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【マンホール】感想ネタバレ第2巻(最終回・最終話・結末)まとめ

ヤングガンガンで連載していた『マンホール』最終巻2巻の最終回(最終話)を含めた感想ネタバレまとめです。結末(ラスト)はいかに!?

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人間の基本的欲求を司る視床下部に侵入し、食い荒らす恐るべき寄生虫の存在が明らかにー。感染拡大を阻止するため、地域封鎖、媒介駆除が開始!そんな中、感染を免れた溝口に最悪の事態が!?関与した謎の男の正体、そしてその目的とは!?バイオ・テロの恐怖を喚起する、衝撃のバイオ・ホラー!

第15話 脱落
第16話 竹豊町の悪夢
第17話 関口美香
第18話 偶然
第19話 制圧
第20話 追跡
第21話 脅迫
第22話 協力者
第23話 それでもあなたは間違っている
第24話 溝口健
第25話 覚悟
第26話 異変
第27話 アウトブレイク
第28話 黒川宏
最終話 終結

本編あらすじ

笹原署刑事課の刑事・溝口健は感染者の血がついた包丁で足を怪我してしまい感染が疑われる。笹原署刑事課の井上菜緒に犯人は強い覚悟を持っている一種の思想犯であり犯人の思想に呑まれるなとアドバイスを告げる。

雨宮洋一の同棲相手である関口美香の部屋から異常なまでの大量の蚊(ヒトスジシマカ)が繁殖してしまったことで事態は悪い方向に転がる。

本来は真冬に羽化しないはずの蚊だが、オーストラリアに生息するアロワナの一種ノーザン・バラムンディを飼育していたことで体に付着した蚊の卵が水槽で孵っていたことが判明。部屋の温度や水槽の不衛生など信じられない程の偶然が幾重にも重なり蚊が異常発生に繋がってしまっていた。

不幸中の幸いにも外部に逃げた蚊はいるが真冬の季節だったため既に蚊が生存できる気温を下回っていたたため衰弱しており、保健所職員とNBCの合同部隊によって蚊の群れは駆逐されていった。溝口健も感染していないこともわかり一安心。

一夜明けてインターネットを中心にバイオテロ事件の実態が明らかにされ、新聞やテレビではフィラリア症について報道される。笹原署では竹豊町バイオテロ事件と銘打って捜査本部が開設された。捜査本部は早くも事件の張本人である写真家の水野正章の住所を突き止めるが、全くの別人であることが判明する。

溝口と井上は独自に捜査を続け真犯人の黒川宏の存在を突き止める。動機を調べていくうちに黒川は4年前笹原市で起きた児童連れ去り事件の被害者の祖父であり、犯人の田村雅樹にビデオテープを送りつけられた人物だった。

経歴を調べると黒川は生物研究所の元研究員で2年前まで北海道立生物研究所でエキノコックス症対策班の一人として研究をしていた。地下施設の脳波計も北海道の生物研究所のものと製造番号が完全に一致。特別捜査本部本部長はほぼクロとみて全国に指名手配をかけるのだった。

その頃、保健所では定期検査している溝口健の血液からミクロフィラリアを確認。本来は媒介昆虫の吸血時間に合わせて検査する必要があったフィラリア検査だが、フィラリアの特性である定期出現性を考慮できていなかったため、これまでの血液検査からは検出することができていなかった。急ぎ溝口に連絡を取ろうとするが時すでに遅し。運転中に発病し運転事故を起こしてしまう。

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その後、井上は自分一人で黒川を捕まえるために証拠品保管室から押収していた拳銃を盗む。溝口に薬を飲ませた瞬間、一人の刑事として72時間以内に黒川宏を捕らえることが井上の思考の全てだった。

児童連れ去り事件の女子児童は黒川の孫娘だった。夏休みに元気に麦畑を駆け回っていた少女は蝋細工のようにもの言わぬ人形と化していた。献身的に少女の介護に明け暮れていた時に犯人から送りつけられたのは事件の詳細を記録した映像だった。6時間にも渡る地獄絵図を黒川は全て目に焼き付けた。

その日を境に黒川は一人書斎に籠もり脳に作用する寄生虫の文献を読み漁るようになる。1週間後インターネットを介して一冊の写真集に巡り合う。水野正章「ボツワナ紀行」は黒川の生涯を変える本だった。

黒川は国から研究所に交付される補助金一億円を不正な研究費名目で着服し、これを今後の活動資金とした。研究所としての地位も名誉も約束された老後の生活も全てかなぐり捨て犯罪者の汚名をかぶることもいとわず復讐の旅へと駆けて行く。

ボツワナの地を彷徨い歩き目的の地で片目を失い脳を侵されても彼の意志は折れなかった。黒川を駆り立てていたものはすさまじいまでの悲壮な覚悟だった。日本に帰国した彼はその足で笹原市へと向かう。そこで人生相談係になり堀川トシ江と知り合う。その後、事前に用意した写真家・水野正章に成りすます…。

黒川の次の狙いは槇野市に潜んでいると思わしき連続放火犯。そのために槇野市に住む動物にフィラリアを仕込んで待ち、後は蚊の湧く季節になれば自動的に発動するフィラリアの人為的なアウトブレイク(集団感染)を狙っていた。

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井上は槇野市の動物施設を歩き回って仕掛けをしているところを待ち伏せして遂に黒川と相対する。井上は懲戒免職を覚悟で黒川に盗んだ銃で撃ち遂に捕まえる。

その後、黒川は警察に事件を追及される前に病院の検査室で「あえて言おう。これは善行だ」と最後の言葉を残し自殺した…。

~エピローグ~

捜査本部は被疑者死亡のまま黒川を書類送検し事件の終結を宣言。報道関係者からの怒号が飛び交う記者会見を最後に解散した。新聞・テレビ各局は連日この話題を大きく取り上げ事件の詳細が伝えられたが自らの進退を賭けて黒川を追い詰めた一人の女性刑事の存在についてはついに語られることはなかった。

その後、井上は警察を辞めざるをえなくなりファミレスでバイト中。そこに回復した溝口が来店。井上が懲戒免職ではなく依頼退職であることを確認した溝口は神奈川県警察本部の募集要項の封筒を渡す。

驚く井上だが溝口は「お前にはでかい借りができた。もう一度婦警からやり直せ。すぐに刑事課に引き抜いてやる」と伝える。用意周到なことに既に記入済みの履歴書も持参していた。また一緒にやろうと声をかける溝口に井上が「はい」と答えて物語は終了。

***感想・評価・考察***

マンホール 新装版 上 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
 

寄生虫バイオテロを絡ませた社会派サスペンス・刑事ホラー漫画。脚本構成や作画など全体のレベルが非常に高く、とても面白かった。バイオホラー漫画なら『感染列島』が面白いが本作のほうが説明がしっかりしている分わかりやすい。

これが説明くさいと感じる人もいるかもしれないが整合性もとれているので個人的には丁度いいと思う。説明が長いとテンポが悪くなるが本作にはそれがないのが高評価。

犯人の黒川宏の理論には一理あり支持したくなる部分がある。確かに片目を失うのは痛いが犯罪のない社会が約束されるのと引き換えだとしたら悩む人もいるのではないか。

犯人の黒川は性犯罪の犠牲者の家族として加害者を憎む気持ちが非常に丁寧に描かれており感情移入できた。作中にもあるが絶対に悪とは言い切れない人間による犯行、そしてそれぞれの正義がぶつかるストーリーは圧巻の完成度と言える。

本作は発売後、長崎県で県少年保護育成条例に基づく有害図書類に指定される。このときの体験や心情を漫画化したのが『有害都市』となる。