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【進撃の巨人】感想ネタバレ第20巻まとめ

別冊少年マガジンで連載中の『進撃の巨人』感想ネタバレ第20巻まとめ 

進撃の巨人(20) (週刊少年マガジンコミックス)

進撃の巨人(20) (週刊少年マガジンコミックス)

 

エレンの生家の地下室に眠る「真実」を手に入れるため、ウォール・マリア奪還最終作戦を決行した調査兵団。しかし、その行く手にはライナー、ベルトルト、そして「獣の巨人」らが待ち構えていた。絶望的な戦況。情報、戦力、作戦。何もかもが、足りない。多くの犠牲を出す最中、作戦を指揮するエルヴィンが下した決断とは――?かつての仲間達との戦いに勝利し、エレン達は「真実」を手にすることができるのか!

目次

第79話 完全試合
第80話 名も無き兵士
第81話 約束
第82話 勇者

本編あらすじ

第79話 完全試合

燃える家屋、延焼範囲を広げていく超大型巨人…シガンシナ区内で火災発生――!「あの中にエレンの…エレンの家ぇぇがあああああアハハハハハハハ」「サシャコニーを少し殴れ」超大型巨人はシガンシナ区の民家を破壊しはじめます。家屋をすくい投げて砲弾代わりに使い、建物の陰に隠れた巨人エレンや104期たちをあぶり出す作戦のようです。

超大型出現時の爆風に巻き込まれてハンジ隊の生死が不明な今、104期部隊の指揮を執るのはアルミン。「そ…それじゃあ超大型巨人(ベルトルト)はここで倒さなくちゃいけないの…!?今ここにいる僕達だけの力で…」皆の期待の眼差しにプレッシャーを感じたアルミンは撤退しエルヴィンと合流することを提案。それが難しいと指摘されると今度はジャンに指揮を代わってくれと言い出します。

「俺は状況は読めるが打開策は浮かばない」生存のために対症療法的な危機回避はできても、超大型というイレギュラーを排除する決定打を立案するだけの柔軟性や知識はない。つまりジャンは前線で的確に部隊を統率することはできるが、目標設定や作戦立案はある程度落ち着いた状態でアルミンがやるべきだというわけです。

その頃、壁を挟んで反対側の戦場(ウォールマリアの内側)ではリヴァイと合流した部隊が雑魚巨人の群れをあらかた掃討するも、親玉である獣の巨人は離れた平地に鎮座して動く素振りを見せず。「あぁ…どうにも臆病なんだろうな。そもそもタマが付いてねぇって話だ」「お前は休んでろ!とりあえず小せぇのを全部片づける!!行くぞ!!」敵の意図をつかめず苛立つリヴァイが爆煙の上がるシガンシナの方を振り返ったその時。降り注ぐ無数の岩が彼らを襲い、街を破壊します。

まるで音速を超えるかのような勢いでジーク戦士長が放つ岩の散弾。その礫のひとつひとつが家屋を、兵士を、かすめただけでバラバラに粉砕していきます。さながら大部隊による大砲の一斉射撃。人間で言えば砂をつかんで投げつけるに等しい原始的な攻撃ですが、単純に「サイズがデカい」というだけでこれほどまでに脅威となる。さらに獣の巨人には知恵があるため絶望度が飛躍的に上昇します。

樽を背負った四つん這い巨人が給弾役で、どこからか丸っこい岩をゴロゴロと転がして獣の巨人のそばへ運んで来ています。「う~ん…ボール1コ分高かったか…」「まぁ…初球は様子見で」「目指すは完全試合(パーフェクトゲーム)だ」こう言って投球モーションに入る。

降り注ぐ岩の雨と轟音に慌てふためく調査兵団。正面からは獣の巨人の制圧投擲、背後から迫る超大型巨人。壁際の街区で合流したエルヴィンとリヴァイ、そして馬の見張りを任された新兵たち。ハンジ隊は生死不明、エレンらは超大型から隠れたまま動けず、万策尽きたかに思える状況です。「エルヴィン…何か…策はあるか?」リヴァイに次の手を問われ、冷たい表情で「何か」に目を遣ったエルヴィン…。

壁の反対側、シガンシナ街区では、超大型が壁に接近するのを防ぐためにエレンが身を呈して囮になる作戦を敢行。しかしベルトルトは横目で一瞥したのみ、進路そのままでエルヴィンたちの方へ向かいます。エレンは104期の面々を肩に乗せたまま無策で突撃しますが、いかんともしがたいサイズ差。必死にくるぶしへ抱きつき、文字通りの足止めを試みたエレン。ベルトルトは一蹴。超大型巨人に蹴られたエレンはウォール・マリアの壁までふっ飛ばされる!

