶しているエンジニアたちをかばったため、顔の半分をえぐり取られてしまう。慶次しかまともな戦闘員がいなかったハッキング編とは異なり、今回は戦力が充実している。
単体相手の近接戦闘に優れる小町・アシモフ・マルコス、集団戦が得意なイワン、機動力の加奈子。小町たちの目的地は北部、海。そこがミッシェルたちとの合流地点だ。包囲網をぶち破るため車輌は前進する。
どこか遠くの場所、夜。大型の天体望遠鏡を覗きながら、手にした松明で何事かサインを送っている腰布をまいたテラフォーマーがいた。何を見ているのかはわからない。地球か、それとも火星に接近している宇宙船か。
彼らの知的レベルにはミッシングリンクが多すぎる。普通の時系列で徐々に知識を習得し概念を発見していったのとは異なり、外部からの強制的な進化を促されている。岩を繰り抜いたドームに裸で隠れ住んでいるような文化レベルなのに車の運転ができ、養蚕して繊維と食糧を得ている。
当初は文字すらなかったのに絵と鳴き声で高度な連携を取ることができる。燃料タンクによる爆撃も行った。そして今度は天体望遠鏡。彼らの未知なる物への適応力は凄まじい。小町が冷や汗をたらして危惧するほどに…。
ミサイル車輌に乗った劉と爆(バオ)を止めるため登場したジョセフ。圧倒的無敗を誇る人類最強のジョセフに、爆は一瞬でその腕を手首から斬り飛ばされていた。次の瞬間、後部座席に隠れていたもう二人の爆の銃撃により脚を撃たれて派手に転ぶジョセフ!
第110話 THE MAXIMUM OF THE WILD 究極の身体
劉翊武と爆(バオ)たちの乗るミサイル車輌へ単身挑んだジョセフ。前回あっけなく脚に銃弾を受け転倒していた。そのまま尋問に移る劉だが、ジョセフは大声で痛みを訴え、涙を流して見苦しく喚き散らす。劉は大声で喚くジョセフの不気味さに動揺し爆にトドメを刺すよう指示するが、その間にジョセフは痛みを克服しすでに跳躍のアクションへ移っていた。
飛び上がりざまに剣を投げつけ爆クローンの一人を倒し、その銃を使ってさらにもう一人の腕を撃ち無力化。残った最後の爆クローンが至近距離から放った銃撃を残像付の高速ステップでかわし、懐に入るや爆がトリガーにかけた指をつまんで制止。胸ぐらをつかんで投げに入るかという体勢のジョセフに、背後からヒョウモンダコの触腕が迫る。ヒョウモンダコは劉の能力で強力な神経毒を持つ。ジョセフ危ない!
なんと両目が別々に動き、襲ってくる触腕を見切ったジョセフ。劉の触腕ことごとくを弾き返し、爆の銃を使って撃ち落とす。その隙に劉はジョセフへ近づき、ジョセフの肝臓の位置にそっと拳をあて息を吸った。発勁が来る!
「噴(フン)!」渾身の気合で床を踏みしめ、ジョセフは発勁のエネルギーを拳からそのまま爆に伝導させた。自らはノーダメージどころか、踏ん張った脚に残っていた弾丸がどういう理屈か真上に向かって勢い良く飛び出し、劉の首筋を貫く。
劉の発勁エネルギーをモロに受ける形になった爆は白目をむいて喀血。劉も首筋を撃たれて転倒。数瞬の攻防で車輌を制圧したジョセフの姿にただただ圧倒され恐怖と驚きの入り混じった表情を浮かべる爆であった。まるで「こいつ人間じゃない」とでも言いたげな顔で…。
ジョセフは思う。ヒトとして持てる最高の遺伝子を持ち、あらゆる技術を修練により体得した自分こそが最も人間らしいと。散眼も発勁流しも、彼が人間として身につけたものだ。手術で手に入れた能力ではない。これまでジョセフはMO手術で得たはずの能力を使っていない。能力自体がないのかもしれない。勝ち誇り笑みを浮かべるジョセフ。負傷し崩折れた劉は次にどのような手を見せるか…?
第111話 XDAYー1 タイムリミット
ジョセフは冷静に降伏を勧告していた。地球との通信が成功したこと、中国は実働部隊を切り捨てるであろうことを説く。そして劉自ら地球に向け中国支局の企みを暴露すれば身の安全は保証するという取引を持ちかける。劉の立場に同情的な眼差しを浮かべるジョセフ。だが劉の目は光を失ってはいない。彼が手術を受け火星に来てまで戦う理由とは…?
