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【アスペル・カノジョ】感想ネタバレ(最終回・最終話・結末)まとめ

コミックDAYSで連載中の『アスペル・カノジョ』の最終巻の最終回(最終話)を含めた感想ネタバレまとめです。結末(ラスト)はいかに!?

アスペル・カノジョ(12) (ヤンマガKCスペシャル)

アスペル・カノジョ(12) (ヤンマガKCスペシャル)

  • 作者:森田 蓮次
  • 発売日: 2021/05/12
  • メディア: コミック
 

ずっと生きるのが苦しかった斉藤さんと横井。それでも2人は、明日も生きるために手を取り合う。「生きづらい」2人が一緒に暮らした日々の記録、完結。きっと、明日も生きられる。エンディングの先まで、2人の人生は続いていく。

本編あらすじ

朝刊配達のアルバイトをしながら風呂無し共同トイレの安アパートに暮らす、売れない同人マンガ家・横井拓のもとにファンを名乗る1人の少女が不意に訪れたことから物語が始まる。18歳の少女・斉藤恵を自宅に招き入れるが、コートを脱いだ彼女の手首には無数のリストカットの跡が…。歪な二人の歪な共同生活が始まる。

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アスペル・カノジョ(12) (ヤンマガKCスペシャル)

以前は子供がもしできたら堕胎すると言っていたのが、育てるに変化していた。これまでトラウマに悩まされ続けてきたが、ついに自分の過去を肯定することができた。

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アスペル・カノジョ(12) (ヤンマガKCスペシャル)

ついに二人は結ばれると思いきや、斉藤さんが初めてのセックスで痛がってしまい不発。斉藤さんは言葉(アウトプット)が苦手なだけで鈍いわけじゃない。言語化で整頓できないから誤解されるけど抽象的な情報にはむしろ敏感であることに気づく横井。 

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斉藤さんは自分にとっての横井さんが、横井さんにはいなかったことに可哀想だと涙する。

斉藤さんは平和な日でもフラッシュバックや離脱症状でいきなり別人になる。解決なんて無いし終わりもない。ハッピーエンドなんて現在進行形では存在し得ない。ただただ毎日やれることを続けてハッピーを積み重ねてバッドエンドから距離を取り続ける。

斉藤さんはいつも同じ発作がきて薬飲んでも何も変わらないって考えると悲しくなり涙する。普通の人みたいなことができているか聞かれると、横井は「斉藤さんはずっと普通だよ。平凡じゃないだけ」と答える。

「人生」なんて死を後回しにしている進行形の結果論でしかない。それでも後回しを繰り返せば心臓も頭も動く。時間と共に手首の傷が消えて行くように時間の流れで伝わらなかったことが伝わる日も来る。

今より楽になる方法を探しながら生きる途中で一瞬だけでも心地よくなれるつまみ食いを繰り返しながら。また来年まで。そしてまた来年まで…。

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もしも二人が普通のカップルだったら…の絵なのか、それとも将来の絵なのかはわからない。読み手に任せているのかも? 最後は二人が手をつなぎ歩いているシーンで終わる。

***感想・評価・考察***

面白いと表現するのが正しいのかわからないが、凄い作品だと思う。最近は様々な『弱い立場』にある人を主人公にした漫画が増えてきているが、その中でもトップクラスに読みごたえがあった。心に残る名言も多い。本作の名言は「言いたい」よりも「心に残しておきたい」タイプの名言。

最初はメンヘラ彼女と付き合う、ちょいエロ展開もある恋愛漫画だと思ったが、予想よりもはるかに深く重い漫画だった。人間の内面をこれだけ漫画で表現できている漫画も珍しく、感動したし、勉強になったし、共感したし、考えさせられた。

ペンネーム下水星人として活動する横井のファンの一人、餓死山の正体だけが最後まで回収されておらず、心残りだった。

横井は人間が好きになれないと苦しみつつも、(漫画なんだけど)気持ちを読み取る能力は高すぎるのが凄い。横井の問題への向き合い方はただただ凄い。現実の人間でここまでできる人がいるのだろうかと思う。おそらく作者は発達障害ではないだろうが、それなのにこれほど寄り添った考え方ができるのが凄いし、不思議に思う。

発達障害(アスペルガー症候群)や強迫性障害について何も知らなかったので、(アスペ全員がこうした人ではないと理解しつつも)本作で「こういう人もいるんだあ・・」という気持ちにさせられた。これまでの人生で出会わなかった、出会っているのに気づかなかったのかもしれない。

人によっては「こんな人が本当にいるのか?」と思うかもしれない。第2巻で登場するセックス依存症の高松さんも「さすがにこんな人はいないだろ」と思ってしまう。

他にもADHDなどメンタルヘルス系の病気は一見すると気づかない病気なので、どうしても理解されない病気になってくる。 実際に斉藤さんみたいな人と話したら「ヤバい奴・二度と関わりたくない人・極度の自己中』という評価をするだろう。「相手の気持ちになって考えることができない病気」と考えるととても悲しい。本作は人間関係が上手くいかない人たちが登場するが、発達障害関係なく読んでいて面白かったです。