第80話 名も無き兵士

「オイ…あれは」「エレンか?」「…壁の上まで吹っ飛ばされたってわけか…」前門には獣の巨人、後門には超大型巨人。ハンジは超大型の変身爆発に巻き込まれて生死不明。巨人エレンは超大型の足止めを試みるも、キャプ翼の森崎の如くふっ飛ばされて一時退場。アルミンは妙案浮かばず。生き残っているのは104期たちと、リヴァイ、エルヴィン、馬を守る新兵たち…。

エレンが戦線離脱した今、超大型に対抗できる戦力は「雷槍」を装備したミカサのみ。ジャンたちが囮となってベルトルトの注意を引きつつミカサがうなじを直接狙う作戦ですが、これはさすがに単純過ぎるというもの。ベルトルさんは新兵器「雷槍」の正体こそ知らないものの、兵士としての手の内は熟知しています。

超大型の熱風防御はかなり優秀で、囮もミカサも、発射された雷槍も含めまるごと圏外へふっ飛ばしてしまいます。突風でワイヤーが抜けた雷槍がミカサの背後で爆発。ベルトルトはそれを目撃しているため、新兵器が爆薬付きのアンカーであることは理解したでしょう。

熱風は瞬間的に相当な温度に達しているらしく、息を吸ったら喉が焼けた、と血を吐くコニー。ミカサやジャンも火傷を負い急激に消耗。ミカサは雷槍の自爆に巻き込まれ負傷してしまいました。

あまりに絶望的な戦力差。心配するアルミンに、「大丈夫、浅いから」と返すミカサ。そして、「それより…どう?」とアルミンに訊ねる。「何か…反撃の糸口は……」「…え?」「…何も」と力なく答えるアルミン。落胆するジャン。そこへ新たな破壊音が轟き、土煙の中に姿を見せたのは鎧の巨人。これだけやっても戦力が減ったのは調査兵団側だけで、ジーク戦士長率いる巨人軍は特に大した損耗を受けていない。

一方、壁の反対側では獣の巨人ことジーク戦士長は岩の散弾投擲を継続しており、気が付くと壁の周辺に広がる街区の建物の多くがすでに瓦礫と化しています。もはや馬を守ってもそれに乗って帰る人間の数が足りないという状況で、新兵たちは恐怖に統率を奪われつつあり、もうダメだ…終わりだ…と諦めを見せる兵士が現れはじめました。

「エルヴィン…反撃の手数が何も残されてねぇって言うんなら」「敗走の準備をするぞ…」それでもあくまで冷徹に思索を止めないリヴァイ。自らの命も駒として計算に入れながら、可能性を次へ繋ぐための撤退戦略を練ります。もしかしたら誰一人生きて帰れず、文字通りの全滅を喫するかもしれない。そんな状況にありながらわずかでも合理性のある未来を選択しようとするリヴァイ。誰もが持っているはずの「生きたい」という本能に執着することなく、自分とエレンのどちらを生かすかを天秤にかけて結論を出している。

「俺は獣の相手だ」「奴を引きつけて」「だろうな、だが…」「お前とエレンが生きて帰ればまだ望みはある」リヴァイの言葉に「無理だ、近づくことすらできない」と、間髪いれずに答えるエルヴィン。「ああ反撃の手立てが何も無ければな…」「…あるのか?」

「…あぁ」「…なぜそれをすぐに言わない」とリヴァイ。「…なぜクソみてぇな面して黙っている?」「…この作戦が上手く行けば…」「お前は獣を仕留めることができるかもしれない」一流詐欺師のように体のいい方便を並べなくてはならない。私が先頭を走らなければ誰も続く者はいないだろう。そして私は真っ先に死ぬ「地下室になにがあるのか…知ることもなくな…」

この状況を打破するにはもはや捨て身で囮となり、最強戦力のリヴァイに全てを託し獣の巨人を打ち倒すしかない。100%死亡する囮部隊を率いて突撃するのはエルヴィン以外に務まらず、先頭を走る彼はいの一番に殺される。

エルヴィンは嘆息して木箱に腰掛け、背中を丸めて疲れた様子を見せます。「俺は…このまま…地下室に行きたい…」これまでの半生をかけて追い求めてきた真実への扉がすぐそこにあるのに、エルヴィンが反撃作戦を決行した時、それはもう手の届かないものになってしまう。答えを知ることなく、他の誰かを生かすために肉塊と成り果てる。