劉が思い出すのは、故郷の空。工場の排気で一面インクを垂らしたようなどす黒い雲、そこから降る雨は触れると人体に害を与える。人々はゴミを漁りかろうじて命をつないでいた。その不毛の土地で、ただ黒い空を見上げる一組の男女がいた。若かりし頃の劉翊武と、張明明(チョウミンミン)である。
彼女は言った。本当の世界はもっと美しく、豊かな恵みにあふれている。人々は楽しく長生きできるのだと。劉翊武と張明明は同郷のなじみであったことが判明した。張明明は、バグズ手術の技術を盗むためスパイとして潜入したが発覚。
身柄を拘束され国家間取引によってバグズ手術の被験体となったらしい。捕虜のような扱いだ。その後彼女はバグズ2号の副艦長として火星へ飛び、作戦行動中に(ほとんど活躍しないまま)死亡している。
劉はバグズ手術ではなく後の世代の技術であるMO手術を受けていることから、ミンミンが亡くなってからその遺志を継ぐため(中国が世界の覇権を握り恵まれた環境の土地を手に入れるため)に火星行きを志願したようにも思える。
彼がこだわっているのは生まれ落ちた環境の差を武力で覆すこと。加えてミンミンの亡霊に縛られている。火星での反乱事件も納得しており、軍属で命令だから仕方なく従っているわけではない。ジョセフは説得が無理であることを知る。
ジョセフが脚に銃弾を受けた傷はすでに再生していた。傷を癒やす能力がある手術ベースであると推察されるが、その中身は劉も知らないらしい。同様に劉の傷も癒えていく。立ち上がり両雄は再び激突する。
テラフォーミングの結果、火星の北半球はほとんど海で覆われている。海岸沿いを集合地点と定めた小町とミッシェルはそれぞれ脱出機で北へ向かう。救援のための宇宙艦を待ち、捕獲したテラフォーマーのサンプルと共に火星を脱出したい日米班。一方、火星の主であるテラフォーマーたちは仄明るい松明の灯の元、今再び大集結の兆しを見せる。「火星最後の戦いが始まる」
第112話 REVOLUTION HAS COME 神来る
通信の内容は次の通り。
「如无应答,立即开始作战行动
……刘将军
你们有人类发展所需的
第二子和小强的样本了吗?
你们的所作所为,严重违反了命令,
但如果取了样本,应该能从轻处罚
这条线路有应答…」
作中に対訳はないが、簡単に意訳すると
「応答がないため作戦行動を開始する。劉将軍、貴官らは『第二の子(膝丸燈)』のサンプルを攫取しているか?貴官らの行動は重度の命令違反であるが、もしサンプルを確保できたなら処罰は軽く済むだろう」
通信の主は劉たち中国班の行動を責めており、ジョセフと劉はそれを聞いた。来るのが1日早いと苦笑する劉の頭上に尾を引く一筋の流星。それはやがて上空で姿勢を変え、8本の触腕を伸ばした蜘蛛のような姿となる。中国の有人戦略宇宙艦「九頭龍」である。
中には通信の主と思しき人影が少なくとも4名見て取れる。そしてこれを見たテラフォーマーの群れは興奮し、熱気に包まれた拳を突き上げて「じょうじじょうじ」と唱和する。彼らに取りこの「流星」は神そのものに他ならない。その熱に呼応するかのように、ミッシェルらが乗る脱出機の近くで山が火を噴く。
火星の火山は多くが死火山であると考えられており、自然現象としていきなり噴火することはありえないとミッシェルは言う。混迷を極める火星の戦局は、次なる盤面へと進もうとしていた。
第113話 FROM HELL WITH LOVE 地獄より愛を込めて
九頭龍に控えるのは中国軍の精鋭、確認出来るだけで16名。凱将軍は火星の大地を賛美するが、同時にすでに人間同士がそこで争いを繰り広げていることに嘆息もしていた。その九頭龍へ近づく飛行物体。それは「グレイトカープ23号」はるか昔に火星へ送られ消息を絶った無人機。ピラミッドに保管されていたグレイトカープ3号と同種の機体だ。
テラフォーマーはそれを再利用し、高高度で飛行する九頭龍へ難なく追いついた。飛来するグレイトカープ23号。そこには5体のテラフォーマーがしがみつき、九頭龍へ乗り移ろうとしている。火星着陸前にアネックス1号へ侵入した個体もこのような手段をとったらしい。劉将軍らの工作でレーダーが無効化されていたのだろう。
群がるテラフォーマーの群れを圧倒的な火力で殲滅する九頭龍。伸びた触腕の先端から無数の熱線を放射し、ゴキブリが用意した網もろとも焼き払う。彼らが目指す場所は…。
劉が置かれた立場は絶望的だった。裏切り工作が露見した以上、中国政府はその事実もろとも4班を抹殺するつもりで九頭龍を投入している。派手に戦闘を行えば証拠も残るだろうが、全てはテラフォーマーに襲われ不測の事態に対処したと説明すれば片がつく。
劉はすでに自力での作戦遂行を放棄した。すなわちサンプルとしてミッシェルと膝丸燈を回収することだ。彼の悲願は新世代のMO技術の独占により中国の軍事力・経済力を引き上げ、豊かな国土を手に入れること。
そのために今できることは…「逃げてくれ」劉はジョセフに懇願する。ジョセフはミッシェルに求婚しているが膝丸燈の存在はどうでも良いはず。それならどうか、祖国に消される自分の惨めな最期に免じて、膝丸燈を中国へ供出してくれないか…
ジョセフに何のメリットもない身勝手な願い。それでも言わずにいられない程の窮状。落涙する劉将軍の姿に目を見張るジョセフ。二人の頭上には九頭龍が轟音とともに鎮座していた。
凱はマイクを通して劉へ釈明を求める。作戦の遅れと裏切りの露見により中国の国家的地位を脅かした責任を問うつもりだ。だが、凱の隣にたつ巨躯の男が、それを遮ってプラスチックのカバーで覆われたスイッチを叩く。刹那、九頭龍の直下へ放たれるビーム砲。大規模な爆発が起こり煙に包まれる地表。
予想外の行動を咎めるような口調で凱は男の名を呼ぶ。「爆(バオ)将軍」。髪は総白髪で歳は取っているが、その顔つきは火星で散々目にした爆に瓜二つであった。彼は交渉の余地はないと断ずる。流石のミッシェルさんも諦めた。しかし、「……護ります。…桜人、今助けるぞ」
第114話 PREY FOR ME 九頭龍の呼び声
謎の動力で動くタマゴ型の武装航宙艦。その内部では凱(カイ)将軍と爆(バオ)将軍のやりとりがなされていた。劉とジョセフを問答無用で爆撃した爆将軍に対し不満気な視線を向ける凱将軍。爆は行動は早いほどいいのだと言い、次なる目標…すなわち「サンプル」攫取へと移る。
「サンプル」であるミッシェルと燈はどこにいるのか、その情報を九頭龍は掴んでいない。その時遠方にて火山が噴気を上げるのが目に入る。凱と爆は推察する。相当な人為的エネルギーを加えなければ冷えた火星での火山活動は難しい。エネルギーとはすなわちミサイルや衛星用燃料による爆破。高確率でそこには人がいるはず…。
群がるテラフォーマーたちを触腕からの熱線で焼き払いながら徐々にその威容が近づく。燈はそれが自分たちの敵であろうことを直感的に察知し、それが上空から発する炎に自分たちが巻かれて死ぬであろうことも予見し、咆哮する。
この状況に心が折れたのは「ザ・ファースト」ミッシェル。車上に座り込み、ただ呆然と九頭龍を見上げる。彼女はすでに父の仇を討ち、すでに執着する対象を失っている。
絶望と諦念が支配する脱出機でただひとり、生きるために立ち上がった人間がいた。膝丸燈である。百合子を救えなかった無念、桜人との約束。彼にはまだ守るべきものがある。立ち上がる理由がある。
第115話 DIE ANOTHER DAY 生きるべき日
脱出機の上、震えながらアレックスを介抱する八重子は不意に煙を上げた火山を見て、マイマイカブリ型テラフォーマーのことを思い出していた。
あの時、膝丸燈を見たマイマイカブリは狼煙をあげて味方に合図を出した。この火山もそれと同じルール…すなわち「燈を見つけた」ことで発せられた信号なのではないか?