「仲間達は俺らを見ている」「捧げられた心臓がどうなったか知りたいんだ」「まだ戦いは終わっていないからな」「すべては俺の頭の中の…子供じみた妄想にすぎない・・のか?」
わずかに視線を上げてリヴァイを見るエルヴィン。「お前はよく戦った」
「おかげで俺達はここまで辿り着くことができた…」

「夢を諦めて死んでくれ」
「新兵達を地獄に導け」
「【獣の巨人】は俺が仕留める」

その言葉を待っていたかのように、エルヴィンはゆっくり顔を上げて微笑むのでした。瞳は澄み、顔からは迷いが消え、団長として任を全うすることに決めたようです。己の行動を規定する「呪縛」から逃れ、壁を乗り越えた瞬間と言えるでしょう。

エルヴィンを信じて死んでいった名も無き兵士たちに報いるため、彼は残った兵士たちを集めると最後の作戦を伝えます。内容は単純な陽動。信号弾で煙幕を張り、投石の狙いを狂わせつつ散開。獣の巨人が気を取られているうちにリヴァイが雑魚巨人の群れを伝って立体機動で接近、奇襲をかける。以上。要するに囮は絶対に死ぬ。

「俺達は、今から…死ぬんですか?」それを質す新兵に、どんな人生を送ろうと人はいずれ死ぬ、だがその者が歩んだ生や死に意味を与えることはできると、鬼気迫る顔で魂を振り絞った大演説をぶつエルヴィン。「我々はここで死に、次の生者へ意味を託す!」総員で突撃を仕掛ける!立体機動で忍び寄るリヴァイ。全ては未来の為に…。

第81話 約束

獣の巨人ことジーク戦士長の遠投攻撃の前に、万策尽きたエルヴィンとリヴァイ、新兵たち。
せめて一矢を報いるために彼らが採った策は「囮特攻」であった。人類最強の戦力リヴァイに全ての望みを託し、兵士たちは雄叫びを上げ進軍する…。

信煙弾を打ち上げ、煙幕を張りながら騎馬での突撃を仕掛けたエルヴィンでしたが、岩の散弾を脇腹に浴びて落馬。生死は不明ですが、脇腹が破れただけならまだ生きている可能性はあります。団長を失ってもなお振り返らず突進を続ける部隊を見て、ジークは一人で怒りに震えながらブツブツ言っています。

「レイス王によって『世界の記憶』を奪われたのは悲劇だ」「だから何度でも過ちを繰り返す」「しまいには壁の中の奴ら全員年寄りから子供まで特攻させるんだろうな」

無策特攻という挙に出たエルヴィンたちに対し、ジークが強く憤っている「ふざけやがって…あ…粉々にしちゃったか…ハハ何マジになってんだよ?お前は父親とは違うだろ?何事も楽しまなくちゃ。みんなを誇り高き肉片にしてあげようぜ」思わず持っていた岩を握りつぶし、サラサラの砂にしてしまうほどの怒り。ジークが思わず感情的になった己を諌める。

特攻によってマルロも散弾で頭を割られて死亡。(来る――自己犠牲の精神。自分で言ってたのがこれだ。ヒッチは今頃何を…いや…あいつはまだ寝てるか…あぁ…いいな。分からない。何で俺は…今頃――)。特攻を仕掛けた兵士たちは文字通り全滅し、動くものは見当たりません。「しゃあああゲームセットぉ!!はは分かるか!?投げ方を変えたんだよ。これならイチコロでしょ」「あ~あ、かわいそうに…」肉塊と化した兵士たちを見やりながらそう呟くジーク。

(…なんだ?俺の巨人が倒れて――)正面の騎馬軍団に夢中になっていたジークが気づいた時には、煙幕に紛れる形で取り巻きの巨人たちがみな倒れており、リヴァイがその刃の射程にジークを捉えていたのです。命を投げ捨てて兵士たちが撃ち尽くし、ジークの目には無駄な抵抗としか映らなかった信煙弾の目隠しは、見事にその役目を果たしたのでした。

ジークが高速で接近する影を認めた時には、すでに左腕が剛毛の上から細切れとなっており、返す刀で両目を潰され、暗闇のうちに両足首を断たれていました。どうと地響きをたてて倒れこむ獣の巨人。うなじを硬質化で守ろうとするものの、リヴァイの方がわずかに疾く…。

獣の巨人のうなじから引きずり出されたジーク。エレンの巨人化能力実験により、リヴァイは彼ら巨人の欠点を把握していました。曰く、本体(人間)部分の損傷が大きく回復に努めている間は再度の巨人化ができない。つまり、本体を捕らえて四肢切断など肉体的に大きなダメージを与え続けていれば、巨人化能力を無効化し単なるヒトとして拘束することが可能になるというわけ。