上空ではその噴煙を目印に接近してきた中国所属の航宙艦「九頭龍」が燈を発見する。彼らは膝丸燈を必ず生きて連れ帰るよう厳命されているらしく、死体でもやむを得ないと判断した劉将軍とは一線を画する。
彼ら中国軍としてはこのまま燈たちを乗せた脱出機がテラフォーマーの黒じゅうたんに飲み込まれてしまうのは都合が悪い。皮肉にも九頭龍とそこにいる中国軍の将軍たちがこの窮状を覆す救い手となる可能性が出てきた。凱将軍は「マーカー」をつける準備をするよう命を下す。
地上では脱出機に全方位から押し寄せる黒い波。立ち上がり戦えるのは燈ただ一人。ミッシェルは脱水症状で立てず戦意喪失、アレックスは気絶、八重子は体臭以外の攻撃能力なし。仮に彼らが全員万全な状態だったとしても、この物量の差を覆すことは困難に思える。
群がるテラフォーマーたちを忍者刀一本で斬りまくる燈。やがて膝をつき、血反吐を吐き、ダメージは蓄積していく。それでも叫び立ち上がる姿は美しいが、いずれ限界が来るのはわかりきっていた…。小町小吉「…生きてくれよ」。
第116話 THE HOLY LAND 聖地
バグズ2号計画が失敗し、火星から生きて帰れたのは小町と蛭間一郎(現・日本国総理大臣)の2名だけ。U-NASAには菜々緒から小町へ宛てた遺書が残されていた。
前略 小町小吉様
もしも私が死に貴方だけが生き残っているなら
どうか私の事は忘れて他の誰かと幸せになって下さい
これで良かったのです
貴方は優しいからきっと私に合わせてくれた事でしょう
しかしその優しさがきっと私にとって辛いものとなるのです
何故ならもし二人生きて帰って
もし私の心の傷が癒えたとしても
私は子供をもとうと思えないのです
怖いのです
もし子供を産んだとしても私のような人間に愛せるのかも
私を見殺しにした母親の血を引いた子が
真っ当な人間に育つかどうかも自信が持てないのです
だからこれで良かった
貴方は父親になるべき人
どうかこれからも子供達や沢山の人を導いて下さい
ねぇ小吉
あの時助けてくれてありがとう
導いてくれてありがとう
あなたは私の燈し火でした
第117話 FAMOUS LAST WORDS 希望の糸と悪意の鉤
降り続く雨。土石流が覆い尽くし、あらかたのテラフォーマーが死滅した地表へ九頭龍から兵士が降下する。先だっての土石流はどうやら燈が引き起こしたものではないようだ。土石流の跡をノロノロと進む脱出機だが、中に人影はない。燈、ミッシェル、アレックス、八重子は脱出機を捨てて徒歩で逃げたようだ。
「マーカーは付いているな蛇绕(シュアラオ)を撃つ」凱が命じると、九頭龍から球状の何かが発射された。「マーカー」を目がけて。その蛇绕(シュアラオ・蛇のとぐろの意)は一直線に燈に付けられたマーカーを目指す。雨の中、敵襲を警戒し前を見つめる燈はそれに気づかない。とっさに身を呈して燈の前に立ち塞ぐミッシェル。その胸を鈍い音とともに蛇绕が貫いた。そして鮮血がほとばしる!
第118話 WHERE IS YOUR HEART 魂の在り処
ミッシェルは燈と初めて出会った地下闘技場のことを思い出していた。そして共に戦ううち、燈を死なせたくないと強く感じるようになった…彼女はそう振り返る。横たわるミッシェルが慈しむように燈の頬に触れていた手からふっと力が抜け、軽い音を立てて火星の地面へと吸い込まれた。
燈が呼んでも揺すってもミッシェルは応えない。「逃げろ燈走れ地球にお前は還-」それが彼女の最期の言葉。目の前の光景に現実感が持てない燈。その周囲に九頭龍から中国兵が少なくとも6名降下し、頭上に控える凱将軍へ状況を報告する。
ミッシェルの胸に突き刺さったままの蛇绕(シュアラオ)を使い、彼女の遺体を回収せよと命じる凱。浮かび上がろうとする蛇绕のワイヤーを、何かが一刀に切り裂いた。禍々しい殺気を放ち、咆哮とも嗚咽ともつかぬ叫びと共に、「それ」は目の前の中国兵の体とはるか上空に鎮座する機械仕掛けの神の腕すらも切断する。
凱「ついに出したか…!!」
爆「回収させて(かえして)貰おう-」
凱「”母親から受け継いだ方の能力”!!!」
秋田菜々緒の遺書の「私を見殺しにした母親の血を引いた子が真っ当な人間に育つかどうか…」というくだりに触れ、そんなことはなかったとつぶやく。「お前の子供な…すごく…良いヤツだったよ…アキちゃん」
第118話 WHERE IS YOUR HEART 魂の在り処
凱将軍の放った血の通わぬ兵器が、無慈悲にミッシェルを貫いた。薄れゆく意識の中、燈への想いを再確認するミッシェル。そして、手は力なく落ちた。中国軍が二人を包囲する。『悪』そこにあったのは―
「回収させて貰おう」
「“母親から受け継いだ方の特性”!」
『九頭竜』すら切断する一撃―
「お前の子供な……すごく……良いヤツだったよ……」
「アキちゃん……」
『蟷螂』の腕……! 小町の涙! 燈の修羅の貌!