「巨人化直後、体を激しく損傷し回復に手一杯なうちは巨人化できない。そうだったよな?おい、返事をしろよ。失礼な奴だな…」今やジークは完全にリヴァイの手中にあり、いつでもその首を切断できる状態にはありますが、リヴァイはそれをしません。リヴァイの狙いは、味方に薬を使って巨人化させ、ジークを食わせてその力を手に入れること。またそれにより恐らくは瀕死であろうエルヴィンを救うことです。しかし、その欲目が命取り。四つん這いの荷物運搬巨人が猛然と襲いかかり、ジークをその口に咥えて全力で逃走。馬もおらず、立体物もない平地ではリヴァイがそれに追いすがる手段はありません。

四つん這い巨人はリヴァイがジークに接近した方角の逆へ走ります。「お前ら!!あいつを殺せ!!」「いてぇ。やりやがったなリヴァイ…いてぇよぉ…だが武器は使い果たした頃だろ…お前らはこれで全滅。かなり危なかったが我々の勝ちだ。」残された予備のブレードは一組。最後の刃へ換装し、鬼の形相で立体機動装置を駆るリヴァイ…。「待てよ…俺はあいつに誓ったんだ…必ずお前を殺すと…俺は――誓った!!」

巨人たちへ挑みかかるリヴァイが豆粒ほどに見える距離で、一人の兵士が立ち上がり、生き残りを探してフラフラと歩き始めます。彼がエルヴィンを見つけてリヴァイの元へ送り届けることになるのか!?

場面転換、シガンシナ区の壁内では雷槍による攻撃で昏倒していたライナーが無事復帰し、超大型と鎧の二枚看板が104期へ迫る。エレンはまだ壁に激突して気絶している。ジャンはすでに諦めており、エレンだけは何とか逃がそうという姿勢。しかし、撤退したがっていたアルミンの目に光が。

アルミンの観察眼によると、超大型はさっきまでより少し痩せているらしい。アルミン曰く超大型はケタ違いの質量を持っているがその分燃費も悪く、長期戦には不向きであるという仮説。エレンの巨人化実験でも硬質化は続けて何度も使えず、数回でエネルギーが枯渇へ向かったそうです。巨人化能力の練度や、特性と体格の差は考慮するとしても、ずっと戦い続けられるわけではない。それが確信できた瞬間、アルミンの頭脳はフル回転を始めました。

ようやく火が入ったアルミンが導いた策は「作戦がある。みんなでライナーをひきつけてくれ!!超大型は僕とエレンで倒す!!僕たち二人で…勝ってみせるから…」「分かった。ライナーは私たちに任せて」「おせぇよバカ…本当にもうダメかと思ったぞ…」ミカサも文句を言わずエレンをアルミンに託します。背中別れに駆け出す面々。アルミンは巨人エレンのうなじへブレードを突き立てました。(この作戦が上手く行けば…僕はもう…海を見には行けないな)「エレン!起きろ!海を見に行くよ!」彼の秘策とは一体?

第82話 勇者

ただでさえ少ない戦力をふた手に分けた104期。鎧の方へ向かったのはミカサ、ジャン、コニー、サシャ。一方ライナーはここ数分の記憶は綺麗に抜け落ちていました。おそらく雷槍で頭を吹っ飛ばされ、無理やり肉体を修復したことで記憶が曖昧になってしまう。戦局が飲み込めず混乱したライナーはとりあえず各個撃破よりベルトルトと合流しエレンを確保することが優先と判断。「無視かよ!?エレンに狙いを絞る気か!?」群がる104期を無視して超大型の方へと走ります。

今ライナーを超大型の方へ行かせてはならない。とっさに判断したミカサは鎧の背中に追いすがり、雷槍で左膝を裏からぶち抜きます。(――何だ!?今何を食らった!?一撃で鎧の膝が砕けたのか!?あれから記憶が飛んでいる…俺に何があったんだ…?状況が分からない…力もあまり残ってない…だがエレンを奪い去る事が俺たちの勝利である事に代わりはないはずだ。そうだろベルトルト。早くこいつらにかたを付けて加勢に行くからな)彼女は走る鎧の足を的確に一発で止め、ライナーは地面につんのめります。104期に残された雷槍は3本。左足が再生する前にカタを付けなければ…!

「足止めしていては勝てない。殺すしかない」意を決した104期たちが咄嗟に立てた作戦は、サシャとコニーが雷槍で鎧のアゴを左右から爆破。口が開いた所へミカサが柔らかい喉からうなじへ向けて雷槍を放って爆殺で決まり!ジャンはサシャとコニーのために囮役。

時間がない。作戦は即時決行。鎧が振り払った腕で民家の屋根がバラバラになり、その破片に巻き込まれたジャンとサシャが負傷、サシャの雷槍は命中せず。コニーは左アゴを爆破したものの口は半開きで十分な隙間があるとは言えません。ミカサの超人的な身体能力ならできるか…?いずれにせよ、今ここでやるしか無い。その時、不意に現れた謎の人影が新たに雷槍を発射。鎧の右アゴを綺麗に撃ち抜き、予定通り喉が丸見えになります。

「今だ!ミカサ!」ハンジがあらわる!頭から血を流している以外は普通に五体満足のハンジ。ちょっと気を失っていた程度のようです。ミカサはさすがの動きで鎧の腕をかい潜り口元へ到達、即射撃。至近距離での雷槍爆破によりさしもの鎧もうなじを喉側から粉々に粉砕され、ライナーはまるでベイルアウトの如く弾き出されてしまいます。

壁に叩きつけられ、意識不明に陥っていたエレンですが、アルミンがある秘策を持って単身で接近。エレンを叩き起こします。超大型巨人は動きが鈍重で小回りが効かず、土木工事的なぶちかましは得意ですが敵に接近され立体機動で波状攻撃をかけられると対応しきれない。そのため防御策として「肉体を高熱の蒸気に変えて噴出させ、周囲の敵を吹き飛ばす」という手段を用います。

「――成功は僕がどれだけ耐えられるかで決まるなぁ」「エレン、悪いけど僕は海を見るまでは死ねない。だから大事に至らない辺りで切り上げるけど後は任せたよ?僕ってそんな勇敢じゃないから…」壁上で寝ていたエレンは目覚めます。アルミンは作戦を伝え、ゆっくり近づいてくる超大型に対峙したものの、エレンはバランスを崩し壁から落下。どうやらまだダメージが残っており、立ち上がることすら困難な様子。それを見るベルトルトの眼は深い暗さをたたえる。淡々と、目の前の些末な生死にとらわれることなく、全てを諦めたような顔でアルミンへ腕を伸ばす超大型巨人。

アルミンは立体機動で正面から超大型の面前へ接近。ベルトルトは定石通り熱風で応戦、アルミンを吹き飛ばそうとします。頭からつま先までの全身から一気に蒸気を吐き出す。アルミンは超大型の顔の中でも、むき出しになっている歯にアンカーを刺す。骨格部分は熱に変換されないため溶けずに残り、アンカーも抜けずにアルミンはひたすら耐える。

(――なぜだ?アルミンを吹き飛ばせない…なぜアンカーが外れないんだ)熱と風圧で近づくことはできないが、吹き飛ばされもしない。熱風はアルミンの身体を焼いている。超大型は熱風の放出時には筋肉を動かすことができず、直立不動の状態。蒸気を止めて手でつかもうとするとアルミンにうなじを取られる恐れがありますので、ベルトルトは意地になってアルミンを吹き飛ばそうとさらに風圧を上げます。

(いったい何がしたい?陽動か?エレンならまだあそこでくたびれたままだぞ。これで本当におしまいなら…今楽にしてやる)アルミンがここまでして悪あがきする意味が分からず混乱するベルトルト。巨人エレンは足元で膝をついたまま動く気配はありません。熱風に晒された髪や服は焼けてなくなり、肌は黒く炭化し、それでも意識のある限り立体機動装置を握ったまま離さないアルミン。

(…耐えろ…まだ離すな。エレンに託すんだ。僕の夢・命・全て…きっとエレンなら海にたどり着く。海を見てくれる)アルミンは自分の命を犠牲にしてエレンの逆転に賭けます。全身が焼け焦げ、ついにその手を離して落下したアルミン。消し炭となり動かないアルミンを一瞥し、足元のエレンを確保しようと目をやったベルトルトは、ある異変に気づきました。そこにいる巨人エレンは全身硬質化した抜け殻であり「中身」がいないことに。

「殺った」次の瞬間、ベルトルトは斬られていた。今やエネルギーを消費し痩せ細った超大型のうなじに刃を突き立て、ベルトルトを引きずり出して四肢を切断、変身できないようにする。

身体能力では劣るものの、その卓越した知識と柔軟な発想で何度となくエレンたちの窮地を救ってきた幼なじみ、アルミン・アルレルト。その身を呈した陽動で超大型の注意を逸らし、エレンが密かにベルトルトの背後を突く隙を生み出すことに成功します。「――クソ…分かってたはずなのに…お前が誰よりも勇敢なことぐらい…」アルミンの変わり果てた姿がそこには横たわっていた。